幻談録
樫亘
キツネ石
肝試しをすると言うので、私は仏塔のある寺まで連れてこられた。
その寺はどうやら神宮寺らしく、とある神社の上社に位置していた。山の麓にあるその神社はちょうど湖を挟んで上社と下社に分かれていて、仏塔に登れば山と湖を一望できるらしい。
「一体何が出ると言うのだね」
来る途中で誰かがそんなことを言った。
「何ってお前さん、ここと言ったらあれしかねえよ」
誰かが返した。
「やっぱりあれかね」
表の石畳を歩きながらそんな会話を聞きいていたが、一体何の話をしているのか私には皆目見当もつかなかった。
参道の両脇には木立があって夜の
ただ一つおかしく思ったのは、雨が降った訳でもないのに枝の先々から何かがしきりに
しばらくすると仏塔が見えてきた。よくある五重屋根の塔で背はそれほど高いようには見えない。
「ここだよ。この塔の一番上に上ってキツネ石を取って来るんだ。簡単だろ」
そう言うとそいつは袖から石の見本を取り出して見せた。綺麗な色をしていて、見ただけでは本物の
いつの間にそんなものを用意したのかと関心していると、突然背中を叩かれた。どうやら私が最初の順番らしい。
仏塔の入り口へ来ると傍に鉄の輪が重ね置かれていた。たくさん重ねられており、
塔の中は酷く古びていて、
二階ほど上ると中央の柱の傍に台があって、そこにキツネ石らしきものが置いてあった。だが、その石は何か妙だった。色が翡翠色ではなく、鮮やかな赤色なのだ。
代わりに外に見えたのは着物を着た一人の女の姿だった。遠過ぎて顔はよく見えないが知らない人だと思った。その女は夜風に長い黒髪をたなびかせながら、じっとこちらを見上げていた。両手を前に置き、連なる峯を背に微動だにせずにいるのだ。
少し気味の悪くなった私は急いで下った。一階、二階、三階、……、妙だ。
私は今、何階にいるのか分からなくなってしまった。下っても下っても出入口が見えない。窓の外を見ても高度が変わっているようには見えない。そこに見えるのは
途方に暮れた私は塔の中を見渡した。すると隅に
「仕方がない」
ため息まじりにそう呟くと、私は矢を
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