第四音⑧

「有言実行、よく頑張ったな。お前たちの大会出場を認めよう」


 木村のこの言葉に三人の表情が一気に明るくなった。喜びを分かち合う三人の傍で、一人大和だけが難しい顔をしていた。そんな大和へ木村が声をかける。


「平野、点数は出たか?」

「はい」


 大和の声は無機質だ。


「何点だ?」

「何度計算しても、六八点です!」


 叫ぶように宣言する大和が、やけになっているのは誰が見ても明らかだった。そんな大和の元にカノンが近付く。


「大和、問題と解答、見せて」


 カノンの言葉に大和は無言で問題用紙と解答用紙をカノンに渡した。カノンはそれらをザッと見比べてから、


「大和……。奥州藤原氏三代を書く問題、なんで『平衡ひらひら』って書いてあるの?」


 この問題の正解は『清衡きよひら』、『基衡もとひら』、『秀衡ひでひら』の三人であり、決して『平衡ひらひら』ではない。大和は前二つは書けたのだが、どうしても最後の『秀衡』が出てこなかったようだ。だから彼は、


「ワンチャンに賭けた! けど、負けた!」


 と言う訳である。ちなみにこの問題が二点分のため、ここを正解していれば大和も目標点をクリアできていたのである。


「あー! 悔しやー! 口惜しやー!」


 大和が大声を上げて悔しがっているのを、木村は黙って見ていたのだが、


「平野、まだ本番のテストが残っている。本番で男、見せてみろ」


 そう言われた大和は俄然やる気が出てきたのか、


「先生! リベンジ、させてください! 俺が本番で七〇点取ったら、カノンたちの支援!」

「分かった、分かった。頼むから本番で『平衡ひらひら』なんて書くなよ?」

「任せてください! 打倒、奥州藤原氏三大!」


 こうして大和だけは本番のテストでのリベンジが認められ、『ルナティック・ガールズ』の三人は自らが出した条件をクリアできたため、大会への出場権を獲得できたのだった。

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