4話「お祖父様のお説教」
「やめよ! 今日をなんの日だと心得ている! ビアンカの十六歳の誕生日、成人の祝いだ! その祝の席で主役のビアンカを罵り、あまつさえ身につけている物を奪おうとするとは! 貴様達は正気か!」
お祖父様が両親と妹を一喝する。
お祖父様に叱られ、両親は怯んだ。しかし妹には全く響かなかったようだ。
「お祖父様、だってお姉様が……」
瞳に涙を溜め、上目遣いでお祖父様を見る。
両親は妹のこの仕草に弱い、だがお祖父様には通じなかったようです。
「だってではない! お前が着ているドレスとアクセサリーは私がビアンカに贈った物だ! 誕生日のパーティーで着るようにとカードを添えてな! それをなぜ妹のお前が着ている?」
「それはその……」
お祖父様に正論で返され妹は何も言い返せずにいる。
「お姉様にだけこんな綺麗なドレスを贈るのはずるいですわ! 酷いです! えこひいきですわ!」
妹は言い訳を諦め、「ずるいです」「酷です」「えこひいきです」攻撃に切り替えた。
「私達はミアが泣いて悲しむので、ビアンカの物をミアに与えたのです。ビアンカは他にも豪華なドレスやアクセサリーを持ってますからね」
「そうですわ、姉なら妹を思いやり譲るべきですわ」
妹の言葉を両親が援護する。
私が正論で妹を言い負かしても、両親の援護射撃が入って結局何もかも妹に奪われてしまう。
「私が屋敷に着いたとき、ビアンカは色あせたサイズの合わないドレスを着てアクセサリーは一切身に着けずに私を出迎えた。
ルードの話ではビアンカはミアに部屋もドレスもアクセサリーも奪われ、物置部屋で使用人と変わらない服を着て過ごしているというではないか。
ビアンカは他にも豪華なドレスやアクセサリーを持っている? よくそんな嘘八百が言えたな! 姉なら妹を思いやり譲るべき? お前たちはビアンカにこんな仕打ちをしておいて、まだビアンカから奪うつもりか!」
お祖父様に一喝され、両親はビクリと体を震わせた。
「万が一に備えビアンカに贈るドレスをもう一着用意しておいてよかったよ。お前たちはビアンカの成人の祝いをなんと心得ている! 娘にみすぼらしい格好をさせてなんとも思わないのか!」
両親がお祖父様から視線を逸らした、顔は真っ青で、額から汗を流している。
「それは……その……、ビ、ビアンカは姉ですし……た、多少の我慢は……」
「そうですわ、ビアンカは年上ですし……そのくらい……耐えなくては……」
しどろもどろになりながら両親が言い訳をする。
お祖父様の目から光が消えた、この三人に何を言っても駄目だと判断したのだろう。
「そうかならば公爵家の遠縁に五歳になる少女がいる、その子をお前たちの養女にせよ、そしてミアの持ち物を全て妹に与えよ。お前たちの言い分では姉なのだから妹に譲って当然、姉は我慢して当然なのだろう?」
両親がヒッと息を呑む音が聞こえた。
「嫌よ! 私妹なんかいらないわ! 私の物は私の物よ! 誰にも譲らないわ!」
呆然と立ちすくむ両親の横で妹が喚いた。
「それよりお姉様の誕生日プレゼントはどこなの? これだけ多くの貴族が集まっているのだから、高価なプレゼントを沢山貰ったはずよね?」
妹が獲物を物色するネズミのような目をして言った。
妹はお祖父様に叱責されても全く懲りていないようだ。
「やはりだめだな
お祖父様が冷めた目で言い、首を横に振った。
「お祖父様お待ち下さい、私に贈られた誕生日のプレゼントを見て、妹がどのような反応を示すのかを見てから決断を下しても遅くはありませんわ」
妹と両親に少しでも民を思いやる気持ちが残っているか知りたかった。
一週間前に届いたお祖父様からの手紙に、両親と妹を廃嫡すると書いてあった。
私は考え直すようにと手紙を書いたが、お祖父様のお気持ちは変わりませんでした。
私はほんの少し妹と両親を困らせたかっただけで、破滅させたかった訳ではないのに。
お祖父様の中であの三人と縁を切ることは確定事項のようです。
三人の私への扱いは酷いものでしたが、彼らに民を思う気持ちがあるのなら、軽い処分で済ませても貰えるようにお祖父様にお願いするつもりです。
「ビアンカ、お前は優しい子だな」
お祖父様が私を見て目を細めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます