第84話 水遊び

「それじゃあ、そろそろ海行こっか!」



 4人でご飯を食べ終えた後、七瀬のその言葉で4人は席から立ち上がった。




「奏太くん、海の中ってどんな感じなんです?」

「入った方が早いぞ」

「確かにそうかもですね」



 奏太にそんな事を聞いた琴葉は、食器を持って歩き始める。




「俺がその食器持って行くから、七瀬と先に行ってていいぞ」

「流石奏太!こういう時は使えるね!」

「……俺も食器直すの当たり前なのな」



 七瀬は拓哉に食器を渡し、琴葉の腕を掴む。また女子2人で離してしまうが、奏太は琴葉に早く遊んで欲しかったため、そちらを優先した。



 琴葉はこちらを見ながら七瀬に引っ張られるが、奏太の表情を見て安心したのか、その後は自分の足でついて行った。




「俺らも急がないと」

「もうお前完全に親だぜ?」

「親で何が悪い」

「そう開き直るのか………」



 小走りで拓哉と2人走りしながら、食器を返す。もう親でも何でも良いと感じたのは、どういう認識でも奏太と琴葉の関係性は変わらないからか。



 親みたいだろうと過保護だろうと、2人は2人だ。



 

「さて、行くか」

「ういうい」



 食器を返却口に置いたら、すぐに海へと向かった。砂浜は海の家の中よりも人が多く、この中から探すのは苦労しそうだ。



 それでも美少女というのは一際目立っており、纏っているオーラが違って見えた。顔立ちの良い人ならそこら辺にもいるが、琴葉はその中でも群を抜いて整っている。



 似たような水着を着ている人はチラホラ見えるが、フィルターでもかかっているかのように、琴葉達の姿は違って見えた。



 現在、女子2人で水を掛け合っており、それだけなのに神聖な雰囲気があった。飛び交う海水の粒や明るい表情、その姿がはっきりと見える所まで来れば、向こうもこちら側に気付いた。




「お待たせ」

「たっくん!待ってたよ〜!」



 七瀬は拓哉が来るや、勢いよく飛び込んで拓哉に抱きつく。




「奏太くんも、良く見つけられましたね」

「琴葉達が目立ってた」

「私達がですか?」

「そう」



 思った事を素直に伝えるも、それを琴葉が理解できるわけがない。噂されているだけあって、周りよりも顔立ちが良い事は自覚しているようだが、その自信はないと前に言っていた。



 今の無防備な笑みを見れば、それがどういう事なのかは悩まずに理解出来た。




「理由は分からないですけど、見つけられたなら良かったです」

「そうだろ」



 そこで、先程まで水遊びをしていた琴葉の格好に視線がいく。



 奏太の視線を奪うくらいに、琴葉の水着姿は色気を出していた。



 オーロラトップスを着用しているので、肌の露出面では問題ないと安心していたが、それが仇となった。



 濡れたトップスは琴葉の肌に引っ付き、体のラインを主張する。



 トップスの肌を覆う面積は広いのだが、引っ付いた生地が透けているグレー色なので、デコルテから下の部分も薄らと見えてしまう。



 胸元だけでなく、柔らかそうな肢体も同じ状態なので、琴葉の全体の姿に目線が行く。



 下に着ているホルターネックビキニのおかげで隠れる所は隠れているが、オーロラトップスが肌にくっついて透けている分、エロさが増すのだ。



 そのせいか、水を滴る琴葉に日光が集まり、さらに服装からは色気が出ているので、周囲からの視線は何倍にも集まった。



 華奢なのに裕福な琴葉のスタイルに整った顔は、当然その服装の効果を何倍にも生かす。




(………最初からこうしておくべきだった)



 胸の中で呟きながらも、ずっと着用していたラッシュガードを脱ぐ。



 白のパーカーっぽいラッシュガードなので、女性が着てもデザイン的には問題ないはずだ。



 残るはサイズだが、大きめのサイズは隠れる面積が広がるので、むしろ良い。




「これ着て」

「これですか?」



 奏太からのラッシュガードを手渡しで受け取り、それを両手に広げた。



 奏太は琴葉のためを思ってやったのだが、琴葉は顔をしかめた。




「奏太くんに水着姿を見て欲しかったんですけど、………やっぱり変でしたか?」



女性側からしたら、そう捉えてしまうのも無理はない。琴葉にとって楽しみにしていた海に、一生懸命選んだ水着。



 それを隠せなんて言われたら、それは傷ついてしまう。




「変じゃない。似合いすぎてやばい……。でも、透けてるし」



 変に言い訳をしたら、かえって逆効果になりそうなので自分の本心を告げる。



 奏太の言葉で自分の姿を確認した琴葉は、奏太が言いたかった事を理解してくれた。




「そういう事でしたか……。奏太くんのことですので、理由があるのは当たり前ですね」

「まぁ、そういう事だ」



 しかめていた顔は、ホッと安堵した顔に変わる。




「………水着は、2人の時にもっと見せてくれよ」

「……はい」



 琴葉は顔を赤く染めながらも、奏太のラッシュガードに袖を通す。2人きり、その言葉が琴葉には響いたようだった。



 

「奏太くんの、やっぱり大きいです」

「視線防止だから、大きくていいんだよ」

「そうですね」



 膝の上辺りまで隠れたので、今後は視線を気にする事はないだろう。琴葉は奏太のラッシュガードを着れられたからか、幸せそうな表情を浮かべる。



 とりあえず何とかなったので奏太も海に入ろうとするが、琴葉が腕を伸ばした。



 伸びた腕は奏太の肩を掴んで、奏太の体を下に下げる。琴葉が背伸びをしながら、奏太の耳の辺りに口を持っていく。




「誰かさんが物凄い過保護さんなので、私の水着姿を直視出来るのは奏太くんだけですよ?」



 普段よりも少し高い声に、吐息が混じったその声は、奏太の耳元を真っ赤に染めた。








-----あとがき-----


・すみません、つい寝ちゃって投稿遅れました。



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