第58話
間もなく日付けは八月二十七日になる。シンボル防衛イベント開始まであと僅か。眠気は少しあるけど、僕はその瞬間をレガリアの大地で迎えたかった。
《只今より、シンボル防衛イベントを開始いたします》
《各クラン所属の冒険者さまは、防衛拠点に向かって下さい》
《各街の施設はイベント終了まで使用できません》
《なお、モンスターの襲撃は五分後からスタートします》
「いよいよだな」
「腕がなりますね」
「そうにゃ、頑張るにゃ」
クランハウスで待機していた僕たち三人は、そこから出て転移門へと向かう。すでにかなりの渋滞が起こってたけど、転移は一瞬なので、すぐに順番が回ってきた。
そうして宿場町に降り立ったんだけど、通りには人の気配はなく、ほとんどの施設は閉まっていた。モンスターが襲ってくるから、商売どころじゃない……みたいな設定なのだろう。唯一利用可能な施設は冒険者ギルドのみ。
「シンボルってどこにあるのかな」
「前回と同じなら、冒険者ギルドの中にあるにゃ」
「確認してくる」
「同じく」
「私も行くにゃ」
冒険者ギルドをタップすると画面が室内に切り替わった。ホールの中央には見慣れない六角柱のクリスタルがクルクル回転してる。
「あれがシンボル?」
「そうにゃ、間違いにゃいにゃ」
「室内にあるなら、防衛は簡単そうだね」
「そう思うかにゃ?」
「だって入口はひとつだし、そこをナイト系で塞げば……」
「甘いにゃ。モンスターは建物の壁も壊してくるにゃ」
「え、ここって破壊不可能オブジェクトじゃないの?」
「破壊不可能なのは街の防壁だけにゃ。街の入口を突破されたら、そこでジ・エンドだと思ったほうが良いにゃ」
うわ。思った以上にハードそうだ。街の入口は人が数人通れるくらいの幅がある。ナイト系ひとりじゃ護りきれない。交代要員もほしい感じだし、ヴァネッサひとりじゃ到底無理だ。
「始まったばかりだけど、無理っぽいね」
「もうひとつのクランにナイト系がいないと詰みにゃ」
「そこは大丈夫だと思うわよ?」
僕たちの会話に割り込んできたのは、まさかのクリームだった。
「もうひとつのクランって、クリームのとこだったんだ」
「こしあんのクランもここを選んだのね。どんなのが来るのかと思ってたけど、これなら何とかなるかもね」
「うちは三人しかいないけど……」
「こしあんの能力があるじゃない。ヴァネッサさんは、当然各種耐性持ちなんでしょ? それに如……ニャン汰もいるみたいだし」
「……クリームにゃ。久しぶりにゃ」
「いつの間にか、こしあんのクランに入ってたなんて。貴女らしいわ」
「早い者勝ちにゃ」
「まあ良いけど。じゃあ、表に出てくれる? うちのクランマスターから共同戦線の説明があるから」
「了解」
クリームに促されて冒険者ギルドから出ると、そこにはたくさんの女性プレイヤーが並んでいた。
「あ、こしあんくんだ。やっほ~みたいな」
「エミリアもいたんだ。今回はよろしく」
さっきは誰もいなかったから、僕たちが冒険者ギルドに入ったあと、ここへ転移してきたんだな。
「はじめまして。いつでもミルクティーのクランマスターをしている、オスカーです」
「あ、どうも。ラッキーサークルのクランマスター、こしあんです」
オスカーさんは、以前テレビで見た国連宇宙平和維持軍の女性士官を彷彿とさせる礼装に身を包んでいた。コーデガチャを何回やったんだろう。
女性士官の人は女神様みたいだったけど、この人は豪奢な感じだ。特に髪型がすごくて、ドリルみたいなロールが何本も垂れ下がっている。
「我々のクランにはパラディンが三名、ビショップが六名、賢者が六名所属しています。そちらはどんな感じでしょうか」
「うちはトレジャーハンターとパラディンと英雄が各一名づつですね」
「そうですか……いえ、大丈夫! 私たちに任せてください」
「あ、はい」
弱小クランだから不安がられたようだ。しかもそのうちのひとりはトレジャーハンター。僕が彼女の立場でも不安しかない。
「ところで、こしあんさんたちのレベルは【50】以上でしょうか?」
「ええ、全員【60】ですけど」
「え……、ろ、【60】ですって!」
まあ、驚かれるのも無理はないと思う。事前サーチで攻略班のガチ勢でもレベルは【54】くらいだと確認している。これは新大陸でのレベルアップが上手く行かなかったかららしい。
その点、僕たちは耐性を鍛えて新大陸でのレベルアップを繰り返した結果、このサーバーで最高のレベルを保持するまでになった。しかも、激レアアイテムを惜しげもなく装備しているので、攻守ともに隙はない。
さすが新大陸だけあって激レアアイテムの性能も、店売りアイテムの比じゃなかった。そして、???だったナイトメアのEXアイテム、【絶対睡眠のスキルブック】もひとつだけ入手に成功。
何度も戦闘したけど、結局一個しか入手できなかったのはEXのドロップ確率が【-150%】だからだと思う。じっくり検証する暇がなかったから、予想だけど。
淫魔の鞭 物理攻撃力+0 即死10% スチール成功率30%アップ
魔獣の触手 物理攻撃力+0 麻痺20% アイテムドロップ率20%アップ
神獣の靴 物理防御力+40 速度+25
神獣のバンダナ 神獣のバンダナ 魔法防御力+60 速度+15
メタルアーマー 物理防御力+120
メタルヘルム 魔法防御力+80
破邪の盾 物理防御力+70 魔法防御力+70
スリープソード 物理攻撃力+300 睡眠の追加効果
魔族の首輪 全ステータス10%アップ(ダーク専用)
混沌のローブ 物理防御力+90 闇属性攻撃無効
絶対睡眠のスキルブック 使用すると魔法・絶対睡眠を覚える。
キャラネーム こしあん
ジョブ1 トレジャーハンターLV60
ジョブ2 トレジャーハンターLV60
HP 750
MP 270
物理攻撃力 55+37
魔法攻撃力 15+12
物理防御力 40+35+100
魔法防御力 40+35+60
速度 55+25+45
幸運 123+25+1+50
ジョブ特性1 アイテムドロップ率40%アップ
ジョブ特性2 アイテムドロップ率40%アップ
ユニーク特性 アイテムドロップ率30%アップ
ジョブスキル ハイパースチールLV5 罠解除LV4 脱兎LV2
盗賊の目LV5 罠設置LV1 増援LV1
トレジャーマップLV1 トリプルスチールLV--
アイテム取得数アップLV1
後天的スキル 即死耐性LV5 全状態異常耐性LV5 スラッシュLV5
ファイアバレットLV1 ヒールLV5 ストロングLV5
ポイズンミストLV3 アシッドレインLV3 キュアLV5
全属性耐性LV5 次元断LV--
メルクリウスの加護 激レアアイテムドロップ率5%アップ
所属クラン ラッキーサークル
クラン効果 幸運1%アップ
武器1 淫魔の鞭 即死10% スチール成功率30%アップ
武器2 魔獣の触手 麻痺20% アイテムドロップ率20%アップ
頭防具 神獣のバンダナ 魔法防御力+60 速度+15
体防具 白銀の胸鎧 物理防御力+50
足防具 神獣の靴 物理防御力+50 速度+30
装飾品 盗賊のエムブレム 幸運+50 スチール成功率30%アップ
ジョブ1 SP 0ポイント
ジョブ2 SP 0ポイント
所持金 3358077000G
ヴァネッサ
ジョブ1 ガーディアンLV60
ジョブ2 ガーディアンLV60
HP 1895
MP 110
物理攻撃力 15+8+180
魔法攻撃力 7+4
物理防御力 121+61+245
魔法防御力 131+66+170
速度 7+4
幸運 6+3+1
ジョブ特性1 被ダメージ25%ダウン
ジョブ特性1 被ダメージ25%ダウン
ユニーク特性 ヘイトアップ12%
ジョブスキル ガードスタンスLV5 タウントLV5
シールドバッシュLV3 タックルLV2
ヒールLV2 ハイヒールLV2 キュアLV2
オールカバーLV5
後天的スキル 全状態異常耐性LV5 即死耐性LV5 全属性耐性LV5
次元断LV--
ヘパイストスの加護 被物理ダメージ5%ダウン
所属クラン ラッキーサークル
クラン効果 幸運1%アップ
武器1 ブリザードランス 物理攻撃力+180 氷の追加ダメージ
武器2 破邪の盾 物理防御力+70 魔法防御力+70
頭防具 メタルヘルム 魔法防御力+80
体防具 メタルアーマー 物理防御力+120
足防具 白銀のレガース 物理防御力+35
装飾品 守護の指輪 物理防御力+20 魔法防御力+20
ニャン汰
ジョブ1 英雄LV60
ジョブ2 コマンダーLV60
HP 1125
MP 850
物理攻撃力 88+35+600
魔法攻撃力 54+31
物理防御力 85+35+175
魔法防御力 70+35+100
速度 21+10
幸運 20+10
ジョブ特性1 防御無視25%
ジョブ特性2 パーティステータス20%アップ
ユニーク特性 防御無視30%
ジョブスキル スラッシュLV5 兜割りLV5 チャージLV5
闘志LV5 回転斬りLV5 火炎斬LV5 凍結斬LV5
真空斬LV5 大地斬LV5 月光斬LV5
ショックウェーブLV5 ライジングサンLV1
ストロングLV5 ヒールLV5 パワーアローLV5
シールドLV5 キュアLV5
退避LV5 貫通LV5 加速LV5 集中LV5
突撃LV1 迎撃LV1
後天的スキル 全状態異常耐性LV5 即死耐性LV5 全属性耐性LV5
次元断LV-- 絶対睡眠LV1
アルテミスの加護 パーティステータス5%アップ
所属クラン ラッキーサークル
クラン効果 幸運1%アップ
武器1 スリープソード 物理攻撃力+300 睡眠の追加効果
武器2 スリープソード 物理攻撃力+300 睡眠の追加効果
頭防具 メタルヘルム 魔法防御力+80
体防具 メタルアーマー 物理防御力+120
足防具 白銀のレガース 物理防御力+35
装飾品 守護の指輪 物理防御力+20 魔法防御力+20
こしあんに関して言えば、お金も大量に増えている。イベント前の駆け込みなのか、出品したそばから耐性スキルが売れまくったのだ。だからついつい、調子に乗ってたくさん出品した結果が三十三億Gもの大金に結びついた。
そして特筆すべきが新しく覚えたトリプルスチールのスキル。一回の攻撃で三回盗めるのだ。現在のこしあんは十三回攻撃なので、一撃入れると三十九回もの成否判定が発生することになる。
「これはもしかしたら、もしかするわね……」
「それなりの働きはできると思います。一緒に頑張りましょう」
僕とオスカーさんは、握手のアクションでお互いの手を握り合う。そろそろモンスターが攻めてくるころだ。シンボル防衛イベント。どんなものか分からないけど、オスカーさんたちの足を引っ張らないよう頑張りたい。
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