かぐや姫

虹のゆきに咲く

第1話 美しい姫

婆さん

山で山菜をとりに行ってくるからな


ああ

気をつけて行ってきてください


わかった


どれどれ

今日は多く取れるかのう


おや

あの竹が輝いているではないか

行ってみよう


なんという

光だ

どれ切ってみるとするか


バサ


おぎゃあ


なんと

赤子がいるではないか

このままではいかん

連れて帰らなければ


婆さんや

山に行ったら

赤子が竹の中に


まあ

可愛らしい

赤子ですね

ほら

女の子よ


そういえば

私達は子供に恵まれなかったな


そうですね

神様が私達に子供を授けてくださったのかもしれませんね


それはうれしいことだな

なんと名前をつけようか


それでは

かぐや姫とはどうでしょうか


それはいいなあ

そうしよう




婆さんや

かぐや姫は美しく育ったなあ


そうですね

最近では町で美しいと評判になっていますよ


そうか

それはよかった




ここに、かぐや姫という美しい女性がいると聞いた

是非、お会いしたい

私は帝の親戚にあたる

迫達紋助といいます


なんと

貴族の方ではないでしょうか


いえ

貴族ですが

是非、かぐや姫にお会いしたいです


わかりました


おお

なんと美しい

かぐや姫

いえ

かぐや姫様

私と結ばれてもらえませんか


いえ

今はまだ若く男性には興味がありません

申し訳ありませんが

お断りさせてください


そうですか

それは残念です




かぐや姫の美しさの噂は

あっという間に国中に広まった

求婚する者が後を絶たず

貴族らの貢物で

かぐや姫の家は富にあふれかえった




婆さん

かぐや姫のおかげで

立派な屋敷が立つことができるぞ


それはいいことですね


よし、立派な家も建ったことだし

美しい庭もできた

庭の手入れが必要だから

誰か、手入れをする者を探そう


はい

そうしましょう

隣村に権助という真面目な男がいると聞きましたが

どうでしょう


そうだな

さっそく雇うとしよう


権助と言ったな


はい


この屋敷の庭は広いが手入れを頼むぞ


はい、わかりました


それから、わが屋敷には知っておろうが

かぐや姫という美しい娘がいる

決して話しかけたりするではないぞ

いずれは高貴な方と結ばれるからな

わかったか


はい、旦那さま






私はいつも一人です

見えるのは縁側から庭に咲いている赤い花

さびしいです

誰も話をする人はいません

みんな私の姿だけしか見ていません


失礼します

今日から庭の手入れに参りました


あなたの名前を教えて下さい


権助といいます


そうですか

あの赤い花はきれいですね


そうですね


権助さんは

この仕事は楽しいですか


はい


権助さん

何か話をしてください


いえ

何もないです


どうしてですか


いえ


私はさびしいのです

みんな私の姿を目当てに来ます

権助さんは私をどう思います


いえ


何か話してください


いえ、とんでもないです


なぜですか


いえ


私のことが嫌いなのですか


いえ


どうして

いえ

それだけしか言わないのですか


かぐや姫様


これを


これは

あの赤い花

うれしいです


ありがとうございます


権助さん

何か話してください


いえ

話をすることは駄目なのです


どうして


それは言えません


かぐや姫よ

権助は百姓のせがれだ

お前は貴族様から多くの求婚がある

そのような男とは話すな


お父様

どうしてですか

私はいつも縁側から権助さんの姿と庭に咲いている赤い花しか

見ることができません


いずれいろいろな所に行ける

それまで待ちなさい


お父様


かぐや姫さま

申しわけありません


権助さん


赤い花が私の気持ちです

それだけです

それ以上は言えないのです


権助さん

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