第543話 魂

<???side>


 目の前で先輩の騎士が次々と倒されていく。いや、倒されているなどと簡単に片付けられるものではない。


 ザギ先輩は粉々に砕けてしまったのだ。


 ザギ先輩といえば‥

 武闘派のロドス騎士団の中でもトップクラスの暴れん坊だ。

 数々の敵を倒した事で有名人だが、その功績を打ち消すほどの問題も起こしている。

 敵と一緒に罪のない村人を殺したり‥

 無抵抗の捕虜への虐待‥

 他にも数々の疑惑のある先輩だ。


 酒や女性が好きで遊び回っている一方で、武具にお金を惜しまなかった。


 一般の兵だと重くなるので鎧を強化しないが、先輩は有り余った力で重い鎧を使用していた。だから防御力は騎士団一。


 その先輩が粉々だ。


 鎧の隙間から攻撃されたわけではない。

 特に鋭くもない攻撃でだ。


 あり得ない。


 さらにゲール先輩は真っ二つ。

 ヒール先輩は首を落とされた。


 性格は悪いが、強さでいえばトップの3人が一撃で殺されていく。


 その相手がゆっくりとした足取りで俺の前に立つ。


 クッ!

 このまま殺されるわけにはいかない!

 俺には病気の妹がいるのだ。


 お金の為に、悪名高いロイド騎士団に我慢して入ったのだ。

 妹の病気を治すための薬も買えていない。


 俺は生きるのだ!!


 先輩たちをやった男に防御を捨てた一撃を叩き込む。


キーン


 渾身の一撃が男に当たるが、剣が折れてしまう。


 捨て身だったので、もう立ち上がって反撃する力も残っていない。


 男が剣を振り上げる。


「メイス、すまない。

 お兄ちゃんは先に逝く。」


 殺される事を覚悟して、目を瞑る。


 男が剣を振り下ろすのを気配で感じる。


 ‥‥‥‥


 痛みも何も感じない。


 確かに剣が当たる感触があったような気がする。


 目を開けると男は別の騎士の元に向かっていた。


 え?

 俺生きてるの?

 何で??


 生き残ったことに困惑するが、命が助かって涙が溢れてくるのであった。




<女神side>


「嘘!

 この子はすっごい魂の持ち主よ。

 ちょっと何でこんなゴミ騎士団にいるのよ!

 傷が一つもつかないのは稀よ。」


 傷が全くつかない程の心の綺麗な人に出会い、帝国はまだやり直せるかもと思い始めるのであった。

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