第40話

あの後後始末をアンドロイドに任せ、俺と麻奈はロストエデンへと戻った。

鳥井をどうしたのか俺にはわからない。だが、任せた以上、余計な口出しはしないつもりだ。



「ふぅ…久しぶりにゆっくりできてるな」

独り言を呟きベッドの上で足をバタバタさせる。

自室でくつろぐ俺。最近張り詰めてたからなぁ。やっぱりこういう時間が必要だよな。

ロストエデンへ戻って以降ここ3日ほど珍しく麻奈も魔王も来ない。静かなひととき。



ちなみに今魔王はロストエデン内にはいない。アーガイアで何かあるらしく「終わったらすぐ帰ってくる」と言い残し戻っていった。

「いや、お前の帰るべきところはアーガイア国だろ。もう来んなよ」と言ってやったが耳に入っていないようだった。



そんなことを考えていたらいつの間にか眠ってしまった。昼寝というのは素晴らしい!異論は認めない。




んん?足の指が生あたたかい…?まるで犬に舐められてるような…

そういえばダイゴローもよく舐めてたなぁ。ダイゴロー元気かなぁ?



犬!!!!???


俺は一気に覚醒した。起き上がって足もとを見ると、、、


四つん這いの鳥井が首輪をつけて足の指を一心に舐めていた…



服は麻奈とほぼ同じ。違うところといえば麻奈は尻から黒い尻尾が生えているが、鳥井はふさふさの犬の尻尾。

その鳥井の向こうにはめっちゃ笑顔の麻奈が立っていた。



(何の悪夢だコレ……)



俺が起きたことに気づいた鳥井は「くぅぅ〜ん」と本物さながらの鳴き声で俺の顔を舐めようと近づいてきた。

が、すんでのところで麻奈が首根っこを掴み後ろへ引きずる。


そして恐ろしい形相で鳥井を睨みつけ

「足の指だけだっつったろーが!あぁん!?ペットの分際でなにご主人様の顔舐めようとしてんだ!?ミンチにされてーのか?」


その後鳥井をパッと離した麻奈はにこやかに


「お目覚めですか?ご主人様♪」


俺は頭を押さえて「何がどうなってる…?」と絞り出すように問う。


「はいっ!以前にご主人様は自宅で犬を飼ってらっしゃったとお聞きしまして。ペットがいた方が安らげるんじゃないかと愚考した次第であります!!」


「それで3日間、鳥井を犬にするために調教していたと…?」



「ちなみにどうやったの?」


まずは……と笑顔で語り出した麻奈の拷問は聞くに堪えない内容だった。

オイオイ…俺やカーミラの比じゃないぞ。拷問クイーンと名付けよう。


若干というかだいぶひいてしまった俺は「そ、そうか。頑張ったな」としかいえなかった。



「それで、人間である鳥井の理性は残ってるのか?」


「ええ、もちろんです。今も残ってますよ?」


「アホか!!寝込み襲われたら俺死ぬやんけ!」

思わず大声で叫んでしまった。


「その心配はございません。ごうも…じゃなかった。調教してる間に新たなスキルを身につけまして、、、『従属』というスキルです。このスキルは相手が屈服した場合、その相手に制約をかけられるというものです。そのスキルを使用し、あの犬に制約をかけております。

私もはじめはちょっと遊んだら剥製にでもしようかと考えていたのですが、このスキルを手に入れて考えが変わりました」



剥製って…鹿や熊じゃないんだからと思ったが口には出さない。


「まぁ安全なのはわかった。で、この犬でいいのか?に何をさせるつもりなんだ?」


麻奈は顔を赤らめて

「私とご主人様がまぐわっている間にご主人様の足の指を舐めさせようと思いまして。

本来なら私が舐めて差し上げたいのですが、さすがの私でも『高速腰振り』の最中に足の指は舐められませんから…し・か・た・な・しにですが!!」


麻奈が鳥井犬を見て

「もしお気に召さないのであればすぐに処分致しますが?」


次の瞬間、鳥井が叫んだ。

「お願いします!!足の指でもなんでも舐めますから!!何でもしますっ!」


麻奈がまた鬼の形相になる。麻奈さんこえぇぇぇ。


「お前は犬だろーが!なにヒトの言葉喋ってんだ!?また拷問されたい?それかもう処分しようか!?」


鳥井犬は怯えたあと腹を見せて服従のポーズを取りハッハッハと舌を出して犬のように媚びた。


赤井でだいぶ溜飲が下がったのもあるだろうが、鳥井が哀れになってきた。


「ま、まぁ落ち着け。今のは聞かなかったことにしようじゃないか。うん、俺は何も聞いていないぞ。だから、拷問はやめてやれ。」


麻奈がまたにこやかになり


「ご主人様がそうおっしゃるのなら!」


鳥井は涙をぼろぼろ流して心底嬉しそうだった。服従のポーズのままだけど…



こうしてロストエデンに新たな仲間?鳥井改め鳥井犬が加わったのだった。

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