第0章:ストーリー開始前
世界の始まり
空が赤い。周りからは喧騒が聞こえてくる。
中世のヨーロッパ風の街並みが崩れ、燃えている。
光が飛び交い、轟音とともに、所々で爆発が起きている。
空に竜や天使のようなものが飛び周り、人と争っている。地上にはエルフやドワーフなどが暴れている
天使の集団を人間が嗤いながら襲っている。
ここはこの世の地獄だ。
「――強くなり――世界を――そうか私が――」
――――
目覚めると、そこには昔のヨーロッパのような見慣れない街並みがあった。
街にはレンガ風の建物が見え、街の周囲は壁に覆われている。
「ここはどこだろう?」
何故か少し懐かしい景色が広がっていた。
人々が歩いていて、白人のような顔立ちが多く。髪の色と目は様々であり、黒色がベースの赤、青、緑などの色をしている。
たまに貴族のような護衛を率いている人がいるが、その人は他の人とは違い、一風変わった威圧感のようなものを身に纏っていた。
人々の中には身長は小さくガタイのいい、樽のような体形の男や、恐ろしいほどの美形で耳が尖った人間?がいた。
これは俗にいうドワーフやエルフだろう。
しかし彼らには、首に首輪が例外なくつけられている。
奴隷なのだろうか?
俺は地球では見られない光景に呆然とした。
(……これは夢なのか?いや、こんなリアルな光景が夢のはずがない……それよりも、俺は確か、展望台から落ちたはずじゃ……あ、そういうことか、これは流行りの異世界転生ってやつだな――きっとそうだな)
異世界に来た、そう考えると、それは生きる意味も失った俺にとっては、とても希望のように感じた。
しかし、何かとても嫌で辛いことを見た気がした。彼女に振られてセンチメンタルになっているか?
俺は状況を整理しながら異世界の街並みをしばらく観察していると、武装した衛兵のような男が俺のほうにやって来た。明らかに俺に用があるようだ。
俺は笑みを浮かべ、とりあえず場所を訪ねてみた。
「こんにちは、ここはどこでしょうか?」
「見慣れない格好の異国人風の奴がいると聞いた! 身分証、もしくは許可証は持っているのか?」
「……え?」
普段聞きなれない言語で怒鳴られた。日本語でも英語でもなさそうだ。
(日本語じゃない?……じゃあなんで俺は言葉がわかるのだ?)
俺が思考を巡らせていると、衛兵たちは急かすように怒鳴った。
「――……貴様、聞いているのか!」
そう言われても、俺は身分証も許可証も持っていない。素直に謝るしかない。
「すみません。身分証も許可証も持っていません」
「持ってないなら詰め所まで同行してもらう」
そう言われると、俺は衛兵につかまれる、その時だった。
「――衛兵様、そのくらいにしてあげなさい。 身分なら私が証明してあげます」
金髪の黄色の祭服のような服を着た50代ほどの男がこちらに近づいてきた。
「司祭様がそうおっしゃるならかしこまりました」
司祭を見ると、衛兵は俺から手を放す。
「……ところで、こんなところにどのような用件で?」
「いえ、久しぶりに加護の適性を持たない子を見つけたので、神の教えを与えようと思いましてね」
俺を置いて勝手に話が進む。しかし加護の適性とはなんだ?
いろいろ考えていると、司教様が「いいですか?あなたも神の教えを信じるのです。そうすれば資格を貰えるでしょう」と勝手に話し始めた。
「――今より遥か昔、神は聖の心である美徳により六人の人間を作りました。
はぁ……いきなり宗教勧誘かよ、まあ異世界だし、神は存在する的な教えかな?しかし、それよりも……
「傲慢は含まれていないのでしょうか? 七つの大罪では無く?」
俺は前世の知識と異なることが気になり聞いてしまった。
今思えばこれは間違いだった。
「……あなた何を言っているのです! 傲慢などあり得ません。美徳も大罪も六つしかないに決まっているでしょう!! なんて背徳的なことを言うのです。衛兵様この背徳者を牢に連れていってください――」
「――はい、かしこまりました」
俺はあまりの急変具合に面を食らっていた。何かまずいことを言ったのか? でも悪気はなかったし、何もしていないのに捕まるわけにはいかない。
「……え? いや待ってください! 俺は何もしていません。悪気はなかったのです。ただこの世界のことをあまり知らないのです。何か失礼なことを言ったのであれば謝ります」
「……あなたはこの世界の住人ではないのですか?」
激高していた司祭が俺の言葉に反応したようだった。それはそうだろう。ここが異世界だとすると、俺には利用価値がある。
「はい、私のことを保護していただけるなら、あちらの世界のことをある程度なら教えることが出来ます」
と言っても、俺は高卒だし、専門的な知識も無いから銃の作り方や薬の作り方などは詳しくはないが、概要くらいであれば話すことが出来るかもしれない
「ふむ……いいでしょう。ですがその前に……衛兵様、そちらの方を奴隷商で奴隷にしてきてください」
「え? それは話が違うでしょう! 私は保護してくれたらと言ったじゃないですか!」
「……別に嘘は言っていませんよ、ちゃんと保護はいたします。しかし、これからあなたを連れて行く場所で暴れたり、逃亡されないようにという保険ですよ」
司祭はそんなこと言っているが、俺は逃げる気もないし暴れる気もない。何より奴隷になるのは嫌だ。
「俺はそんなことはしません。 奴隷は絶対に嫌です!」
司祭は俺のことを道端に落ちているゴミを見るような目でみた。
「……連れて行きなさい」
衛兵に無理やり引っ張られ、気づくと俺は奴隷商に連れて行かれていた。
――――
奴隷商に連れて行かれると、一旦牢屋に入れられた。
トイレを何倍もひどくしたような、とてもひどいにおいがした。周りにはいかにも犯罪を犯していそうや男たちが十数人いて、「おう、新入り。お前は何をしたんだ」や「これから地獄に行くんだぜ」とか言われたが、俺は何もしていない。
少し経つと、衛兵とともに黒いローブを着いて、顔は見えないがどこか冷たい雰囲気の男が来た。
衛兵は牢屋にいる一人の男に「出ろ」と言った。
男が牢屋から出ると、ローブの男が近き、ローブの中から首輪を取り出すと、男に首輪をつけた。そして、ローブの男が何か呪文らしきものを唱えると、首輪が光った。
(何か呟くと首輪が光ったな……これは魔法なのか? そうだとしたら、何か効果があるのか?)
ここが異世界だとすると、ローブの男が使ったのは恐らく魔法だろう。
俺は異世界で初めて見る魔法に感動しながらも、これからのことを思い不安になった。
(これからどうなるのだろうか、確かあの首輪は獣人やエルフたちも付けていたような……じゃあ、やっぱり今から奴隷になるのか?……異世界に来てまで、奴隷になるのはいやだ!)
そんなこと思っていても無意味だった。
次々に男たちが牢から出されて、首輪をつけられていく。
遂に俺に順番がまわって来た。ローブの男は俺の目の前に来ると首輪をつけ呪文を唱えた。
呪文を唱えると、何か背筋が凍るような冷たい気を感じた。
(これが魔力?なのだろうか、じゃあ、どうやったら魔法は使えるのだろうか?……そんなことより俺はこれからどうなるんだ?)
その後もいろいろなことを考えているうちに、俺は衛兵に引かれ、どこかに連れて行かれた。
――――
連れて行かれた場所には馬車があった。
「――お前は奴隷になった。人権はないに等しい! これから王都に送られ、そこでいろいろと聞かせてもらう。馬車で移動するが逃げ出そうなど考えるな! 脱走奴隷はこの国では死刑だ!」
俺は目の前が暗くなりそうだった。せっかく異世界に来たのに奴隷落ちになるなんて、なんて夢のない話だ……衛兵が他にも何か言っているが、俺は呆然として周りの音が何も耳に入ってこなかった。
それから、衛兵が話し終わると。馬車に乗せられ発車した。
それから、馬車で一日過ごした。
それは日本に住んでいた俺からすると、最悪の環境だった。道がほとんど整備されていないのか、馬車は揺れて尻はいたいし、衛兵から出された食事は固いパンとくさいスープだけだ。朝昼晩の三食などではなく、夜の一食だけなので、少しでも栄養を取り、生きるために吐きそうになりながらも流し込んだ。
だが悪いことばかりではなかった。
この世界は魔法が存在している。俺は魔法の練習をすることにした。
初めは魔力の操作を練習することにした。
体の内側にムズムズするような感覚があるので、このムズムズが魔力だと仮定し、これを動かすことにした。
始めから、なぜだか魔力の動かし方が感覚的にだが、少し理解することが出来た。その魔力を初めはほとんど動かすことができなかったが、心臓から全身に血流と一緒に巡らせるイメージをすることで、全身に巡らせることができた。移動中は暇だったので、この訓練をひたすら行っていた。
俺の異世界ファンタジーはこれから始まるのに、奴隷なんてやってたまるか……そう思いながら、俺の異世界生活の一日目は終わった。
――――
馬車で移動して数日が経った。
この数日間は魔力の操作の練習をしたり、衛兵たちの会話を聞いて、いち早くこの世界のことを覚えようと頑張った。生き延びるためには、知識と強さが必要だ。
他にも魔力について分かったことがある。
・魔力を全身に巡らせることで、身体能力が上がること。(巡らせる魔力の量によって効果が変わる。以降は身体強化と呼ぶ)
・操作できる魔力の量は練習次第で増やせること。(しかし魔力の量を増やすことで、体内の魔力の消費が多くなる)
・魔力を体の外に放出するのは難しいということ。(数日間練習しても、ほとんど魔力を体の外に出すことはできなかった)
・「ファイアーボール」「ステータスオープン」とかいろいろ魔法を唱えようとしたが、魔法は使えなかった。ホントに加護?は存在するのだろうか。
そんなことを考えていると、馬車が止まり、外の衛兵が入ってきた。
「――王城に着いたぞ!外に出ろ!」
(……王城? なんで王城なのだろう、まあなんでもいいか)
俺はこの馬車生活ですっかり精神が参っていた。もう反抗する気力も全く残ってない。少しでもいい生活をさせてくれるなら、もう奴隷でもいいと思っているくらいだ。
衛兵に引かれつつ馬車から降りる。
そこは立派な城があった。
先に王都に到着していた司祭が近づいてきて、やがて話しかけてきた。
「着きましたね。私についてきてください」
俺は司祭に着いていき、王城の中に入った。
――――
少し歩いて、王座がある部屋に着くとそこには髭を生やした青髪のおっさんがいた。
多分こいつがこの国の王だろう。しかし威圧感が凄い。流石は王と言ったところだろう。
何か言われると面倒だし一応平伏しておこう。
「余がルシウス・セイドリーテだ! 貴様には知識の提供をしてもらおう! 生活はこちらが保証しよう!」
「承知致しました」
俺は平伏したままそう言った。
(惨めだな……ほんと異世界に来てから魔力を使えるようになったこと以外、ろくなことがないな)
★★★★★★★★★★
主人公の基礎能力
魔力量:?
身体能力:G
魔力操作:E
精神力:G+
魔法:?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます