「雑魚には鍛冶がお似合いだwww」と言われた鍛冶レベル9999の俺、追放されたので冒険者に転職する〜最強武器で無双しながらギルドで楽しく暮らします〜

針谷慶太

第1話 天才鍛冶師はめげない


「ほらよマキナ、仕事だぞ〜」

「さっさと直せよ、明日もクエストがあるんだからな」

「そうそう、そしたらまた使ってやるからよw」


 団員達はそう言うと持っていた武器をマキナの目の前に軽く放り投げ、去って行った。

 鍛冶場の床には、数々の武器が散乱したまま残された。


 ショートソード、

 ロングソード、

 鉄の盾、

 スピア、

 メイス、

 etc.


「……」


 すぐ足元のショートソードを拾い上げる。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 武器:ショートソード

 威力:???

 耐久値:(490/1000)


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 耐久値が半分以下、今朝整備したばかりの武器がすでに半壊していた。

 ここに転がっている武器は例外なく同じ有様だった。


「はぁ……」


 思わず溜息が出る。

 マキナはこの武闘派ギルド『白銀の翼』のただ1人の鍛冶師だ。

 50人以上の団員数を誇るギルドメンバーの武器は全て俺が作った。

 しかし、彼らの武器の扱いは杜撰ずさんだ。

 一般的な武器なら整備無しでも約1週間は持つ。

 だがここの団員は耐久値を最大に上げた彼の武器でも2日と持たないのだ。


「よいしょっと!」


 マキナは床の武器を掻き集め、作業台に乗せた。

 戦闘をする以上、綺麗な状態で返してくれとは言わない、だが必要以上に武器を痛めつけるような事はして欲しくないのが彼の本心だ。


「――マキナ、これ忘れてんぞ〜!!」


 武器を取り除いたばかりの床に武器が投げ捨てられ、ガシャンと音を立てた。


 ――炎魔剣えんまけんイフリート。

 炎を彷彿とさせる、赤い剣身を持つ魔剣。

 ここ『白銀の翼』のギルドリーダー、炎剣のジュダルの武器だ。


 声の主であるジュダルはニヤニヤしながらマキナを見る。

 イフリートを拾い上げ、状態を確認した。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 武器:炎魔剣イフリート

 威力:???

 耐久値:(150/2000)


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「また無茶な使い方をしたな」


「俺はここのリーダーだぞ? 率先して戦う以上、武器が傷付くのは当たり前だろ」


「だとしても損傷が激しすぎる、お前ならもっと上手く戦えるはずだ」


「うるせぇ! 引きこもって鍛冶ばっかしてる奴はお気楽だな!! 仮に壊れたらそんなナマクラ作ったテメェが悪いんだよ!!」


 ジュダルは作業台を思い切り蹴り付けると、載せていた山積みの武器が崩れ落ちた。


「はっ! ざまぁねぇな!」


 ゲラゲラと蔑むように笑い出した。

 他の団員の使い方もそうだが、ジュダルの武器の扱い方は特に酷い。


「ジュダルさーん! 早く飲みにいきましょー!!」


「ああ、待ってろ!」


 部屋の外からジュダルを呼ぶ団員の声が聞こえた。


「いいか! 世の中戦える奴が偉いんだよ。マキナ、お前はこの『白銀の翼』で最底辺の人間って訳だ! 俺達が仕事を与えてやってんだから感謝しろよな!!」


 ジュダルは唾を吐き捨てる。


「――雑魚には鍛冶がお似合いだなww」


 そして背を向けると彼は鍛冶場を後にした。

 馬鹿にされるのも数年もあれば流石に慣れてしまうものだ。独りになったマキナはイフリートを作業台に載せる。


「お疲れ様」


 イフリートを軽く撫でる。

 作り上げてから長年整備してきたから愛着はもちろん、ここにある武器は彼にしか作れないし、整備も出来ない唯一無二の武器だ。


 そんな武器だからこそ、大事に扱って欲しいと団員達を説得してきたが数の力で抑えられてしまっていた。

 マキナに唯一出来ることは根気よく直し続けること、それだけだった。


「……今日も頑張るか!」


 前向きになろう。

 いつか彼らも分かってくれると信じて。


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