第2話 墓地の異変
「ガルスト様!ガルスト様っ!おいででしょうか!ガルスト様っ!!」
………チッ。
うっせーなー。
せっかく人が最高の気分で昼から呑んでるっちゅうのに。
「いらっしゃいませんか!?ガルスト様っ!」
わーったわーった。
返事すりゃ良いんだろ。
いつの間にか外が暗くなっちまってる。
晩飯が出来たから呼びにでも来たのか?
「おーう!いるぞぉ!」
「はっ!良かった!ガルスト様!お部屋にお入りしてもよろしいでしょうかっ!」
あ?
なんだ?
どうしてそんなに緊張感のある声で喋ってやがるんだ?
………何か嫌な予感がするぞ。
晩飯の話じゃ無さそうだ。
そう判断した俺は頭を切り替える。
「入れっ!何事だ!」
バタンッ!
「っ!ガルスト様っ!大変でございますっ!」
勢いよく開かれた扉から小間使いの少年が部屋に飛び込み、俺に縋り付く様な声を上げる。
昼から呑んでいたとはいえ、これでも俺は竜狩りの英雄だ。
酔いを一瞬で覚ます事ぐらいは出来る。
「どうしたっ!敵襲かっ!?」
俺がいるのは王城の一室。俺にあてがわれた部屋だ。
そんな場所にいる時に小間使いが慌てふためいた様子で入ってきたんだ。
王城が襲撃されたと考えるのは自然だ。
だが小間使いの少年は俺の予想外の言葉を口にした。
「違いますっ!ガルスト様!墓地が、墓地がっ!」
墓地?
墓地がどうしたというのだ?
稀に墓地でアンデッド湧く事もあるが、その程度なら王都の警備兵でどうとでもなるはずだ。
ここまでパニックになって俺を呼びにくるほどではない。
「墓地が?」
小間使いの少年はパニックになりかけて言葉を詰まらせていた。
だから俺が問いかけたのだがーーーー直後、
「墓地がっ!王都にある全ての墓地がっ!あらゆるアンデッドモンスターによって覆い尽くされていますっ!!」
「なんだとっ!?」
どういう事だ!?
アンデッドモンスターの異常発生か!!
「それは本当かっ!」
だが何故!
何故王都の全ての墓地でその様なことが起こるっ!
「間違いありませんっ!既に騎士団や国軍、更には王都中の聖職者までもが墓地のアンデッド制圧の為に出撃しています!」
王都の全ての墓地がその様な状況になっているのならば彼らは動いてもおかしくは無い。
おかしくは無いが、彼らだけでは―――
「ですが戦況は悪化の一途!このままでは墓地からアンデッドが溢れ出すのも時間の問題ですっ!」
―――実力不足だ。
「その為国王陛下から直々に、ガルスト様への出撃命令が下されておりますっ!直ちに武装し、それぞれの墓地を各個制圧せよとの事っ!」
言われなくてもそうするに決まってんだろっ!
「王命、確かに拝聴したっ!竜狩り・ガルスト!直ちに出撃するっ!」
俺はどんな状態でも戦える様に、常日頃から武装している。
この装備は最上の装備では無いが、敵は恐らく質よりもその数が問題なのだろう。
だったらこの装備で問題ない。
そう判断した俺はそのまま王城を飛び出し、最も近い墓地へと駆けて行った。
この時の俺はまだ知らなかった。
この騒動は王国が混乱に陥いる序章であり、
それを引き起こした張本人は、
俺だった事を。
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