第137話●家具を入れ替える
今日は家具の搬出と搬入がある。
もちろん日中は授業でランチもいつものようにみんなで取る。志満さん、華菜恵さんもすっかり打ち解けて、2年の授業はみんなでいろいろとあわせるようにしようなんて話で盛り上がる。そして今日も慧一と朋夏さんは隣同士に座っていた。
3限が終わると未亜は「みんな圭司をお願いね」というセリフを残してジャパンテレビへと出かけていった。そのセリフを聞いていた4人は未亜の姿が見えなくなったあと、ニヤニヤしながら俺のことを見てくる。
「未亜はフィアンセを通り越して、すっかり圭司くんの妻っていう感じだねえ。」
「ほんとうだよねえ!」
「まだプロポーズしてないからね!?」
「「「「まだなんだね!」」」」
「あっ。」
……と4人に冷やかされながらみんなでマンションへ向かうことに。
「
という朋夏さんの話で、カードキーのある三人は「勝手口」に回り、あとの二人は朋夏さんが家に着いたRINEを見て、1階から来ることになった。部屋の前で紗和さんとも合流、二人も部屋に来て、全員そろった。
「みんなここに住んでいると私たちもここに越してきたくなるよね。」
「私がデビューできたら考えてもいいかも。今のところよりこっちの方がセキュリティは万全だしね。」
「本当だよね。別の階にはなっちゃうけど。」
「そうなったら嬉しいな!明貴子の新刊が出る度にサインをもらうために家へ押しかけちゃうかも!」
「そういうのも面白いよね!」
太田さんによるとこのマンション、10階から15階までに用意されている1Kは新人に近いタレントが使っていてほぼ満室になっている一方で、16階以上に用意された2LDKとか3LDKとかはほぼ空いているそうだ。理由を尋ねたら「交通の便の問題ね。電車だと後楽園の駅はちょっと遠いし、タクシーでテレビ局に行くにも割とどこもちょっと遠いのよ。忙しいタレントだと帰って寝るだけみたいな人も多いから便利な新橋とか新宿とかその辺がどうしても人気なのよね。」とのことだった。まあ、うちも大学から近くなかったら選ばなかっただろうからそういうことならよく判る。
少し話をしていたら明貴子さんがもぞもぞし始めたかと思うと突然叫んだ。
「ねえ!朋夏!配信部屋見たい!」
「おおっ、明貴子、そこに興味あるんだ!いいよ!そうそう、万が一配信状態になっていたらまずいから、部屋を開けたら『へべす』って呼んでね。」
「果肉としては、日向夏さんのことを『へべすさん』って呼ぶのはとても緊張するなあ!」
「えーっ!呼び捨てにしてよ!」
「ええっ!?……わ、わかった!頑張る!」
「あっ、私はなんて呼べばいいかな?」
「そうしたら『澄華』かな?」
「じゃあ『澄華先生』って!」
「私が呼び捨てにするんだから『澄華』って呼んで!」
「わ、わかった!」
そうか、なるほど、明貴子さんが来たかったのはそういうことか!
二人は話をしながら配信部屋に入って、扉を閉めた。それを待っていたかのように紗和さんが彩春さんへ質問した。
「果肉って?」
「そうか、紗和は知らなかったか。」
彩春さんが呼称の話をする。それで納得したようだ。
「明貴子、本当に好きなのよね……。」
「私はそこまで熱中しているものがないからうらやましいかも。」
「その辺、紗和と瑠乃と私は似ているのかもね。」
「あー、そうかもしれない。」
「そうね。でも熱くなれるものがあるのはうらやましいけどね。」
「圭司くんは?」
「うーん、俺もそこまではないかなあ。」
「ほら、圭司くんは未亜に熱くなっているから。」
瑠乃さん!?
「それは間違いない。しかもお互いだからね。」
「あの状況を二人で乗り越えたからじゃないかな。私も未亜にすごい助けられていまがあるし……。」
紗和さんが遠い目で……。
「もし、あのことで紗和とか圭司くんとかに今後なにかあったら未亜だけじゃなくて私も支えるからね。」
「アイドル見習いの私にどこまで出来るか判らないけど、私も支える。」
「彩春、瑠乃……。うん、ありがとう……。」
「配信部屋にいる二人も協力してくれると思う。」
それは間違いないな。
「それにしてもあの二人、この仲間内で一番影響力もっているよね。」
「彩春も西陣さんの頃からのファンがたくさんいると思うけど。」
「どうかなあ、Vだから応援してくれていた人はけっこう多いと思うんだよね。あっ、そうそう。12月から事務所の配信スタジオを使って、毎週定期配信することになったんだ。さっきリリースが出てるの確認した。……ほら。」
彩春さんのスマホに大崎のニュースリリースが表示されている。やっぱり西陣つむぎというのはニュースリリースでも前面に出るんだなあ。
「おおっ!彩春さん、おめでとう!」
「うん、圭司くん、ありがとう!」
「見に来る人がどれくらいかでファンの数がどれくらいか判るってある意味シビアだよね。」
「Web小説なんかもPVとかブックマークの数とかで人気の度合いがわかる時代だからなあ。」
「みんなそういう世界で頑張ってきていまがあるんだもんね。底辺歌い手だった私には想像つかない。」
「瑠乃はこれからだよ。」
「そういえば、事務所のレッスンで課題曲として出ていた候補の中に『明るい暗闇』があったからレッスンでいい感じになったら太田さんに確認して歌みたあげるよ!」
「やった!楽しみにしているね!そういえば、朋夏と明貴子はずいぶん長いこと配信部屋にいるね。」
「もしや、ちょっとまってね……。……あっ、やっぱり、ほら。」
彩春さんのスマホには日向夏へべすの姿が。あっ、突発配信しているのか。
「朱鷺野澄華先生オフコラボ記念配信って書いてあるね。本人は声出しませんって注意書きが丁寧に。」
「例えば私が配信部屋に入って突発やったら総スカン食らうだろうけど、コメ見ている感じでは朱鷺野澄華だからみんなも大喜びだね。」
「紗和はそういうけど、きっと儘田海夢でも大喜びだと思うよ。みんなの配信にゲストで呼ばれるように私もレッスン頑張ろう。」
みんなそれぞれいろいろと考えなから毎日を過ごしている。こういう話を糧にして、いろいろなジャンルの執筆活動をしていきたいな。
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