第12話 3人目4人目

 少しだけ、ジオも気持ちが軽くなった気がした。

 気づけば、ガイゼンの勧誘に乗ってしまっていた。

 そして……


「おい、で……マシンっつったな? テメエはどうする?」

「なに?」

「お前も俺たちと来るかって話だよ」

「な……自分も……かっ?」

「まっ、話の流れでな……」


 自分は乗るが、お前はどうする? ガイゼンの言葉に何かを感じ、黙って聞いていたであろうマシンに、ジオは尋ねた。


「……どうして……」

「別に理由なんてねーよ。ただ、このままジジイと二人旅ってのもやだしよ」

「おお、よいではないか! どーせ、もう勇者のチームに戻れんのだったら、魔族と行動しても問題なかろう」


 マシンを誘うことにガイゼンも異論はないようで、嬉しそうにガイゼンはマシンの肩を組んだ。


「悪い話じゃないぞ? ウヌがワシらのチームは入れば、ウヌはこのワシと同じ……チームのナンバー2じゃ! 今なら副リーダーのポジションじゃ!」

「……あなたが一番強いのにか?」

「ぐわははははは、確かにそうじゃな、ぐわはははははは!」


 ガイゼンの豪快さに、マシンもどこか気が楽になったのか、少しだけ表情が和らいだ。

 しかし、すぐに顔を顰めて……


「ジオ……ガイゼン……自分はかつて仲間に危険視されて……切り捨てられた」

「ん? ああ、らしーな」

「自分は……もう二度とかつての仲間に顔も合わせられないが、それは仕方のないこと。ただ怖いのは……また誰かと繋がり……そして、切り捨てられないかということだ……」


 マシンは自身が抱いている恐怖を語った。また、悲しみを繰り返してしまわないかという恐怖だ。

 だが、そんな想いに対し、ジオは鼻で笑った。



「けっ、俺らは仲良しの友達ってわけじゃねーんだから、別にいーんじゃねぇのか? 簡単に切り捨てられて、いざというときに迷わずぶっ殺せるような関係でもよ」


「……なに?」


「チームを組んで、一緒に何かをする。それだけだ。別に、俺たちは互いの命や背中を助け合うわけでも、共に何かの正義や信念を掲げて共有し合う同志でもねぇ。いざというときは、アッサリ縁切りできるぐらい薄っぺらでも、いいじゃねーかよ」


「……そう……なの……か?」


「ああ、それに……」



 それに……。そう呟いて、ジオも少し恥ずかしそうにソッぽ向きながら……



「俺ももう、仲間だ友だ、絆だ友情だってのには……こりごりなんだよ。裏切られるのもな。だから……それなら最初から仲間じゃねーほうがいい。仲間にならない仲間になろ……ん? あれ? えっと……よくわかんねーけど、そういう関係だ!」



 ジオもまた、仲間を新しく作るのも、また裏切られるのも怖かった。だからこそ、割り切った関係でいたい。そう答えた。

 すると、ジオの要領の得ない不器用な説明に、マシンは……


「……あは……な……なんだそれは? ははははは……」


 無表情だったマシンが、初めて笑った。

 マシン自身も気づいていないのか、いつぶりなのかも分からないが、マシンは初めて純粋に笑っていた。



「ぐわははははは、バカじゃバカじゃ! ま、そうじゃな! ワシらは仲間というよりは……一緒に何かを企む、悪友ぐらいが丁度よいかの?」


「テメエにバカと言われたくねーんだよ!」


「よいではないか! のう、マシンよ。死にたがりでも、今は生きておるんじゃ。どうせなら、もうちょい弾けるぐらい生き切って、生きている証でも立ててから死ねい」



 ガイゼンも機嫌良く笑い、ジオとマシンの肩をバンバン叩き……


「……ふっ……ああ……なかなか死ねぬのだから……そうしてみるのも悪くないかもしれないな……」


 マシンもスッキリしたような顔をして、頷いた。

 そして……


「よし、チューニよ。ワシらで冒険者登録したいんじゃが、手続き教えてくれ」

「えっ、あ、ああ……えっと、それは、どこの街でも……『身体魔能力測定』で一定の数値以上だったらとりあえずは……」

「測定? なんじゃ、そんなもんがあるのか?」

「そりゃー、戦後の就職難で元軍人や傭兵崩れ、無職の魔族とかが溢れてるから、最低限の基準を求めないと、冒険者飽和が起こるからということで……」


 やるべきことが決まれば、次は手続き。

 この中で一番、現在の情勢や常識に詳しいチューニから説明がされる。

 そして……


「とはいっても、ワシらは大丈夫じゃろうが……チューニ、ウヌは……」

「……はっ? ……何で僕?」

「はっ? …………だって、ワシら三人がそういった基準をクリアできぬはずがなかろう。しかし、ウヌはヒョロそうじゃから、クリアできるか心配だったが……うむ、ウヌも大丈夫じゃろう」

「……いや、だから……なんで、僕?」

「なにって、これからワシら四人で遊ぶんじゃろ?」

「…………?」


 チューニも無理やりメンバーに入れられたのだった。


 チューニは断りたかった。


 しかし、逃げられなかった。

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