第4話 ピコクル族の村

「ナクトネーゼ様ただいま戻りました。」


「あらおかえり。ふふふ。楽しかったかしら?ニーゲとのデートは」


銀髪で褐色肌の魔性と表現するような女が微笑を浮かべたまま問いかけた。


「私に楽しいと言う感情はありません。

ただ、貴方様の喜びのために行動する事が私の幸せであります。」


焦げ茶色で白い肌の男が淡々と答える。

その答えに満足したかのようにナクトネーゼは笑みを深くした。


「ふふふ。その姿はもういらないわね。次はこういう風に化けなさい。そしてシーナ国の首都エリブルに行きなさい。あとは分かるわよね?」


「ははっ。あの男に深い絶望を」


この男は顔を変える。ある時は焦げ茶色の髪に白い肌のアイドルグループ顔負けのイケメンに。

そして今回は。緑髪で透き通るような綺麗な瞳の美男子に。

ナクトネーゼは男の後ろ姿を見ながらより一層笑みを深くした。


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「暁人!起きるピコ!」


後頭部に感じる柔らかい感触と心地の良い透き通った声に幸福感に満たされながら目を覚ます。

(これは膝枕か?よく琴香にもしてもらったっけな。

ってここは?あの後どうなった?)


「リーナ?あの男は?怪我はないかリーナ」


「男?なんの事ピコ?それを聞きたいのはこっちピコ!いきなり倒れて心配したピコ!」


「え?黒装束の男がいきなり襲ってきただろ!なんとか求心って言いながら!」


なんとか求心という言葉に少しだけ眉を顰めたリーナだったが

その表情の変化に暁人が気付くことはなかった。


「何言ってるピコ!あの後暁人がいきなり倒れたから村まで運んできたピコ!」


(くそまただ。途切れ途切れにしか思い出せない。ただの夢だったのか。あれは)


存在を否定されるかのような圧力を思い出し、背中に嫌な汗が流れる。

状況が掴めない暁人があたりを見渡すと。

ここは木材で作られた家の中だった。

漂ってくる母なる大地の自然の香りに包まれて暁人の精神は少し落ち着く。

落ち着いたら落ち着いたでまた腹の虫がグーグーと鳴く。


「あははご馳走の準備は出来てるピコ!集会所に行こうピコ!」


温かい笑いと共に手を差し伸ばすリーナ。

リーナに手を引かれて家を出るとそこに現れた景色は

数えきれないほどの数の大樹とその枝のどこかしもにあるツリーハウスだった。

自然と共に生きる。

ピコクル族の自然への理念を体現する美しい光景に目を奪われた。


天高く聳える大樹の中間地点に家や施設が建ち並んでいる。

下を見下ろすと暁人では到底助からないほど高く、思わず足がすくむ。


(高いなここは。大樹と大樹に橋らしきものはないけど、どうやって向こうまで行くんだろう)


「さぁ暁人!ここから跳んで5分くらいが集会所ピコ。

みんなお腹ぺこぺこだから早く行こうピコ。」


「行こうか!ん?跳んで?走るじゃなくて?」


「走るより跳ぶ方が早いピコ!」


左手に暁人の手を持ち、そして右手に成人男性の太ももはありそうなツタをいつの間にかもったリーナが枝から跳んだ。


「あーぁあああ~ピコ~」

「ぎゃああああああああああああ」


黒髪のニーゲの絶叫が森の中に響き渡った。

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