快速殺人電車 第4話
飛び散り空を舞う赤。
触れたその場所すらも赤に変わる。
周囲に撒かれる赤は床だけでなく座椅子や天井までも赤に染めていく。
痛みと苦しさに悶える女子高生の苦悶の表情すらも赤に染まっていく。
赤、全てが赤、手で押さえる事でホースの先端を押さえている様に赤は遠くにまで飛ぶ。
大成の視界すらも赤に変わり徐々に赤一色に変色していく・・・
それは一つの世界が赤になる光景であった・・・
ドスンっと腰を降ろした振動に意識がハッと覚醒する。
座席に座った大成は目を疑った。
赤一色に染まった世界は何処にも無く、視界に入るのは何事も無い普通の電車内だったからだ。
だが大成は驚く事となる・・・
「まぁ、これだけガラガラだったら必要無いか・・・」
無意識に口が開き、言葉が出たのだ。
自分の意思では無く体が勝手に動く不可思議な現象を身をもって体験したのだ。
しかし、同時にその言葉に聞き覚えがあったのも気付いた。
慌てて大成は視線を向けた、記憶の通りならば・・・だが。
「えっ・・・」
その視線の先には座席に座ったまま俯くサラリーマンの姿。
その方向にあのOLの姿は無かったのだ。
「そんな・・・一体どうなって・・・」
全く現状が理解できない大成、だがその視界に赤がフラッシュバックする。
世界が赤に染まるその時みたいに、一瞬だが視界が赤く見えたのだ。
そして、大成はそちら側に視線をやった。
「えー?ラブラブなんじゃん~」
「そうだよ~首にキスマークなんて~」
女子高生達の言葉に恥ずかしそうに顔を赤くする一人の女子高生、彼女こそが赤その人である。
どうやら首に残っているキスマークらしき後について突っ込みを入れられているようであった。
「違うよ~これ多分虫刺されだよ~」
「そんな訳ないって~」
「そうだよ、こんなにくっきりと残ってるんだもん」
そう言って二人の女子高生の顔が一人の首に近づいていく・・・
それ見て大成はおもむろに立ち上がり、持っていた学生カバンを落として女子高生たちの方へ蹴飛ばした。
床を回転しながら大成の学生カバンは滑っていき、首に噛みつかれそうになっていた女子高生が屈んだ。
滑ってきたカバンを受け止めてくれたのだ。
そのせいで左右に居た女子高生二人は動きが止まった。
その二人の目を見て大成は背筋が凍る様に寒気を感じた・・・
「な・・・」
「どうかしましたか?」
その大成にカバンを拾い上げた女子高生がカバンを差し出しながら聞いてくる。
彼女は気付いていないのだ、左右から彼女の首を噛み切ろうとした二人の女子高生の目と口が真っ黒の闇になっていた事を・・・
その視線がこちらにでも向いていたら大成は平常心なんて保てなかっただろう、だが幸いと言えるのか二人の女子高生は互いを見つめ合いながら静止していた。
理解の及ばない事象と言うのは想像を掻き立てる事により絶大なる恐怖を生む。
大成は差し出されたカバンを震える手で受け取り後ろの二人に視線をやったまま・・・
「あ、ありがとうございます・・・」
「どういたしまして」
そう答えた女子高生は近くの座席に移動し腰を降ろした。
直前まで話をしていたと思われる二人には見向きもせずに、一人で居るのが当たり前と言わんばかりの行動。
そして・・・
ゴバシャ!
二人の女子高生は互いの顔を見合ったまま、ものすごい勢いで顔面をぶつけ合った。
頭突きではない、顔面をそのまま相手の顔面に叩き付けたのだ。
その躊躇の無い激突は生々し音を響かせながら二人の顔を融合させた。
肉が潰れ、骨が砕け、歯は折れて互いの顔面に突き刺さる。
互いの耳が触れ合うくらいにまでめり込んだ二人の顔面、しかしその激突音も座った女子高生には届いていないのか、まるで興味を示す事無くそこに座っていた。
互いに顔面をめり込ませた二人の女子高生の血か床に広がりその上に二人の体は崩れ落ちた。
まるでそれは一つの生き物の様に頭部を融合させ揺れる車内の床に転がる・・・
その非現実的な光景から目が離せなかった大成、その耳に声が飛び込んできた。
「あら?お兄さん大丈夫かい?」
それは向かいの座席に腰掛ける老夫婦の一人、お婆さんからであった。
大成が驚愕している様子を理解していないのか、二人もまるで興味を示さずこちらを見詰めていた。
「ん?どうやら君は・・・」
お爺さんが何かを言いかけた。
だがその言葉は自分に届く訳が無いのだ。
何故ならば老夫婦は突然注射器のような物を何処からか取り出し笑った・・・
そして、それを二人は持ったまま立ち上がり歩いていく・・・
その足取りは見た目以上に若く、両親と一人の子供の居る方へ歩いて行った。
3人で仲良さそうに手を繋いで立っているその家族・・・
老夫婦の動きが突然早くなり、その子供の顔面に二人の注射器が突き立てられた。
「いたいー!ままーぱぱー!痛いよー!」
眼球は反れていたとはいえ、左頬と目の下に突き立てられた注射器。
そしてその痛がる子供の首を両親が突然掴み上げたのだ。
「げ、げほっ・・・く、くるしい・・・よ・・・ま・・・ま・・・」
首を絞められながら持ち上げられた子供、見た感じ4~5歳と思われる男の子の首が二人の手で一気に捻られた。
ゴキッ!
子供の体は痙攣をしながら宙づりになったまま手をダランと垂らした。
再び起こった惨劇に理解が出来ない大成はその場に座り込むのであった・・・
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