同情する余地はございません


「ソルディ、あなたの母は側妃ですが、父親は反逆罪で処刑された元王弟です。側妃は妊娠しておりましたので、処刑はあなたを産んでから平民に落とされて絞首刑となりました。王家の血を引いている以上、あなたを貴族や平民に下賜した場合、抗争の種になる恐れがございました。そのため、王族としてお育てし、婚姻という形で臣籍降下させた上で幽閉することが決まったのです。そして、長子が女児で次期当主となりうる貴族としてわたくしが選ばれたのですわ」

「では、私を好いてはいなかったと申すのか」

「当たり前です。はじめは親の罪から幽閉される身を気の毒に思っておりました。ですが、あなたは愚かな行為を繰り返し、愛人を二人も作りました。すでに同情する余地はございません」


くずおれるとはこのようなことをさすのか。

私は力なく絨毯に座り込んだソルディをみてそう思ったのです。

だからでしょうか。

最後にトドメをさして差し上げようと……

二度と私が彼を好いていたと誤解しないように事実を伝えることにしました。


「今回、なぜ捕まったか教えて差し上げますわ」




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裁判は行われない。

元王子とはいえ、今は平民。

そんな人が愛人二人と共謀して元婚約者の屋敷に乗り込み、宝石やドレスを盗んだ現行犯で捕まったのだから。

その中に、王家より下賜されたティアラもあった。

そのようなものに手を出した以上、王家への反逆罪も適応された。


愛人両家の両親は、愚かな娘と同じく絞首刑に処されることとなった。

相手がソルディだとわかった上で娘の行動を止めなかったことが、逆賊に加担したと見做されたのだ。

兄弟姉妹と一族は国外追放の処分となった。

家族や親族から逆賊を出した以上、周りから冷遇されるだろう。

中には不埒にも婦女暴行を正当化する者もいる。

そんな魔の手から逃すための処分だ。

彼らは処刑の前日に国境を抜けた。

早くても三十年、陛下が生前譲位をなされて落ち着いた頃、恩赦が与えられる。

そうならなくても、追放された彼らの子や孫はこの国に足を踏み入れることができるだろう。

追放後に生まれた者は罰を受けないのだから。



ソルディたちの公開処刑は、ほかの罪人と共に実行された。

私の最後の言葉を聞いたソルディは大人しく従って処刑台に立ったらしい。




「仕組まれたのですわ、あなたの愛人が妊娠したせいで。あなたと愛人二人、そしてお腹の子をために。ですから、婚約者として最後にお会いしたときにお伝えしたのです。『馬鹿なことを考えず真っ直ぐ生きる努力をしてください。けっして愚かな行為に走らないように』って」

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