第33話 義父のアイディア
「お義父様、何とかデニムを止める方法はありませんか?」
「う〜ん…すまない、フェリシア。何とかしてやりたいのは山々なのだが、私は明日領地の視察に行かねばならないのだよ」
「本来はそのような仕事はデニムがするべきなのですよ?お義父様は引退されて、デニムが本来は当主になるべきなのに…」
言い掛けて、私は顔面が青くなっていくのを感じた。駄目だ…あの馬鹿デニムに領地経営なんか出来るはずない。フレディの言葉通り、あの馬鹿が出来ることと言ったらカードゲーム位だ。あんな奴に当主をさせれば領地は破たん、領民たちの信頼を失って爵位を剥奪されてしまうかもしれない。そうなれば実家の家業にも影響が出てしまう。そう、私はどんな理由があろうともコネリー家の爵位にしがみついていなければならないのだ。
「うう…やはりあの馬鹿には領主なんて務まりませんね…」
「うむ、その通りだ」
息子を馬鹿呼ばわりされているのに義父は相変わらずクールだ。
「何とかデニムをフェリシアさんの実家に行かせない方法を考えた方が良さそうですね」
ロバートさんの言葉に私達3人は必死に考えていると、義父が言った。
「そう言えば…我儘なデニムはコネリー家の馬車にしか乗らない主義だったな。辻馬車はどうにも乗り心地が悪いと言ってる。いっその事、馬車を使用できないようにしてみてはどうだろう?」
「あ…」
言われてみればそうだった。デニムと義母は自分たちの立場も考えずにやたら見栄っ張りだ。衣服は常に最先端ファッションの物を好み、馬車は乗り心地を徹底的に追求した特注品。そんじょそこらの馬車とは乗り心地が格段に違う。私も以前にデニムや義母に内緒で乗った事がある。何せケチンボの2人は私にコネリー家の馬車は勿体ないと言って使用させてくれないので、一度だけ勝手に拝借したことがあったのだ。
そしてその際、あまりの心地よさに乗って数分で寝落ちしてしまった事を思い出した。
「お義父さま、ナイスアイディアです!明日、コネリー家の馬車を全て使用出来ないようにしましょう。」
「何か良い考えがまた浮かんだようですね?」
ロバートさんが楽し気に言う。
「ええ、それはもうばっちりですよ!あのデニムの悔しがる姿が今から目に浮かびます。そうと決まれば、こうしてはいられません!」
私はガバッと椅子から立ち上がると言った。
「お義父様、ロバートさん。仕込みの準備がありますので、今夜はこれで失礼します。」
そしてロバートさんを見た。
「すみません。ロバートさんからデニムやお義母様のあれこれの話を聞きたかったのですが…残念です」
するとロバートさんが言った。
「ああ、それなら大丈夫です。僕はコネリー家の…というか叔父さんの専属弁護士になったんですよ。今夜からこの屋敷に住むことになったのです」
「まあ、それではいつでもお話を聞くことが出来ますね?」
「はい、そうですね」
ロバートさんはにこやかに言う。
「うむ、どうやらロバートとフェリシアは気が合いそうだね。2人とも頭の回転が速いから良い協力関係が得られそうじゃないか」
義父が私とロバートさんを交互に見ながら言う。
「はい、そうですね。では今夜はこれで失礼致します」
私は頭を下げると部屋を後にした。
仮住まいしている部屋へ足早に向かいながら、明日の計画をあれこれ頭の中で考え始めた。ぐうたらなデニムはいつも朝起きるのは午前9時。そこから仕度をして朝食を取ると大体午前10時くらいになる。
「朝に仕込みをしても十分間に合いそうね…フフフ…明日の朝、デニムがどんな反応するのか楽しみだわ…」
私は込み上げてくる笑いを押さえながら仮住まいしている自分の部屋を目指すのだった―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます