第395話
「リック。そういえばあの騎士との話し合いはどうなったんだ?」
晩御飯が終わり、さーてお風呂に入ろうかなとしたところでヴォルフがそんな事を聞いて来た。そういえば、ぐーたらした過ぎて報告するの忘れたね。
「あーあれね。時間を見つけて聞いてみたら、何人か知り合いは居るらしいんだけど、優秀な部類の人達は高位の貴族だったり王宮だったりに勤めてるから、話をするのは無理なんだってさ」
「リック。父さんは別にそこまで優秀な人材を求めてる訳じゃないぞ?」
「そうねー。お母さんも、お洗濯とか家のお掃除とか食事作りとか、少し手伝ってほしいだけなのよー」
だろうね。こんなド辺境でやる書類仕事なんて、他の貴族の領地だったり王宮勤めと比べるまでも無くしょぼい。何せ広大すぎる荒れ地にあるのは俺達が住んでる村1つだけだからな。
「まぁ、それは分かってるけど、あんまり変なの連れて来られても困るでしょ? 役立たずだったり、妙に威張り散らしたりするようなのとかさ」
「それはそうだな」
「そうねー」
ここは貴族とかそういう煩わしいのとは無縁といってもいい場所だ。そんなところに他の貴族家だったり王宮の常識で凝り固まったような奴が来るのは迷惑以外の何物でもないからな。
「だから、裕福な商店とかが雇う為に使ってる斡旋所とかないのって聞いたら、アイツ知らないとか言ってさ。本当に時間の無駄だったよ」
そういう場所があれば話は別なんだけど、あのハーフエルフは思った以上に使えなさ過ぎて本当に役立たずだった。正直、時間を返して欲しいと思うくらいだ。
「斡旋所か……あるんじゃないか? 父さんが傭兵を始めた頃は、似たような場所があってな。よくそこで仕事を受けたもんだ。そういった連中用の場所があってもおかしくないだろう」
「そうねー。そんな場所があると分かるだけでも、何とかなりそうよねー」
俺も2人の意見にはある程度は同意できる。こんな世界じゃ、全員が全員冒険者ギルドに籍を置くなんて土台無理な話だしね。
逆に、貴族に仕えるような人間は縁故で決まってる気がする。なにせ、俺にとっては地獄と言っても差し支えない悪の巣窟である学園なる監獄があるんだからな。
あそこを卒業するだけでも、多かれ少なかれブランドを手にしているはずだ。副会頭の他に何人か……確かいたような気がする。自分は学園を卒業した優秀な人間だとのたまってた奴が。
「じゃあ、今度ルッツが来たら任せるって事でいい?」
「いいんじゃないか? リックが問題なければだが」
「そうねー。リックちゃんのお金ですものー」
「俺が構わないよ。ぐーたらにお金をかけるのは惜しいと思わないからね」
家事全般に費やす時間が無くなる=ぐーたらタイムが増える。これに文句を言うぐーたら教の信者は存在しない。してたらそいつは忙し教のスパイである可能性が高く、速攻つるし上げだ!
「はぁ……力の入れどころがなぁ……」
「別にいいじゃん。村の役には立つんだから文句言わないで欲しいし、ゲイツ兄さんが領主になるために学園に行ってるんだから俺はいいじゃん」
ゲイツはちゃんと健康に育ってる。まぁ、よからぬ邪魔者の入れ知恵のせいで意味不明な悩みを抱えてしまった事はちょっと残念ではあるな。やはり、長期休暇のわずかな時間しかぐーたら道を叩き込めないせいだろう。それが唯一の欠点かな。
「そうよー。リックちゃんが領主になったら、誰が甘い物を作ってくれるっていうのよー」
「それは母さんが自分でやりなよ。いつか調理工程を羊皮紙に書いとくからさ」
「……女官さんを雇うしかないわねー」
やつもりはさらさらないらしい。まぁ、ぐーたら道に入門してるエレナだもん。甘い物が食べたいと思っても、作るのが滅茶苦茶面倒臭いのを知ってるし、そもそも食材を集めるところからしてやる気がゴッソリ削がれるからね。
「まぁ、甘いもの作るかどうかは置いておいて、誰が何と言おうと俺は学園には絶対に行かないし、領主になるつもりもこれっぽっちも無いから」
「分かってるつもりなんだがなぁ……」
「だったら諦めなって。第一、ゲイツ兄さんはいい領主になるよ? ちょっと女の人の好意に鈍感なせいでいつか背中を刺されそうな危険さはあるけど、剣の腕も立つし頭の出来もいいし、他のクソ貴族を見てみなよ。家督争いで骨肉の争いをしてるんだよ? そうなってもいいの?」
まぁ、ンな事をするつもりはこれっぽっちもない。だって待ってるのは領主っていう地獄の道だからね。
「そうねー。お母さんとしても、兄弟で争ってほしくないわねー」
「でしょ? そんな事より、ゲイツ兄さんの為に文官とか育てなよ。子供の中ならシグとかオススメだよ?」
アレは将来優秀な文官になると思う。少し知識欲が強いのが玉に瑕だけど、村に居るガキ共の中だと圧倒的に頭がいいからね。
「シグか……確かにあの子は将来いい文官としてゲイツを支えてくれそうだな」
「母さんの方も、そろそろおば――じゃなくてお姉さん方の中から何人か女官として雇ってみるのもいいんじゃない?」
ルッツに頼んで文官・女官を雇うのもいいけど、それをリーダーとして何人かに知識と技術を仕込めば、次代に受け継がれてゲイツからその子供に。そのまた子供にといった感じで、非常にお得に文官・女官が爆誕する。
「あら、それもいいわねー」
「悪くないな。近頃はリックのおかげで色々と余裕が出て来たからな。村人の中からそういった人材を育てるのも悪くない」
「ま。すべてはルッツがいい人材を引っ張って来てくれたらにかかってるんだけどね」
これが中途半端な人材だったら、その知識も中途半端になる。かといって相場も分から――聞くの忘れてたなぁ。まぁ、これに関してはぬいぐるみを渡す時でいいだろ。覚えてたらだけど。
「そこは頑張るだろ。最近やらかしたせいでリックが厳しいと愚痴をこぼしてたからな」
「ま。その言葉を信じる事にするよ」
話は終わりかなと椅子から立ち上がると、2人とも特に何も言わなかったんでそのまま自室のベッドにダイブした。
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