第15話 その頃『白銀の翼』は(4)(追放者side)


 ーー闇ギルド。

 討伐、護衛など様々な仕事を請け負うギルド。

 しかし、窃盗、奴隷調達及び売買などの裏の仕事専門で請け負う非合法のギルドも存在する。


 その闇ギルドの一つ『影の悪魔』の壊滅が今回のクエストだ。


「情報によるとヤツらの根城は迷いの森だ、目に物見せるぞ」


「「おお!!」」


 今回はギルド協会からの直接の依頼、

 『白銀の翼』の実力を認めているからこその大口の依頼だ、失敗は出来ない。


「へへ、にしてもこんな武器が手に入るなんてな。最初からこれにすりゃ良かったぜ」


 矛を手にとりご満悦のジュダル。


 ーーそして迷いの森に到着した『白銀の翼』。

 侵入して10分後、向かってくる4つの人影が見えた。


 口元を覆う黒い布、身体に鎖帷子くさりかたびら、手にはクローを装備。

 『影の悪魔』の団員だ。


「来たぞ、ヘマすんなよ!!」


「はい!」


 各々が武器を構え、迎え撃つ『白銀の翼』。

 しかし、


 バキバキバキッ!!

 案の定、武器は壊れた。

 どんな武器も彼らにかかればたちまち使い物にならなくなる。


「な!?」


「うげぇ!?」


「そ、そんな!?」


 動揺する間にどんどん数を減らす『白銀の翼』、

 本来の実力を考えると当然の結果だった。


 そしてものの数分で半数以上が倒されてしまった。


「ジュダルさんまずいです! このままじゃ!?」


「う、うるせぇ!!」


 思わぬ展開にジュダルは誰よりも動揺していた。


「調子に乗んなよテメェらァァァァ!!!!」


 矛を振り上げ、攻撃を仕掛ける。


 パキッ!

 『影の悪魔』の団員のクローに受け止められると、簡単に折れてしまった。


「はあああああん!?!? またかよおおお!?!?」


 そのまま腕をロックされ、地面に組み伏せられるジュダル。


「ぶべええええええ」


 土が口に入り、唾とともに吐き出す。

 屈辱そのものだった。

 『影の悪魔』の団員はクローを振り上げ、ジュダルに振り下ろす。


「ひいいいい!? ごべんなざいいい!!!!」


「おやめなさい」


 ピタッとクローが止まる。

 ジュダルは涙で見えづらくなった眼でその姿を捉える。


 顔の上半分を覆う奇怪な仮面、黒いマントを羽織り、大鎌を装備した男。


 ーー『漆黒のルゴス』。

 闇ギルド『影の悪魔』のリーダーだ。

 その姿は送られた手配書のままだった。


「その翼の刻印、貴方達はもしかして『白銀の翼』さんですかな? お会い出来て光栄でございます」


 ぺこり、と深々と会釈するルゴス。


「離してあげなさい、どうせ何も出来ませんし」


 ルゴスの指示で拘束が解かれるジュダル。

 組み伏せられた影響で体力を奪われ、すぐには立ち上がれない。


「『白銀の翼』は武闘派と聞いておりましたが、いやはや、まるで手応えがない」


「ぢぐじょおおお」


 今まで数多くの闇ギルドを潰してきた。

 どんな奴も力でねじ伏せた。

 俺たちは最強のはずだ、なのに。


「ーーどおおおしてだよおおおお!?!?!?」


 炎剣が、イフリートがあればこんなヤツ。

 一撃なのによぉ......!!


 ジュダルは無意識にマキナの武器を求めていた、

 あれだけ彼を邪険にしていたにも関わらず。


「炎剣がぁ、炎剣があればぁ......!」


「もしやあなた『炎剣のジュダル』ですかな?」


 ルゴスはジュダルの腕を蹴り付ける。


「ぐううう!?!?」


「『炎剣のジュダル』と言っても、炎剣がなければただの人という訳ですな」


 ルゴスはジュダルと同じ目線になり、淡々と話す。


「特別に見逃してあげましょう」


「なんだどぉ......!?」


「ハエは近くを飛んでいると始末したくなりますが、遠くに去れば追うことはないと言ってるんです」


「ぢぐじょう......」


 悔しさで顔をぐしゃぐしゃにするジュダル。


「さっさと行きなさい、貴方は私の近くを飛ぶハエになりたいと?」


「ひ、ひいいい!!!!」


 ジュダルは仲間を置いて森の中を一目散に走り去る。


「ジュ、ジュダルさん!?」


「マジかよ......あの人!?」


 倒された団員達もヨロヨロ起き上がり、引き返していく。


「良いのですかルゴス様?」


「せっかく見つけた拠点ですし、もう少しゆっくりしましょう。なぁに、心配は入りません。『白銀の翼』が敗走したとあれば、我々に手出ししてくるギルドなど早々いませんからね」


 裂けた口を不気味に吊り上げるルゴス。


 『白銀の翼』の敗北、

 それは瞬く間に王国中に広まっていくのだった。

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