第21話

執務室の隣にあるサロンは先ほどまでいたサロンとは作りから違い、対談用として作られているため、この部屋に入るときは少し緊張してしまう。扉が開けられるとそこにはお父様とお母様がいらっしゃいました。なんだか緊張する空間に母の姿を見つけることが出来てホッとするものの、これからの話しにどこか不安を拭えないのです。


「ナシェルカ伯爵、伯爵夫人、時間をとって頂き申し訳ありません。いくつか相談したいことがあります。併せて陛下からの言伝も預かっております」


陛下からの言葉?そんな話しはさっきまでしてなかった!

驚きフレッド様の横顔を見つめるとふわっと笑顔になられた。


……いい男はこんなところでもその力を発揮する…


「とんでもない。ではこちらへどうぞ。サリーはこっちへ」


お父様がフレッド様に真向いの3人掛けのソファーに座るように勧める。

そして私はお母様の隣の1人掛けのソファーに腰を下ろします。


「感謝いたします。

早速ではありますが、ナシェルカ伯爵領で手がけているドレスを国の特産品と認定したい。今後隣国との交易の際は目玉商品として提示していきたいと考えています。そのため、それに関してサリー嬢の知恵を拝借したいのです。先にサリー嬢にはお声をかけさせて頂きましたがいかがでしょうか」


お父様とお母様がフレッド様のお言葉を黙って聞いていらっしゃいますが、話し終わった後も動かれません。……これ固まってるわね。


お隣のお母様の足をちょんちょんと叩きます。すると「はっ」と言うのが聞こえるような反応になんだかおかしくなってしまいます。


そうしてお母様とお父様は顔を見合わせフレッド様に向き直ります。


「第二王子殿下、お言葉身に余る光栄にございます。しかしまだまだ未完成の部分が多く、国産品としての価値が見出せるかは不透明です。そのような状態でこのお話を受けてよいものか」


「未完成の部分はこれから手を加えていけばよい。そうできるところにも魅力を感じています。そのためにサリー嬢に知恵を拝借したいのです。野菜で糸を染める発想。織物でドレスを織る発想。どれも今までになかった発想で母も大変興味を持っており、出来れば1着早々に仕上げてほしいと申しております。それからこれは陛下からの伝言ですが、「そろそろ陞爵の準備をすすめたい」とのことです。以前から陞爵のお話をしているが、いつも逃げられてしまうと嘆いておりました。しかしこれ以上は議会を押さえることも難しくなってくるでしょう。その前に事を進めたいと思っております。」


ちょっと……頭がパンクしそうです…

王妃様のドレスを作る?父が陞爵を断っていた?そして陞爵する?

私ベッドに飛び込みたいです…


「んー……王妃様のドレスは早々に準備するよう伝えます。

しかし陞爵の件は……あまり爵位が上がってもいいことありませんからねぇ…出来れば辞退したいのですがねぇ…」


お父様、心の声が全て漏れています!

めんどくさいの一心でお断りしていましたね。まぁでも私も侯爵令嬢になるとまた何かとめんどくさそうなのでお断りしたいところですが…


「父から今回は逃げられないと言付かっております。

また、それに併せまして、私とサリー嬢を婚約させていただけないでしょうか。」

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