【実話怪談】白い人
まちかり
・白い人
これは、まちかりが営業で伺った玩具店の人から聞いた話です。
お店の人はサバイバルゲームが好きで、グループを作って遊んでいたということでした。
ご存じない方もいらっしゃると思うので説明しますが、サバイバルゲームというのはオモチャのエアーガンを使って撃ち合う遊びです。まちかりが知っているのはそれぞれ色分けしたチームが二つに分かれて撃ち合って、敵の陣地にある旗を取れば終わりと云うものでした。
ただ、その時はそれほど大掛かりではなく、十人ぐらいのメンバーが集まり『夜戦をしよう』という話になったそうです。
また説明ですが、〝夜戦〟と云うのはその名の通り〝夜の戦い〟でして、夜になってから集合し、その時は夜の公園で二手に分かれて撃ち合うことになりました。公園と言っても、児童公園のような遊具がある小さなものではなく、林があり近くには神社もあるただっ広いところだったそうです。
人数が少ないこともあって基本的には暗闇に紛れて近付いて行き、相手の居そうなところに目星をつけてパリパリパリと撃ち込むという積極的な遊び方でした。
数回メンバーを変えて撃ち合って、一時休憩ということで明かりのある処に集まりました。するとメンバーが一人足りません。
「おい、Aがいないぞ」
「本当だ、あいつどこに行った?」
しばらくそこで待っていましたが、一向に戻ってくる気配はありません。しょうがないのでみんなで探しに行こうと云うことになりました。
とはいえ夜の公園は真っ暗です。ゲーム中、居場所がバレてしまうので携帯電話は電源を切っているだろうから、全員で横一列に並んでのローラー作戦で探すことになりました。公園の中を横並びで往復すること数十分……
「居たぞ!」
一人のメンバーが神社の階段の横で震えているメンバーを見つけたのです。
「よく来てくれたな、助かったよぉぉぉ!」
見つかったメンバーはとても怯えていて、心底嬉しそうでした。
「いったい何やってたんだよ?」
「いや、実はここに隠れていたら、正面から白い人が近付いてきたんだ」
「白い人?」
「そうなんだ。おれらのメンバーには、とても思えなかった……目も、口も、顔もどんななのか全く分からない、着ている服の特徴すらはっきりわからない、まるで白い影がゆらゆらと歩いているみたいで……」
恐怖のあまりにまくしたてるAに、メンバーが尋ねました。
「それで、どうしたんだ?」
「……撃った」
「撃ったぁ? お前、一般の人だったらどうするんだよ!」
「だって怖かったんだよ! 近くで見ても、人ぐらいの大きさの白く光るかたまりにしか見えなかったんだ! そうしたら……」
「そうしたら?」
「……貫通したんだ……」
「はぁ?」
「貫通したんだよ、BB弾が!」
「…………」
「撃ったBB弾がその影を通り抜けて、後ろの地面に落ちるのが見えたんだ! それを見て、俺は怖くてここに隠れていたんだ!」
「それでその人はどうしたんだ?」
「そのまま方向を変えて、神社への階段を登って行っちまった……」
他のメンバーは言葉も無く、その場で立ち尽くしていました。そのうち、一人が重い口を開きました。
「お前それ、神様だったんじゃねーの……」
見つかったメンバーは言葉も無く顔を引きつらせ、硬直していたそうです。
◇
聞いた話はここまでです。その後、白い影を撃ったメンバーがどうなったかは聞いてません。話に出なかったところを見ると何事も無かったのかもしれません。
『神様、どうか許してあげてください』
その時は思わずそう祈らずにはいられませんでした。
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