第561話 訪問
「お話を伺いましょう。」
いつもは優しい声色の葵さんだが、パトラ王女に向けたものは酷く冷たい声色だった。
バスの持ち主である斗馬は治療中の為、緊急時は葵にその権限が委譲されている。
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失意の葵達の元にパトラ王女と宰相が数分前に訪ねて来た。
「追い返しましょう!」
No.9が強硬論を口にしたがさすがにそういう訳にはいかず、葵の権限で2人を車内に入れさせた。
「どうぞ。」
帝国に対して皆、良い感情がなく誰もが案内を嫌がったが仕事柄嫌な相手でも淡々と仕事をこなせるサバルは普通にやってみせる。
さすが先輩!
イスカは先輩を讃えていた。
パトラ王女と宰相が案内されたのは2階の応接室である。
No.9は2階に入れるのを嫌がったが、1階は普通のバスなので話しづらいとの理由で最終的に2階になった。
パトラ王女と宰相が緊張した面持ちでソファーに座ると会話がスタートした。
「この度は帝国を救って頂き、誠にありがとうございます。」
宰相が深々と頭を下げて、少し遅れてパトラ王女も同じく深々と頭を下げる。
「別に救いたくて救ったわけじゃない。」
不機嫌そうにアリアが露骨に呟く。
「ボクも嫌々だよ。」
それにミーが反応する。
「斗馬さんのご意志によって助けたまでです。お気になさらず。」
葵が感情のない顔で応える。
宰相とパトラ王女は、この場にいる全員から歓迎されていないことを察していた。
しかし、帝国を救う為にはあの事を提案するしかないのだ。
「それで‥
助けて頂いた後に申し上げにくいのですが‥」
宰相は覚悟を決めて、あの事を口にしようとする。
しかし‥
ビーーー!
車内に警告音が響き渡るのであった。
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