大蜈蚣
この
洞の入り口は何もない高原にあって、のどかな景色に穿つようだった。不自然な立地に反して、洞口は岩と木材でしっかりと構えられ、そのちぐはぐさがより異様な雰囲気を発散していた。
中に入ると最初に線路が目に入った。トロッコを走らせる時に使うのだろうと思われる単線のレールが奥の暗闇へと続いている。危険だと思った私は、一応線路を避けて進んでいった。道幅は意外に広く、中央を避けても十分な余裕が端にはある。加えて、外からでは分からなかったが左右の壁には等間隔で灯りがともされており、そこらの坑道よりも幾分か快適なように思えた。
しばらく進むと道が分かれている所に差し掛かった。線路は右手に伸びているが、左には扉がある。石でできた扉だった。洞窟内に扉があるのもおかしな話だがそれ以上に奇妙なのは、未だに採掘の痕跡が見られない事だった。そして扉を開けるとそこにはさらに奇妙な光景が広がっていた。
扉の奥は大きな部屋になっており、中央には石の丸テーブル、周囲には腰を掛けられる程の岩が配置されていた。そして、そこに座っている二つの人影、いや、それらは人ではなかった。
一人は額の両端から触角のようなアンテナが伸びていて、口から大きくはみ出た巨大な犬歯が内側にねじれている。吊り上がった目尻と相まって
最初、二人は何かしら話し込んでいる様子だったが、こちらの存在に気が付くと話しかけてきた。
「この先には世にも恐ろしい怪物がいる。お宝全部持って行く」
蜈蚣男が言った。
「この先には見るに哀れな人間がいる。
蛇女が言った。
それだけ言うとまた二人で話し始めてしまった。
特に他に見るものもなかったので部屋を出てまた線路に沿って進んだ。
進んで、進んだ。進んでいるうちに灯りがない事に気が付いた。だが止まらなかった。
進んでいるうちにここがどこだか分からなくなってきた。だが止まらなかった。
そのうち足の感覚がなくなってきた。もはや歩いているのかどうかすらも分からない。
それからいくら時が経っただろうか。ふと自分の手を見た。
その時ようやく気が付いた。
怪物は自分だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます