第45話 酷いなおい
「ああ、実はフォンハイム領北部の僻地に古い神殿跡が発見されてな――」
リディックの話を纏めるとこうである。
どうやら、その遺跡の地下深くにはドラゴンゾンビが眠っていた様だ。
本来ならドラゴンゾンビなんて危険な存在は、さっさと始末するのが常である。
が、フォンハイム侯爵家はこれを放置する事を決定した。
何故か?
出入り口が小さすぎて、巨大なドラゴンゾンビが出入りできない状態だったからだ。
まあ要は、放っておいても無害という事である。
出てこれない訳だからな。
だから放置する事になったのだ。
ドラゴンゾンビが弱い方だっつっても、普通にやったら被害が出るだろうからな……
ドラゴンゾンビは、ドラゴンの中では弱い方である。
なにせドラゴンを最強種たらしめるその圧倒的な防御力の源、竜の鱗がない訳だからな。
空も飛べないし。
明確な弱点もある。
なので他のドラゴンより遥かにくみしやすい。
とはいえ、である。
それでも普通にヴァンパイアの真祖よりも強いのだ。
なのでそれを討伐しようとすると、それ相応の被害が出るのは疑い様がない。
そりゃ、害もなければ討伐に被害が出るとなれば……討たんよなぁ。
「そこで私は立ち上がった!さあ我がライバルよ!共にドラゴンを討とうではないか!」
「侯爵家では放置を決めたんだろ?」
「うむ。父上は被害が出ない以上、放置すればいいとお考えのようだ」
「一応聞いとくけど……侯爵からの許可は?」
「そんな物はない!」
コイツ言い切りやがった。
相変わらず残念な思考の持ち主である。
「なに、心配はいらん。ドラゴンスレイヤーとなって戻って来る私達を見れば、父上もきっとお喜びになるはずだ」
喜ぶねぇ……
フォンハイム侯爵家は、ジョビジョバ侯爵家の様な武を重んじる家門ではない。
なので、無用なリスクを冒してまで、子供にドラゴンスレイヤーの称号を与えたいとは思わないはずだ。
俺は確認のため、ちらりと執事の方に視線を向けた。
従者を引き連れているのに、黙って動ける訳もないからな。
確実にリディックの行動は、侯爵へ報告されている筈である。
「……」
俺の視線に気づいた執事が、表情を崩す事なく軽く会釈する。
どうやら、侯爵は黙認するつもりの様だ。
バカ息子の行動を。
「さあ、行くぞシビック!俺達二人の伝説の始まりだ!」
「えーっと……すごく気になったんだが……二人二人って、まさか本当に二人で戦う訳じゃないよな?」
「何を言っている?二人に決まっているだろう。お前の兄達が二人でドラゴンを狩ったように、俺達ライバルが手を組めば不可能はない!」
再度、執事の方へ視線を向けた。
すると彼は笑顔のまま会釈する。
マジかコイツら。
完全に俺頼りじゃねーか。
ジョビジョバ家の出自だから、リディック守りながらドラゴンゾンビ位倒せるだろうとか考えてるみたいだけど、俺は上二人ほど化け物じゃないぞ。
てゆーか……ヤングさん、よくこの依頼を昇級テスト用で受けさせようと思ったな。
ひょっとして、俺の出自ってギルドにバレてる?
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