第31話

メイがマシンガンなんてぶっ放した日には俺は卒倒してしまうかもしれん。

メイには戦闘などとは無縁で優しく育ってほしい。

そしていつかイイ人(ヒト種には限らないが)と結婚………

いやいや、やっぱそれはダメだな。そんなヤツを連れてきたら銃口を突きつけてしまう自信しかない。



頭の中でそんなことを考えながら全速力でロストエデンを駆ける。


途中でナターシャ、シルバー、アレクセイも合流し計7人でロストエデンを全力疾走する姿は事情を知らない者からすれば滑稽以外の何物でもない。




ハァハァ…着いた…

この扉の向こうでナニが行われているのか…

みな緊張の面持ちだ。誰も一言も発しない。



(開けるのめっちゃイヤやー!誰かやってくんないかなぁ…)



だが、誰もドアノブに触れようとはせず一定の距離を保っている。

「司令官、早く開けて下さい」という無言の重圧。

し、仕方ない…ここは俺が… 。



俺はゴクリと息をのみ

「じゃ、じゃあ開けるぞ?」


真剣な面持ちで一斉に頷く。


ええい、どうとでもなれ!という気持ちで俺はドアを勢いよく開けた。


だが、目の前に飛び込んできた光景は俺と副官たちが誰一人として想像だにしていないものだった。





「アマンダベビちゃん。お腹すきましたかー?」


「すいたでちゅ。」


「メイお母さん、アマンダベビちゃんがお腹すいたみたいですよー。」


「わかったぁ。すぐに準備するからちょっとあやしててくれる?リンお父さん。」


「わかりました!アマンダベビちゃんはお利口さんだから待てるよねー?」


「お利口さんだから待てるでちゅ。」


「準備できたよー。

はい!アマンダベビちゃんミルクだよ。たくさん飲んでね♪美味しい?」


「美味しいでちゅ。」

とアマンダが言ったのと同時にドアが勢いよく開かれた。





俺たちの目に飛び込んできた光景は、あの戦闘狂のアマンダが仰向けに寝転がり赤ちゃんの格好で「美味しいでちゅ」と言い、ミルクを飲むポーズをしているところだった。


アマンダは俺たちに気づくと顔を真っ赤にしながら「い、い、いやこれは違うんだ。ま、ま、ま、待ってく…」と慌てていた。


「「「「………………………」」」」


俺たちは何も見なかったことにして無言のまま扉を閉めた。


次の瞬間、扉の向こうからと不穏な音がした。


この音は…

「マズい!!全員走れっ!!」

俺の掛け声とともに麻奈以外の全員が走り出す。


スガガガガガッ!!


さっきまで俺たちが立っていたところに銃弾が撃ち込まれていた。奇跡的に麻奈には当たっていない。


「麻奈!何してるっ!?走れッ!」


俺は逃げる方向を見ながら後ろに手を伸ばし麻奈を掴んで走り出した。


走っていると、

(んっ!?なんか柔らかいような…?ふにふにしている…)


「ご主人様ぁ、こんなところでですかぁ?私はいつでも大丈夫ですっ!!

あぁ、私の初めてをここで捧げるのですね…」


「ブボォッ!!」

後ろを振り向くと俺はリリスに転生して大きく育った麻奈の胸を鷲掴みして走っていた。

麻奈は恍惚の表情だ。


だが、余裕はない。麻奈の背後に見えたのはマシンガンを両手に持ち部屋から飛び出してきた修羅の姿だったからだ。

俺たちは今日一番の全速力で逃げたのだった。




「死、死ぬかと思ったぜ…」「死にかけましたね」「ガハハハ、死ぬとこじゃったわい」


「はぁはぁ…何言ってる。お前のせいだろ!ニック。お前がマシンガンの使い方を教えているとか言うからだ!」


ニックが慌てる。

「司令官、そりゃあないですよ!司令官だってあの時同意したじゃあないですか。」


「いいか?ニック…お前あのときの俺の言葉をよく思い出すんだ。俺はって言ったんだ。

俺はアマンダを心の中では信じていたぞ。」


「ずりぃ!!信じていたとか本当かよ!?」


「あ、当たり前じゃあないか!何を言っているのかねニック君。司令官が副官を信じないでどうする。俺は君たちを心から信じているぞ。」


魔王と麻奈が顔を見合わせて「この言い方は嘘だな」「嘘ですね」と言い合っていたのを努めて無視する。



「とにかくだ!!この話はこれからタブーとする!いいな?」


「ガハハハ!!アマンダにもあんな可愛いとこがあるとはのぅ。ワシは戦闘しか頭にないと思っとったぞ。言ってもいいんじゃないか?」


『戦闘しか頭にない』その部分には俺と副官の全てが禿同だ。だが、、


「アレクセイ、お前もし仮にアマンダが恥ずかしさに我を忘れてうっかり『特殊能力』を発動させてしまったらどうするんだ?ロストエデンでも大被害は免れないぞ。」


「そうじゃったそうじゃった!アレは向けられたらたまらんのう。ガハハハ!」


。メイの部屋にも行かなかった。なんなら俺たちはピクニックに出かけていた。

このスタンスを貫け。良いな?」




それ以降この話が表に出ることは一切無かった。




※作者からの御礼とお願い※

たくさんの方に読んで頂けてPVがそろそろ6万を突破しそうです。本当にありがとうございます。

皆様の応援と星が何よりの励みになります。拙い文章ではございますが引き続きのご支援宜しくお願い致します。

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