【第三話】 同じだけど同じじゃないこと。
──今日もしろうさぎさんはお気に入りの大木を探して森を探索中です。
右を見て左を見て、たまに上を見上げれば雲一つない青い空の下。森緑の染み入るような空気と清々しい陽光に包まれながら見渡す世界はそれだけでとても美しく、しろうさぎさんの顔からは自然と笑顔が溢れ落ちます。
「って、あんたな〜に一匹でニヤニヤしてんのよ、気持ち悪い」
「あ、ピクシーさん、おはようございます」
「おはよう、うさぎ」
探索の途中で仲良しのピクシーさんと出会ったしろうさぎさんはそれから二匹で世間話をしながら一緒に大木を探して歩きます。
「──で、うさぎ。あんたがここに来てもうどれくらい?」
「うーん。桜の季節にここに来たから、まだ一つ分の季節かなぁ」
「そっかぁ。ま、昔のことは別に詮索しないけどさ、あんた的にこの森はどうなの?」
「え? この森?」
「そ。この森。私はこう見えて他の森に行ったことはないからさ、やっぱり聞いてみたいじゃない?」
ピクシーさんの問いかけにしろうさぎさんは歩きながら少し考えると答えます。
「うん。緑も多いし、大きな木も沢山あるし、スライムさんや、リリパットちゃん、それにピクシーさんもみんな優しいモンスターさん達だからとても居心地が良い」
「あら、そうなの。やだ、本当のこととはいえちょっと照れるじゃない。やめてよね、フフフ」
ピクシーさんはその言葉を聞くとピカピカと全身を発光させながらクルクルとしろうさぎさんの周りを飛び回ると文字通り全身で喜びを表現します。それを見たしろうさぎさんも同じく嬉しい気持ちになって二匹は笑顔で森を進んで行きます。そしてそれから暫く進むと二匹の耳には最近馴染みの音が聞こえて来たのでした。
──バリンッ!! バリンッ!! バリン、バリン……
「おっ、今日もやってるやってる」
「うん。よっぽど気に入ってくれたみたいで嬉しいね」
その音の主は新しい自前の弓を手に入れて只今急成長中の小さなリリパットの女の子のリリパットちゃん。彼女は二匹に気づくと弓から手を離すことなく声をかけてきます。
「あっ!! しろうさぎさん、ピクシーさん、おはようございます」
──ズド、バリンッ!!
「おはようございます、リリパットちゃん」
「おはよう。って、あんた、よそ見して話しながら矢を射らないの。危ないでしょ」
「あ、すみません。気をつけます!」
──バリンッ!!
「……はぁ。この娘に弓を与えたのは本当に正解だったのかどうか……恐ろしいわ……」
「あはは。凄い才能だもんね、きっかけ一つでこんなにも変わるなんてね」
「はい!! 私、今が凄く楽しいです、だから、お二匹さんには本当に感謝しています。ありがとうございます!」
──バリンッ!!
「あぁ、はいはい。どう致しまして」
「どう致しましてです」
そうして三匹が楽しそうに会話をしていると突然近くの茂みが小さく揺れて三匹は揃ってビクッと体を強張らせその方向に視線を向けたのでした。
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