里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

第57話 私の壮大な計画

　その後も私はブレンダ嬢と3時間程打ち合わせをし、コネリー家へと帰宅した。

午後6時―

「ふぅ〜…今日は疲れたわ…」

自室へ戻り、ソファに寝転んでくつろいでいるとノックの音が聞こえた。

コンコン

「はーい、誰かしら？」

「クララです」

「どうぞ、入って」

カチャリ…

扉が開き、トレーにティーカップを乗せてクララが現れた。

「奥様、大変お疲れだとお聞きしました。どうぞ」

コトン

湯気の立つティーカップをテーブルの上に置いてくれた。

「まあ、美味しそうね。ありがとう、クララ。疲れた時にはやはり甘い飲み物が一番ね」

きちんとソファに座り直すとカップを手に取り、匂いを嗅いだ。

「う〜ん。この甘い香り…いいわね〜」

ふうふうと冷ましながらココアをゴクリと飲む。うん、甘くて美味しい！

「いかがですか？奥様」

「ええ、とっても美味しいわ」

笑みを浮かべて言う。

「それは良かったです」

「ところでクララ。あの阿呆の様子はどうだった？」

ココアを飲みながら尋ねた。

「ああ、デニム様のことでいらっしゃいますね」

阿呆と言っただけで誰の事か分かるほど、もうこの屋敷では浸透しているようだ。

「そうそう、そいつの事よ」

自分でもデニムの事になると、どんどん口調が悪くなっていくのが分かる。

「それがもう大変だったんですよ」

「何が大変だったの？」

「今日は1日ずーっとイライラされて、私達使用人に当たり散らしていたんですよ？」

「何ですって？クズ男の癖に生意気な！しかも自分たちで給料を支払っているわけでもないのに？本当に存在するだけでイラつかせる男ね？」

でも、大きな口を叩けるのも今のうち。もはやデニムの命運はつきかけているのだから。

「それで、苛ついている原因は何だったのかしら？」

「ええ。『メイがいないと、どうにも調子が出ない。俺を放って置いて何をしているのだ』と」

その言葉に危うくココアを吹き出しそうになってしまった。

「な、な、何…？あいつ、そんな事を言っていたの？」

「ええ、そうなんです。あ、あの…奥様、それでデニム様がおっしゃっていたのです。今夜9時に必ず自分の部屋に寄越すようにと」

「はぁ〜っ？！あの阿呆！デニムのくせに私を呼出してるわけね？！」

冗談じゃない。もう昨日でデニムの前ではメイドの格好は終わらせるつもりでいたのに、今日もまた『メイ』に変装しなければならないのか？！

だけど…。私はクララをチラリと見た。クララは困りきった顔をしている。う〜ん。きっとあ阿呆の事だ。私が現れなければ使用人達に当たり散らすのだろうな…。

「分かったわ…今夜9時にあの阿呆のところへ行ってくるわ」

ため息をつきながら言った。

「あ、ありがとうございます！奥様！それでは今夜は奥様のお好きなメニューを用意させて頂きますね！失礼します！」

クララは頭を下げると、すぐに部屋を出ていった。

「さて…義父のところへ行こうかしら」

私は傍らにあったカツラに手を伸ばした―。

＊＊＊＊

コンコン

義父の執務室の前に立ち、私はドアをノックした。

カチャ…

扉が開き、中からはロバートさんが出てきた。

「あ、フェリシアさん。今日は一体1日何処へ行ってらしたのですか？」

「ええ、説明しますのでまずは中へ入れて頂けますか？」

「ええ、どうぞ」

ロバートさんが道を開けてくれたので、私は部屋の中へ入るとそこには書斎机にむかった義父の姿があった。

「ああ、こんばんは。フェリシア」

「お義父様、お仕事お疲れさまです」

そして義父の前に行くと、私は言った。

「お義父様、大事な話があります」

「大事な話…？」

「はい、ずばりお聞き致します。コネリー家に…未練はありますか？」

私の質問に義父とロバートさんは顔を見合わせた。

「それは…一体どういう意味かな？」

義父は私に向き直ると尋ねてきた。

「はい、では私の話を聞いて下さい」

そして私は自分の計画の説明を始めた。

そう、あの阿呆デニムと義母を懲らしめるための計画を―。