第2話 判決

「情状酌量の余地はなし。

判決は異世界堕とし。以上をもって終了とする」


目の前のじいさんがなんか言ってるな

何言ってんだこいつ、あぁ俺なにしてるんだっけ。


あれ父さんと母さんが泣いてるな。

おい隆弘なに叫んでるんだよ。聞こえねぇよ。

なにも…なにも聞きたくねぇよ。


ごついおっさんに両脇を固められて

何もない部屋に放り込まれた。

四方が鼠色の壁で窓が無く天井も低い。

普通の部屋だ。ただ一点を除いては。

床に目を落とすと、幾何学模様の虹色に光る魔法陣があった。


----


「しっかし異世界堕としってちと刑が重いんとちゃいまっか五星光の皆はん」


青白い肌に隈をたっぷりとこさえたボサボサ頭の中年が部屋にいる他の4人に問いかけた。


「お前も五星光やろが。まあちと重いな。浮気相手1人をあの世に送ったからってな。」


ずんぐりとした体型の白髭を立派に蓄えた小太りの男が答える。


「まぁながぁーいながぁーいお話の中でちょうろーうが決めたんだからいいじゃぁ~ん」


甘ったるい喋り方をする緑髪に星の髪飾りをつけた少年とも少女とも言える子が気怠げに言う


「タティス、リ・カーマ、那由多は長老の決定に不服があるのか」


重く腹の底に響くような声を放ったのは歴戦の跡がある全身甲冑の女


「これこれ辞めんか。フータオ。こうする他あるまい。あの堕天使に目をつけられていたんだからな。

あの者なら大丈夫じゃ。幸の光が何よりも強いからな」


(だから目をつけられたんじゃがな)


人の良さそうな顔した神父の様な格好をした老年があたりを見回す。

ここに集められたのは全部で6つある世界の五つの世界の5人の代表達だ。

皆千年万年の時をこの世界の調和のために時に話し合い、時に血で血を洗い世界を治めてきた。


(あの堕天使め。何をする気じゃ。あの幸の光の青年を自分の世界に招いてどうするのじゃ….いや…まさか….それなら)


「ねぇ~ちょうろーうってば!!!」


左耳からいきなり大音量で聞こえた声でふと現実世界に戻ってくる。


「なんじゃ那由多」


「だーかーらーーあの子がさっそくやばいって!見て!!!!!!」


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時は少し遡り


あぁ人は自分の死の匂いは敏感に感じとるって言うけど本当だったんだな。


これが死の匂いか。


この部屋でこれから何をされるんだろうか。

この下のヘンテコな模様はなんだ。

かなり頑丈な扉に窓一つない壁。

壁の厚さも相当だな。爆発でもすんのかな。


両親と隆弘と琴香ともう一度話したかったな。

最後に見た琴香は…琴香…琴…香…コ…

琴香っ!!!!!


そうだ。転校生と琴香がキスをしてて気が動転して転校生を突き落として、琴香を見たら琴香が琴香じゃない感じがして、それでそれで…あれなんだ


琴香はどうなった。


癪だが転校生は??いやけど俺が突き落として…

どんなことであれ人殺しなんて…

思い出せない…それからなんだ…どうなったんだ。

記憶がない。何も思い出せない。


そうだ。何でこんな事になってるんだ。

琴香を見てそれで…いきなり目の前にいたのがじいさんで…え?琴香がじいさん?いや違げぇよ。


琴香は黒髪ロングの清楚系お姉さんみたいな感じで少しタレ目で鼻筋が綺麗でキュッとなってる口でエプロンなんか超似合ってて今度はだか……いや琴香の事じゃなくて


そうだよ!異世界堕とし??って何!?


堕とし?落とし?いやだもうどっちでも良くて、

いやどういうこと???

異世界に行くの?待ってよくあるやつ?


え、けど、刑って??

あれか死刑制度撤廃に伴いどうちゃらこうちゃらって

朝ズババンでやってたやつか。


島流し的なノリなの?そうなの?

おっと足元が光ってきたぞっ


黄色くなってきた。


黄色い線の内側に入り足元にお気をつけ…って谷の手線の車掌の真似してる場合じゃないぞ。

やばい感じがする。


カッッッッッ

辺り一面を眩い光が包んだ。



---

「さぁ。起きなさい。

ふふふ。私と会った事も忘れているようね。

たっぷり苦しんで何回も死んでね。まぁ死ねないけどね!!!それで…その度に…あぁやっと見つけた贄。これでようやく…ふふふ

始めましょう貴方の物語を」


銀髪で妖艶な雰囲気を孕んだ褐色の女が侮蔑の笑いをあげている。

これから先の暁人の運命を知っている。いや見てきたかの様に笑っている。


ただそこには悪意の塊しかなく、ただただ暗く黒くどこまでも暗影たる空間で一つの銀が煌びやかに輝いていた。


その光景を眺める者がいたならば

「美しい」

と言っただろう。

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