§1羽目を外した罰
梅枝七海はクリスマスの日、
「合格おめでとうございます。それと、今日はお招きいただき…。」
「ようこそ!そんな堅苦しい挨拶は良いから、気楽な集まりだから楽しんで!」と言われて周りを眺めると、上品そうな男女10名ほどが集っていた。私のようなドレスアップしている女子もいて安心したが、ラフな格好で参加している人もいた。
「えーと、みんなに紹介します!聖海女子大の2年生の梅枝七海さんです。」
「わー、かわいい!駿君の新しい彼女なの?」「どこで見つけてきたの?」「駿は手が早いから、気を付けてね!」とあちこちから囃し立てられた。
七海は話し相手もなく退屈で、男子がやたらと勧めてくるシャンパンを何杯も飲んでいた。慣れない酒の廻りは早く、寄って来る男子に絡みながら酔い
「わたし、どうしたの?」と思わず口を
「ああ、気が付いた?良かった、急性アル中かと思って心配したよ!」
「何にも良くないです!裸同然の格好で、隣には駿さんが寝てるし…。」
「七海はシャンパンをあおるように飲んでいて、意識が飛んじゃったんだよ!友だちに医者の卵がいて、救急車を呼ぶまでもないと診断したんだ。それで女の子たちに手伝ってもらって、楽な格好にしてベッドに寝かせたんだよ。」
彼の話を聞いて、薄らぼんやりと記憶がよみがえってきた。気を失っている私の周りで、「ドレスを脱がして、寝かそう」と話している声が聞こえていた。ただ、彼が横で寝ている意味が分からなかった。
「何となく思い出して来たけど、どうして駿さんが横に?」
「ああ、僕も酔っ払ってベッドに入ったんだ。温かくて、気持ち良かった!」
「あの、わたし、何かされたんですか?」と訊きにくい事を思い切って訊いてみた。
「何か?そういう何かの事?僕も法律家を志す身だからね、合意なくして刑法177条の強制性交等罪で訴えられても困るしね。心配しなくても、大丈夫だよ!」
「良かった!疑ってごめんなさい。」と言うと、「ただ、あんまり可愛い寝姿だったから、目の保養はさせてもらったよ!」とざれ事にしては下品な言葉を
彼の節度ある態度に一応安心したが、自分の
七海は自分が嫌な事があったり、不満がうっ積したりすると、自暴自棄になる悪い癖があった。過去にも投げやりな行動に出て、後悔する事が何度かあった。今回も例外でなく、絵美里の妊娠が千宙と関係しているのではないかという疑念と、千宙への心残りが捨て鉢な気持ちにさせていた。
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