第24話 どなたが一番ひどいのかしらね


――フォスティーヌ夫人から聞いたお話はすぐに理解できることではありませんでしたの。

 だってたちまち信じることができる内容ではありませんでしたから。


 それでも、全てを知った私は張り詰めていた気持ちと身体がスッと楽になったような気がいたしましたわ。


「もっときちんと話してくだされば良かったのに……。」


 あれからお会いすることを避けて机の上に置いたままにしていた、ラングレー会長からのたくさんのお手紙を手でそっと撫でます。


 そして封蝋を外し、古いものからゆっくりと一つずつ目を通してゆきましたの。


「貴女に謝りたい」

「誤解があるようなのでお話をする機会を与えていただきたい」

「騙すような真似をして申し訳なかった」

「実は以前から貴女のことを見守っていました」

「幸せになれるならばと思っていましたが、不幸になることをみすみす見逃すことはできません」

「貴女が婚約破棄をすることを望んでいないのにも関わらず、自分勝手に動いたことをお許しいただきたい」


 本当に、私のことを初めから騙すような真似をしてひどいお方ですこと。


「それでも……自分のことで精一杯で貴方のことをすっかり忘れてしまっていた私が、一番ひどく残酷でしたわね。」


 最後に開いた手紙には「幼い頃より貴女の幸せを心から願っていることは嘘偽りなく本当です」と書いてあります。


「会長と話さなければなりませんわね。」


 私は外出する為に侍女を呼んで、いつもより念入りに身支度を頼みました。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る