第10話 邪魔な存在、由奈。(近藤静香視点)

 朝のホームルームが終わり、私は更衣室で体操着に着替え中。


 周りにはクラスメイトの女子がいる。走るの面倒くさいとか、やりたくないとか、愚痴をこぼしている。


 私は、各クラスから一人の給水係だから走らなくていい。不公平がない様にクラス全員くじで決まった……不正をしたのは内緒だけどね。フフッ。


 まぁ、そんな事はどうでもいいのよね。今、私が気にしている事がある。


 それは私の……ううん、私達の計画の障害になりうる存在が現れた事。


 同じクラスの下根太陽の妹で名前は由奈。たった一年であんなに美少女になるとは思わなかった。


 中学時代はちんちくりんだった。だからその他大勢の部類に入れてた。


 顔は……よく覚えていない。前髪長くて、眼鏡かけてたから。


 くぅぅ。私とした事が、クソダサい髪型と黒縁眼鏡に騙されてた。


 性格は最悪っぽい。なぜなら、兄を利用してデートの約束をした。しかも偶然かの様に、好きですアピールするなんてね。


 腹黒であざとい子だったのね。


 計画を少し修正しないといけない……あ〜もう、イライラする。小娘ごときに邪魔されるなんて。


 彼の中で由奈よりも私の存在を大きくしないといけない。少しだけ好きアピールするかな。


 お返しに由奈の邪魔もしないとね。別にいじめはしないよ。そんなの三流のする事。自分の首を絞めるだけ。そんなの間抜けすぎる。


 私は考え事をしながらも、周りに合わせて着替えを終える。


 そして更衣室を出て、有象無象の女子と一緒に下駄箱へ。


 ん? アレは……。


 下駄箱の玄関のすぐ外で、幼馴染の彼と下根太陽と由奈と由奈の友達らしき女の子がいた。何か話をしている。


 私は室内用スリッパから運動靴に履き替え、近づいて声をかけた。


 由奈は私を見るなり、バツの悪そうな顔になった。顔を背け目を合わせようとしない。


 ……なるほど、演出ね。私の事を怖い存在にしたいのね。なかなかの名演技じゃない。


 由奈の友達を見ると……。


 よかったわね。隣のお友達に感染したわよ。


 でも、私はその事には触れない。不利になるのは目に見えている。


「みんな、何の話をしてるの?」


 可愛らしく笑顔で質問する。鏡の前で何度も何度も、何度も練習した笑顔。


 下根太陽が私を見る……コイツ、顔色ひとつ変わってない。周りの生徒は見惚れてるのに。


 馬鹿には通用しないのね。あと……鈍感にも。


「いや〜。由奈に一緒に走ろうって誘ったら、本気で走るって言うんだよ」

「そうなんだ。由奈ちゃん、頑張ってね」


 ……馬鹿な子。こんなくだらない学校行事で一生懸命になるなんて。


 私達は集合場所の運動場へ行くために歩き出す。


「——あっ」


 由奈が何もない所で転びそうになった。それを幼馴染の彼が受け止めた。


「大丈夫?」

「はい……ありがとうございます」


 幼馴染の彼に見つめられ、恥ずかしそうにする由奈。あざとい。あざとすぎる。


 なにコイツ。給水のドリンクに下剤入れてあげようかしら? 


 と、思っていてもそんな事はしない。本当に入れたら、あっさりバレる。


 ……ちっ、いちいちムカつく女ね。

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