第一章 学校編

第1話 本物への第一歩

俺の名前は白石柊しらいししゅう。黒岩高校に通うどこにでも居そうでどこにも居ない高校2年生である。何を言っているんだと思う人たちも少なからずいる事だろう。だが安心して欲しい。君たちのような凡人には俺の事を理解できないのは当たり前なのだから。

何故かって?

そんなの決まってるじゃないか!


「俺は人智を超えた超常的な能力を使えることが出来るんだからな!!!」


「・・・・」


「・・・・」


あれ???

なんだ、この視線の数は。


(・・・・やっべえぇぇぇぇぇえええ!!!!!!授業中じゃん!もしかして俺は寝ていたのか?いや、まさかそんなわけないだろう。うん、絶対に違う。むしろこの状況が夢だよね。よし!もう一回寝て現実に戻ってやるとするか!)


「いったぁぁぁぁぁあいいい!!!!!」

「急に起きたと思ったら何を訳の分からないことほざいてんだ!!」


飛んできたチョークを頭で受け止めた俺はあまりの痛さに悶絶してしまった。

そのチョークを投げた人間は、俺の学年で現代文の授業を担当している佐々木和幸である。そしてハゲである。これ以上無いほどのハゲである。

もちろん、こんなことを本人に言ったら殺されることは間違いないので何も言い返せない。


「ラノベとか漫画の読みすぎで頭おかしくなっちゃったんじゃないですか〜?」


そうケラケラと笑いながら俺をバカにしてくるのは、このクラスの食物連鎖の頂点である垣健生かきけんしょうである。

いつも俺が教室で本を読んでいると馬鹿にしてくる嫌な奴だ。いつか絶対痛い目に合わせる。


「すみません。昨日遅くまで課題をしてたので、疲れて少し眠ってしまいました。」

「課題って何の課題だよぉ〜。夜のお一人様実s..」「ち、違う!!は数学の課題をやってて遅くなっちゃっただけだから...」


クラスは垣の下ネタに様々な反応を見せた。あからさまに垣を軽蔑するような視線を向けている女子や、何故か俺にまで同じ視線を向けてくる女子。女子の前で騒いでいるところを見せつけたくて、大笑いしている思春期真っ盛りの男子。

しまった... 食い気味に否定したから余計真実味を帯びてしまった。 

俺は、視線を前の方の窓際にある席に恐る恐る向けた。そこには窓の外をつまらなそうに見つめる、絶世の美女である同じクラスメイト一一一鈴木美心すずきみこの姿があった。

良かった... 全くこっちに興味がないみたいだ。あんな美女に軽蔑されたら俺はこの世から消えて無くなってしまう。何とか首の皮一枚繋がったぜ。



□ □ □ □ □ □ □




「お前あれわざとか?」


「え?なんの事言ってんの?」


「とぼけんじゃねぇ。国語の授業の時に急に叫び出して、挙句の果てに垣にバカにされてたアホはどこのどいつだ」


「・・・あれは僕じゃなくてもう一つの人格が目を覚ましてしまったんだ...」


「はぁ、お前のそういうところ嫌い

じゃねぇけど、人前であんま馬鹿なことすんな。どうせうじうじしてるだけなんだから」


「...!! 誰が地を這うように泥を啜りながら生きているウジムシだ!」


「そこまで言ってねぇだろ!」


あの授業の後も散々弄られたが、まぁこれといった問題もなく、学校の授業も6限で終わり、今は下校中である。

そして俺の隣にいるこいつは俺の親友であり、幼馴染でもある超絶イケメンの坂城悠さかきゆうだ。

さらっさらの金髪ストーレトヘアに、身長180cmを超えるモデル体型。更に運動をさせれば部活に所属している人間以上の活躍、勉強をさせれば学年TOP5は当たり前。完全に主人公属性の人間である。

それに比べれば、どうせ俺なんか地を這うウジムシだよ。。。


「でもお前もそろそろ大人になれよな。」

「僕のどこが子供って言うんだよ」


「うーーーん。その「僕」って言うやつとか?試しに「俺」に変えてみたら?」


「そんな恥ずかしい真似できるか!

おい!あそこにあるの宇宙船じゃないか!?」


俺は空に見えた飛行物体を指差しながらそう言った。


「露骨に話そらすな。どうせ飛行機に決まってんだろうがアホ。」


悠は俺のくだらない一言に呆れたような反応を見せた。


(くそっ!!俺が気にしていることを指摘してきやがって!)


そう、俺は未だに人と話す時の一人称が「僕」なのだ。正直にいえば、一人称は変えたい。しかし、今更変えることによる周りの反応とかを考えると、もう手遅れだった。


「そうやって人の目ばっか気にしてないで、もっと自分に自信を持て。じゃあここまでな、また明日。今日は変な事せずにしっかり睡眠とれよ」

「変なこともしないし!!ちゃんと寝るから!!」


悠は俺に背中を見せながら、手をひらひらと振った。

はぁ、今日はあまりいいことがなかったな。まぁ俺が本気を出せばあのクラスで実権を握ることは簡単なのだが、流石に可哀想すぎるな。今日も家に帰ったら黒魔術の練習でもして、来るべき時に備えるとするか。クックック....


周りから冷めた目で見られている事など気付かないまま、柊は帰ってから何をするのか、不気味な笑みを浮かべながら考えていたのであった。



その時であった。世界がとてつもない光に包まれたのは。


その光から自分を守るように俺は両手で自分の顔を覆った。



━━━━暫くしてから、漸く目を開けることができた。 


(何だったんだ今の光は。。。)


急に視界が明るくなったと思ったら、さっきと何も変わらない景色が眼前には広がっていた。周りの人たちも、今のは何だったのかと困惑をしていたが、少し経ったらそんな喧騒もすぐに止んでいた。


まぁ、いいか。とりあえず今は黒魔術についt..


「ぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!!!!」


熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、


俺は急に熱くなった目を両の手のひらで覆った。まるで溶岩を直接、目に垂れ流されたような痛みだ。周りの人はさっきからこの人は何をやってるんだ、というような唖然とした表情で柊のことを見ている。

激痛に苛まれている両目を何とか開けて、ほとんど何も見えない中、走って家まで帰った。

幸いなことに、家までは近かったので無事に帰ることが出来た。

その時には、さっきまでの痛みが嘘のように消えていた。しかし不安が拭えない俺は鏡の前に立ち、自分の目を確かめた。


そして驚愕した。


そこに映っていた自分の姿に驚きを隠せなかった。俺は両親譲りの黒目であったはずだ。


───そう、はずだったのだ。しかし、そこに映っていたのは、赤い瞳を携えた俺の姿であった。


「もしかして、来るべき時がまじで来ちゃったとか...?」


これは厨二病で自信のない唯の少年が、異能を手にしたことで、様々な困難に巻き込まれながら、成長していく物語である。

この少年が何を成すのか、そして少年に宿った異能の正体とは一体何なのか、ぜひ皆さまに見届けてほしい。

そう、もう時は満ちたのだから...

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