空想奇譚

SAhyogo

第1話 まよなかさんぽ

これは数年前、帰省した際友人に聞いた話です。

 その友人は深夜の散歩を日課にしているらしく、その日も例に漏れず、好きな音楽を聴きながら歩いていたそうです。

 私の地元はドが付くほどの田舎で、昼間でさえ外を歩く人はおらず、夜になると尚更で行き交う人など当然いません。いるのは鹿や猪だけでした。だから、友人は随分驚いたそうです。自分が歩いている道から、2枚の田んぼを挟んでの市道。街灯に照らされる位置に、女性がポツンと立っていたそうです。友人は自分を棚に上げて、こんな時間に散歩するなんて変わった人がいるもんだな、と気になりつつも歩き続けたそうです。

 最終的に合流するその道を、数歩行っては彼女を確認、さらに数歩行っては確認。そんなことをやっていると、徐々に彼女の表情が見えてきたらしいんです。その表情を友人は今でも忘れられないと言っていました。満面の笑みだったそうです。

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