【天武】の試練 VS【鏡界】のチェシャキャット
「ますたー?????」
なんか、ローザネーラがすごい顔で見てくる。呆れたような視線がありありと『何言ってんだコイツ』と語っていた。
・ネームドボスをそう簡単に仲間に出来るとでも?
・前例があるとはいえ、無謀とかいうレベルじゃない
・野良猫拾うのとはわけが違うんだぞ
・いや、ヴェンデッタちゃんならあるいは……?
・出来てたまるか。どんな確率だよ
・おwwやってみろやwwwできたら半裸で逆立ちしながらアインス一周してやるよwww
むぅ、コメントもなんか冷たい……そして、最後のヤツ。めっちゃムカつくな。
ええい、みんなしてなんだ。否定ばっかりして。やってみないとわからないじゃないか。
「いや、やるまえからわかってほしいのだけど。そもそも、なつきのまものをどうやってなかまにするのよ? なにかほうほうはあるわけ?」
「それはほら……強く当たって、後は流れで?」
・それは方法とは言わないんよ
・高度な柔軟性を持って、臨機応変に対応するってことね
・意訳:行き当たりばったり
・うーん、これはまごうことなき頭わるわるですね
・知性どこやったん?
・いや、神風アタックを推理と言い張る子だし……
「だ、誰が頭わるわるじゃい! ええい、そこまで言われて引き下がれるもんですか。絶対にあの猫を仲間にして、みんなに渾身のドヤ顔をしてやりますからね!」
・ヴェンデッタちゃん、キレた!
・ぷんすこしてるのかわいい
・絶対? 大きく出たな
・ほーん、大言壮語吐くじゃん?
・じゃあ、できなかったら罰ゲームだな
・お、いいねぇ。どうだヴェティちゃん。のるかい? 別に逃げてもいいんだよ?
「あまり俺を見くびらないでもらおうか! いいでしょう、罰ゲーム。受けて立ちます! もしあの猫を仲間に出来なかったら、何だってしてやりますよ!!」
・お?
・今
・何でも
・するって
・言った
・よね?
「……………………あたぼうよ!!!」
「……ますたー、わたし、こういうのをなんていうのかしっているわよ。『みずからだんとうだいのかいだんをのぼる』っていうの」
ローザネーラの呆れた視線が俺に突き刺さる。
『自ら断頭台の階段を登る』……多分、『墓穴を掘る』と似たような意味だろう。
ええい、自爆なんてしとらんわ! 罰ゲーム? 大丈夫大丈夫、勝てばいいだけの話だ!
コメント欄にすごい勢いで俺にやらせたい罰ゲームが書かれていくのに、恐怖を覚えるが、見ないフリする。
待ってろよ猫ォ! お前を絶対に仲間にしてやるからな!!
主に! 俺の!! 尊厳のために!!!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「猫ぉおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
『にゃあああああああああああああっ!!?』
フードの下から赤い瞳をギラつかせ、大鎌を振り回す物騒な幼女が一人、悲鳴を上げる小動物に襲い掛かっていた。
動物愛護団体がダース単位ですっ飛んできそうな絵面だが、別に幼女が動物虐待に勤しんでいるわけではない。
幼女――ヴェンデッタは、己の尊厳を賭けて、猫――チェシャキャットを仲間にすべく戦いに挑んでいるだけである。
ヴェンデッタは真紅の大鎌をチェシャキャットへと振り下ろす。だが、小動物特有の軽やかな動きで回避され、斬撃は虚しく空を切った。
「ちっ、ちょこまかと!」
『にゃああああああっ!!』
ヴェンデッタは視線をさらに鋭くし、追撃を加えようと踏み込んだ。
しかし、チェシャキャットもやられてばかりではない。魔力の籠った鳴き声を媒介に魔法陣を空中に刻むと、ヴェンデッタめがけて針状の魔力弾を放った。
一瞬で弾幕を形成した針を前に、ヴェンデッタが選んだのは――前進だ。
「《魔纏装》【闇】!」
真紅の大鎌に禍々しい漆黒の闇を纏わせ、突き進みながら縦横無尽に斬撃を繰り出す。
闇色の斬撃に触れた針はガラスが割れるように砕け散り、無害な魔力となって消えていく。
攻撃を突っ切ってきたヴェンデッタを見て、チェシャキャットの猫目が大きく開かれる。「ふぎゃっ!」と悲鳴が上がり、全身の毛が逆立った。
驚愕するチェシャキャット。動きが一瞬だけ停止する。
その隙を、この幼女は見逃さない。片手を突き出し、叫ぶ。
「捕獲するには、状態異常だよなぁ! 【
放たれたのは、雷の魔弾。
麻痺効果を狙った魔法の選択。弾速の速いそれはチェシャキャットに向かっていき、その小さな身体を打ち据える。
だが、見た目は小さくともネームドボス。ダメージはそれほどないらしく、僅かにぐらついただけで、すぐに次の行動へと移った。
『にゃあああっ!』
鳴き声と共に展開される魔法陣。白色のそれより放たれるのは、ジャバウォック形態でも散々使っていた白い誘導弾。
だが、数が多い。ジャバウォック形態では一発しか生み出されていなかったそれは、大きく数を増やし七発――その全てが、ヴェンデッタを包囲するように襲い掛かる。
魔法の予想外の効果の薄さに、牽制の【雷弾】を起点に動き出そうとしていたヴェンデッタは出鼻をくじかれてしまう。
故に、誘導弾への反応がほんのわずかに遅れた。
鎌での迎撃? 魔法で撃ち落とす? 素直に回避行動をとる?
迫りくる誘導弾にヴェンデッタの脳裏に幾つもの選択肢が浮かぶ。
しかし――――足りない。届かない。
どうあがいても、このままでは攻撃を食らってしまう。ネームドボスの火力だ。耐久値が藁半紙なみのヴェンデッタでは、一発でダウンしてしまうこともあり得る。
絶体絶命の窮地――けれど、ヴェンデッタは、フードの下で、口元を笑みの形に変えた。
「――――――ローザネーラ!」
「まったく、せわのやけるますたーね! 【
七発の誘導弾は、ヴェンデッタの後方より放たれた力場によって打ち消された。
足りない。届かない。――――それは、一人では、という話。
そう、ヴェンデッタは一人で戦っているわけじゃない。ローザネーラという心強い仲間がいるのだ。
名前を呼ぶ。それだけでヴェンデッタのピンチを見事に救ってみせたローザネーラに、配信を見ていた視聴者たちは称賛とてぇてぇのコメントを乱舞させる。
「ついでよ、【
『ふぎゃあっ!』
ローザネーラの放った重力の檻が、チェシャキャットの動きに制限をかける。
物理的ステータスが低いチェシャキャットは、これを咄嗟に破ることは出来ない。
「サンキュー、ローザネーラ! 愛してる!」
相棒の適格なフォローにウインクを投げつつ、ヴェンデッタはチェシャキャットへとかけていく。
なお、唐突なラブコールと目くばせにローザネーラが顔を真っ赤にして「ふみゃあ!」と猫っぽい声を上げていたのは、残念ながらヴェンデッタの耳には届いていなかった。
踏み込み、大鎌を振りかぶり、ヴェンデッタの放つ斬撃は、まるで断頭台の刃の如く。
「【ギロチン・ダンス】――――【グリム・ザッパー】!」
アーツの光を纏った刃が、残酷にもチェシャキャットの小さな首に振り下ろされ――。
『にゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』
けれど。
外的要因により無理矢理覚醒させられたとはいえ、相手はネームド。
可愛らしい鳴き声に似合わぬ魔力が湧き上がり、突風をまき散らす。
ヴェンデッタがバランスを崩して吹き飛び、ローザネーラが飛ばされないように身を屈めた、次の瞬間。
――――【鏡界】が、降臨した。
======================================
どうも、作者です。宣伝なので、読み飛ばしても大丈夫ですよ。
本作であるTSロリですがコミカライズがピッコマ様などで絶賛配信中です!!
とくにピッコマ様だと先行無料で一話だか二話だか無料で見れるので、是非とも読んでってください!
ピッコマ様でTSロリを探す時は、チャンネルという項目で『コスモブルー』のチャンネルを見つけていただければ見る事が出来ると思います。
クスミ様(@nekoyuku)によるめっさカワイイヴェンデッタちゃんは必見モノですよ。いやもう、本当に超かわいいですから。
(WEB版のURL→https://piccoma.com/web/product/134069?etype=episode)
ではでは、今後ともTSロリをよろしくです! ( `・∀・´)ノヨロシク
次回の更新ですか? スゥーー……み、未定です。頑張って早くしますぅ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます