第3話 眠った獅子は目を覚ます

浮遊感。無重力のような体が軽いような感覚。しかし、その時間も終わりを告げる。


ぱちっ


どのくらい寝ていたのだろうか。目を開けると、赤と青と黄色で彩られたステンドグラスからの光を顔にうける。


体を起こすと、気だるさを感じる。何も分からないから、わかるやつに聞こう。


<召喚魔法>


魔人族を召喚する。


僕の好みはあんまりないんだけど、やっぱり執事っぽい感じがいいな。タキシードにリボン。

手袋にハイヒール。よし、こんな感じで、童顔で、優しい感じでこう。


成功?ん?えっと。間違って女の子にしちゃった。まぁいいか。さて、仕事してもらおう。


「今、ここはどのくらいの時間が過ぎた?」


「5種族の文明が始まり、4990年経ちました。ご主人様。」


「ありがとう。ご主人様じゃなくて、ご主人がいいな。」


「わかりました。」


さて、上がうるさいな。


「上の方がうるさいんだが、何が起きているんだ?」


「はい。魔王様が勇者と対峙しているようです。映像出しますか?」


「できるか?」


「はい。水晶を媒体とし、映写します。」


「頼んだ。」


そういうと、収納魔法から水晶を取り出し、壁に映し出す。すると、また収納魔法を起動し、箒を取り出す。そして、埃っぽいこの部屋を掃除しだす。僕と見る気はないようだ。


勇者と魔王は一進一退の攻防を繰り返していた。しかし、勇者の会心の一撃が入り、魔王は瀕死直前になる。チェックメイトか。まぁ、勇者と魔王は敵対関係にあるし?いいんじゃない?すると、水晶から声が聞こえる。


「ねぇねぇ、この声何?」


遠くから声が反射して聞こえる。


「魔王を中心として、映写しているので、魔王の心の声ですね。」


「ありがとう。」


「いえ。」


それだけ言うと、箒の掃く音が聞こえ始める。


意識を映像に戻す。すると、


『死にたくないよ。生きたいよ。誰か助けてよ。何もしてないのに、誰か、誰か。』


孤独の世界にいたのに、こんな情が残っていたとはな。情けない。


「ちょっと出てくる。ここで待っててね。」


「わかりました。しかし、位置が分からないのではありませんか?」


「うっ」


「ふふっ。すいません。ちょっとからかいたくなりました。ここの真上です。魔王たちがいるところは。」


「ありがとう。では、行ってくるよ。」


「はい。」







[魔王城一階]<魔王視点>


「これで終わりだ。」


勇者はそう言うと、他に持っている聖剣に魔力を込める。そして、神々しい光を纏った剣を大きく振りかぶる。


私も、もう終わりか。死にたくない。でも、魔力は底をつき、この鎌も役に立たない。ほんとにほんとの最後だ。


諦めて目を瞑る。


シュンッ


空気を切る音が聞こえる。


ドガァァァン


爆音。しかし、痛みはない。恐る恐る目を開けると、土煙の中に人影が見える。そして、土煙がはれ、その人影は静かに手を下ろした。


「ふむ。やはり手のひらで受けるのはダメだな。少し腫れてしまった。」


そして、彼はこう言った。


「4000年の貸しを返すとしよう。」

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