第2話


 タイトルは、そう・・・


 【愛に染まる空~ Il ciero si è tinto di amore ~】というゲームだっ!?


 確か、十八禁のBLゲームで・・・男にこんなモン買わせんじゃねぇっ!!!! って、心底泣きたくなったのを凄く覚えている。女性店員さんのなまぬるい優しい目が、死ぬっ程恥ずかしかったっ!!


 でも、「釣りは取っときな。お小遣いにしていいから」と、気前よく五万円をくれたから、悶絶する程の羞恥を堪えてレジに並んだ。「だけど、買って来ない場合、五万円はキッチリ返してね♪」と言われたし。

 ちなみにゲームは、三万以上した。お釣りの一万と少しを貰った。あの羞恥心に対して一万と少しなのか・・・と、なんだかとても悲しくてやりきれなくなった。


 そして、『ゲームを買ったらただちに持って来ること!!』と姉貴から命令連絡があって、急いで帰ろうとして、『俺』は――――


 確か・・・


 歩道橋から、足を踏み外したんだった。

 ゲームを落として壊したら姉貴に殺されると思って、ゲームをしっかりと抱き抱えて、代わりに身体のあちこちをぶつけて、それがまた死ぬ程痛くて。ゲームを確認したら、ゲームには傷が付いてなくて守り切ったぜ! って安心したら・・・


 急に、起きてられない程に眠くなって――――


 その後の記憶が、無い。


 それから、気付いたときにはもう・・・この世界で暮らしていた。


 第二王子の――――『シエロ・・・』として。


 そう、か・・・


 『俺』はきっと、あのときに死んだんだ。


 って、待てやおいっ!?


 ここはBLゲームの世界だぞっ!?!?


 しかも、シエロ・・・って・・・


 俺の買わされたゲームのタイトル【愛に染まる空~ Ilイル cieroシエロ si èスィ tintoティント diディ amoreアモーレ ~】の中に、シエロ・・・って名前入っちゃってんですけど~~~~っ!!!!


『やっべぇ、詰んだ。BLゲームの中の王子様とか、マジ終わってる。神さま呪うレベルだわ』


 と、絶望で思わず天を仰いだときだった。血の気が引いたのか、目眩までして来た。だというのに、


『そんな悲しいこと言わないでっ!? シエロたんはもう生きてるだけで尊いんだからっ!? この世界に生まれたあたしが、どんなにシエロたんを愛して、どれだけ会いたいと切望して、こいねがったのかわかるっ!? あと、この世界の神さまは貴腐神きふじん様に違いないわっ!?』


 ハァハァと鼻息の荒い美幼女が、涙目で『俺』へとテンション高くシエロ・・・への愛を訴える。

 おそらくはこの子も、その口振りからすると・・・『俺』と似たような、転生者なのだろう。


 どこが大人しくて聡明だよっ! 中身はしっかりと腐り切った女子じゃねぇかよっ!?


 それにしても、神さままでもがマジで腐ってンのかよっ!?

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