第6話


『是非とも全員パスで!!!!』

『マジで?』

『マジでっ!?』

『う~ん・・・まぁ一応、無くはない、かな? 腐女子の敵、最大最悪のバッドエンドと言われたあのルートならどうにか・・・』

『いや、ちょっと待て! なんだその、最大最悪のバッドエンドって! 響きからしてろくでもないオチじゃないのかよっ!?』

『そうよ! そうなのよっ!? シエロたんの誕生日パーティーには、腐女子にとって最大最悪の悪夢のようなトラップが仕掛けられているのよっ!? あのエンディングはもうっ、本っ当に悲劇としか言いようが無いわっ!? わざわざあのエンディングを作ったスタッフは、本当に超絶鬼畜に違いないんだからっ!!!! しかも、あのクソエンディングを一度は見ないと、シエロたんの覇王ルートが開かないという鬼よりも鬼な鬼畜っ振りっ!?!?』


 姉貴が、そのエンディングが如何いかに酷いのかを熱弁している。だが・・・


『いや、ねーちゃん? 野郎共全員パスしたBL回避が、そのエンディングしか無いんだよな?』

『ええ。そうよ。そうなのよ・・・重度のヤンデレ好き腐女子御用達の、鬼畜が集まる攻略キャラ達の中、唯一、たった一つだけ・・・』


『たった一つだけのルートは、なんなんだ?』

『普っ通~にシエロたんが婚約者の女と結婚して、幸せな生活を送るという最悪なマジクソエンディングがあったのよ~~~~~っ!!!!』

『ぇ? マジでっ!?!?』


 マジで俺にとっての朗報! 福音じゃん!


『ええ。パーティ最中に婚約者と結婚するという冗談みたいな選択肢があってね。それを、隠しルートとか、奪略愛ルートだと思って進めるとっ・・・本当にただ女と結ばれてひたすら幸せな有様を見せるだなんて、とんだ鬼畜の所業だと、このルートをねじ込んだスタッフをひたすらに呪ったものよっ!! しかも、あのクソルートを通らないと・・・鬼畜シエロたん総攻めなハーレム覇王ルートへ至るには、あの苦行をしなきゃいけないのっ!!!!』


 うへぇ・・・なんだシエロ総攻めハーレム覇王ルートって、気色悪ぃ。


 ふっと力なく微笑むねーちゃん。


 つか、最大最悪のバッドエンドって言うからなんだと思えば・・・


『いや、普通に幸せってよくない?』

『普通のっ、男女の幸せが見たければっ……普通の乙女ゲーム選ぶわよっ! こちとらBLの、キラキラした男同士のいちゃこらどろどろらぶらぶファンタジーが見たくてBLゲーム買ったっての! なのに普通の男女のいちゃこらなんぞ見せられてっ、腐女子の誰が喜ぶかってのっ!!!! 腐女子の敵っ!?!? 誰得エンドじゃあっ!!!!』


 バンっ!! っと、小さな手がテーブルを叩いて血を吐くような魂の叫び。


『ああ、そういう意味でのバッドエンド・・・』

『言うなればアレよっ!? 百合をうたっている作品で、女の子同士でいちゃいちゃ百合百合して微笑ましい百合ップルの間に、いきなりぽっと出のそこそこイケメンが割り込んで来て、女の子同士の友情と尊くも甘酸っぱい百合な愛情を引き裂いた挙げ句、片方の彼氏になって女の子を掻っ攫って、更にはそのまま幸せムードで作品が完結するような所業よっ!?』

『それは許せねぇぜっ!! そんな冒涜ぼうとく的なクソ野郎は百合スキー達に謝れっ!? 百合ップルの片割れに土下座して詫び入れた後爆発しろぉっ!!!!』

『そうでしょうっ!? わかってくれるのねっ!?』


 思わず本気で怒鳴ってしまったが、ねーちゃんが怒っていた理由に、なんか納得した。


『それは確かに、激怒してもいい案件だっ!?』

『なら、攻略対象の誰かとシエロたんを』

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