底辺配信者の僕が顔も名前もわからない彼女を好きになっちゃダメですか?
@namonakiv
part1 プロローグ+人物紹介
学校のチャイムがなると同時に教室内に騒々しさが戻ってくる。
うるさくもあり少し安心するこの感じが僕に休み時間だということを教えてくれる
購買部に走っていく者、仲間同士で集まりたわいもない話をする者、休み時間だということ気づかず寝ている者、実にさまざまだ。
僕はというと弁当を食べながら教室の端で話している。
「昨日のゲルテナ4の新情報見たかよ!?今度のアップデートで追加されるキャラかっこよすぎないか!」
幼稚園からの友人である智也が楽しげに喋り始めた。
ゲルテナとは僕と智也がハマっている協力型オンラインゲームでさまざまな敵キャラクターと戦うアクションゲームだ。
「いや、昨日はちょっとね...」
僕が申し訳なさそうにそう答える。
「なんだよ…お前とゲルテナの話が出来ると思って楽しみにしてたのに
さてはお前…またゲーム配信やってただろう!」
智也が思っていたよりも大きな声を出したのに驚きつつ誰か聞いてないか周りを確認した。
「おま、あんまり大声で言うなよ…配信してるってのはあんまり知られたくないんだから」
「別に減るもんじゃないしいいじゃねぇか、
なんなら配信者ってレアだから一躍学校の人気者だぞ!」
と智也が少し興奮気味に言った。
僕はあきれたように。
「馬鹿言うなって、登録者数1万2万超えてるならいいかもしれないけど僕みたいな登録者1000人ぽっちの奴が自慢しても返ってダサいだけだろ?」
智也は「そういうもんか?」と不満そうに言いながら残ったおかずを乱暴に口へ運んだ。
僕の名前は本剛 優希。(ほんごう ゆうき)
地元の私立虹ヶ丘高校に通う高校2年生。
どこにでもいる平凡な高校生だが、1つ特徴を上げるなら1年前からYouTubeでクロ
トという名を名乗って配信活動をしていることだ。
クロトというのは黒髪にパーカーを着たアバターで見た瞬間だるそうに感じる暗くジメジメしたキャラクターである。
本当はもっとキラキラとした主人公のようなキャラにする予定だったのだが、ハイテンションで配信している自分を想像して吐き気がしたので現実に似せて陰キャのようなキャラクターにしている。
最初の頃は1人で配信活動をしていたのだが半年前のゲームコラボがきっかけであ
る配信者3人と意気投合して今は一緒に活動をしている。
1人目は男性配信者のルナト。
赤髪の青年キャラクターでクロトとは対照的なキャラクターをしており、見てるだけで元気を貰う明るいキャラクターである。
落ち着いた大人びた声をしており腹が立つことに女性人気が割と高い。
歳が近いのかメンバーの中で1番話が合い、お互いの趣味であるヒーロー番組の話をよく配信で語るのでリスナーからは兄弟みたいだと言われている。
2人目は女性配信者のサクナ。
ピンク髪のツインテールで背中には何故か天使の翼が生えている。
小学生のような無邪気で純粋な声をしており、性格は前向きというか天然というか馬鹿というかなんというか…裏表がなくいい人である。
配信で突拍子もなく変なことを聞いてくるので毎回どう返答するべきか困ってしまう。メンバー全員からやばいやつ認定を貰っておりコラボ配信をするたびに爆弾発言をする為火薬庫という愛称をもらっている。どうやら本人にはその自覚がないようで本当に天然なんだなとあきれながら思う。
3人目は女性配信者のヒナタ。
黄色髪のロングヘアにスカートをはいており、彼女の透き通るような優しい声も相まって優しいお姉さんのようなイメージを描く。
しかしそんなことはない。
この美しい見た目と優しい声に駄目されてはいけない。
こいつの本性は人をからかうのが大好きなお調子者ものだ。
事実僕はこいつに数え切れないほどおちょくられている。
マジでなんか僕悪いことしましたっけ?と思うほどだ。
特にバレンタイン当日にやったコラボ配信なんて酷かった。…
僕がうっかりバレンタインチョコを貰ってないことを配信中に言ってしまいそれを知ったとたんに
「クロトくんチョコもらってないんだぁ」とか「今日って何の日だっけぇ?」とか「みんな見る目ないだけだよぉ、だから 元 気 だ し て W」
と配信が終わるまで永遠とからかわれ続けた。
そんなからかい合う関係を長いこと続けている為
この前リスナーから
「ヒナタさんに悪口言われてましたけど仲が悪いんですか」
と普通に心配された。
このまま誤解されるのは不味いと思い。
「まぁでもなんだかんだ言ってお互いに本音で話合えるからメンバーの中でヒナタと一緒にいる時が一番居心地が良くて安心するよ、そして何よりあいつと一緒にいると毎日が楽しいからね」
みたいなことを配信で言ったら。
後日ヒナタのTwitterで
|【悲報】クロトくんはからかわれて喜ぶ変態!? |
|他の女性配信者は絡まれないよう注意しよう! |
と呟やかれた。
リスナーからは「よ!ドM変態クロト!」と呼ばれるようになってしまう事態となった。
とまぁこんな感じの頭のおかしいメンバーとグループを組み配信をしている。
グループと言っても単に一緒にゲームしたり雑談しているだけの集まりで音楽バンドの様に各々に役割がある訳ではない。
ただ一緒にいて楽しいから一緒にいるだけだ。
ネットでは僕含めた4人のメンバーは爆4と呼ばれ、
それぞれのファンから認められた仲良しグループとなっている。
そして今日はその爆4メンバーの内の1人であるヒナタとゲームをする予定だ。
最初はいつも通り爆4メンバー全員で遊ぼうと思っていたのだが、
たまには2人だけで配信をやらない?とヒナタに言われてしまい
特に否定する理由が無かったので今日の配信はヒナタと二人っきりでする予定だ。
また今日もいっぱいからかわれるんだろうなぁと思いながらも帰ったらヒナタとゲームができるという現状に心踊っていた。
そんなことを考えながらふと視界に入った時計を見てみると、思っていたよりも時間が経っていたようでそろそろ昼休みが終わろうとしている。
そのことに驚きつつも僕は残ったご飯を味わいもせずにお茶と一緒に胃の中に放り込んだ。
次の授業の教科を確認し移動教室だったことを思い出し、移動の準備を素早く行う。
「早く帰って配信したいな…」
だるい体を動かしながら僕はそうつぶやいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます