第2話 私、旅に出ることになりました



前回のあらすじ



アホ女神のせいで無関係で一般人の私が勇者の力を手に入れ


魔王討伐の旅に出ることになりました。



_____________________



ルチア「ですから本物の勇者と一緒に旅をしてください」



ヒカリ「え!?いやなんでですか?」



仲間を集めろというのはわかる


だけど何故本来勇者になる予定だった人と一緒に旅をしなければならない



ルチア「え〜っとヒカリさんに魔王討伐してもらったら困るというか・・・」



ん?



ルチア「本来勇者に選ばれた人に魔王を討伐してもらわないと困るんです・・・」



ヒカリ「いやなんで!!?」



こいつ魔王を倒せと言いながら、魔王を倒すなだと!?


意味が分からない!



ルチア「神様と話して勇者を選んだっていいましたよね」



そういえばそう言ってたけ



ルチア「で、選ばれてないヒカリさんが魔王を倒しちゃうと、私のミスが神様にバレて困るというか・・」




ルチア「とにかくヒカリさんが魔王を倒したら困るんですぅ!」



要するにミスの隠蔽じゃないか!!



ヒカリ「そんなの知りません!!大体貴女のせいで私の人生滅茶苦茶になってるんですよ!」



ヒカリ「これ以上貴女の尻拭いなんかやってられるか!!」



散々私に迷惑かけてるくせに都合がよすぎる...!



第一、本来勇者になる筈だった人と旅するなんて・・・


私に非はないけど・・・なんか気まずい・・・



ルチア「ごめんなさい!そうです!全部私が悪いんです!!謝ります!謝りますからどうか言うことを聞いてくださいよぉ!」



何か逆ギレしてない!?



ヒカリ「お断りです!」



ルチア「で、では本物の勇者と魔王を討伐した時、土下座だけではなくヒカリさんの靴を舐めるというのであればどうでしょうか・・?」



ヒカリ「分かりました。手を打ちましょう」



ルチア「即答っ!?そこは考えて『いやそこまでしなくても良いですよ』とか言いましょうよ!ドSですか貴方は!?」



お前のほうがドSじゃい!


靴舐めで許してやってるんだから有難く思え!



ルチア「はぁ・・・まぁそれで手を打ってくれるなら・・・ただ・・・」



ヒカリ「ただ?」



ルチア「後で気が変わったと言われるのも困りますし・・呪いを・・・まぁ取り敢えず勇者と合流してからにしましょうか!」



なんか今物騒なこと言おうとしてなかった!?



ヒカリ「あの、ずっと思ってたんですけど」



ルチア「はい?」



ヒカリ「勇者の力ってなんですか・・?」



ルチア「え!?知らなかったんですか!?知らないのに『私勇者に選ばれちゃった〜!』みたいなこと言ってたんですか!?」



言っとらんわ!



ヒカリ「いやだって・・勇者の力が宿ったと言われても、別に私の体変わったような気がしないですし・・・」



ルチア「そんな事ないですよ〜じゃあそこにある空き瓶を手に持ってください」



空き瓶?


あぁ私が二日前に飲んだ瓶か



私は床に転がってる酒瓶を手に持った



ルチア「しかしあれですね〜ヒカリさん部屋汚いですよ!掃除しましょうよ〜掃除!」



うぐっ!



ルチア「女の子の部屋じゃないですよこれ〜!服脱ぎっぱなし、空の瓶があちこちにあるし埃まみれ・・・女子力皆無ですね」ププッ



くっ!笑うな!


わかってる・・分かってるよそんなこと!



ってかダメダメなアンタに言われたくないよ!



ヒカリ「あー!もう!で、この瓶で何をするんですか?」



ルチア「思いっきり握ってみてください!」



思いっきり・・?


まぁ言われた通りにやってみるか



ヒカリ「ふんっ!」パリーン



ヒカリ「・・・え!?」




瓶が...!


まるでクッキーを握りつぶしたかのように簡単に砕けた...!?


ありえない・・こんなの・・・



ルチア「お見事!すごいでしょ〜!それが勇者の力ですよ!」



ルチア「闇を打ち払うため女神から送られた大いなる力」



・・・・・



ルチア「常人の何倍もの力と魔力がヒカリさんの体に宿っています」



・・・・・



ルチア「その力を使い魔王を倒しちゃってくださいね!あ、くれぐれも悪用しないように!」



・・・・・



ルチア「ヒカリさん〜?聞いていますか〜?もしも〜し?」



ヒカリ「あの・・」



ルチア「はい?」



ヒカリ「凄いパワー貰ったのはいいんですけど・・・割れた瓶の片付けが・・・」



ルチア「あー・・・まぁ仕方ないですね!ついでに汚い部屋も掃除しちゃいましょう!」



お前が瓶握ろって言ったせいだろうが!




1時間後



ヒカリ「やっと....終わった....」



部屋は先程と比べるとかなり片付いて


なんだかスッキリした気持ちになった



部屋が綺麗って....落ち着くな...



ルチア「うーん...まぁやっと人が住めるって感じですかね?」



うるさい!



ルチア「あ、ヒカリさん!旅のことはご両親に説明されましたか?」



あっ...忘れてた...



両親と勤め先の店長には旅に出る事を説明しなくては....



ヒカリ「今から言ってきます」



ルチア「私から説明しましょうか?」



ヒカリ「あー....多分大丈夫だと思いますけど、どうしてもという時お願いします」



ルチア「分かりました。あ、くれぐれも勇者に選ばれたとか言わないでくださいね!お告げで勇者のお供に選ばれたとか言ってください!」



この駄女神、保身に関しては一流だな..!



私は2階にある自室から、1階のリビングへ移動した



父「おぉ〜!おはよう!!どうしたヒカリ?朝から大声上げてバタバタして!?」



母「怖い夢でも見たの?もしかして....おねしょしちゃった...?」



父「ママ!そんな事言ったらヒカリが泣くだろ〜!よしよし〜!いい子いい子〜」



何歳だと思ってる!?




うちの両親はいつもこんな感じで...少し天然だ



ルナ「お姉ちゃん大丈夫?何だか顔色悪いよ」



こちらは妹のルナ


歳は16歳で私と違い真面目で几帳面なしっかり者だ



ヒカリ「大丈夫。ありがとうルナ」



ルナ「....それなら良いんだけど。私お姉ちゃんに何かあったんじゃないかと思ったら心配で...」



ヒカリ「うーんまぁ...あったといえばあったかな」



ヒカリ「えーっと....父さん、母さん、ルナ、皆に聞いて欲しいことがあって」



ヒカリ「私....ルチア様のお告げで魔王を倒す勇者様のお供に選ばれたみたい」



突然こんな事をいって信じるわけが無い


夢でも見たのか


はたまた気が触れたと思うのが普通だろう



だが



父「おぉ!!?お前が勇者と一緒に世界を救いに行くのか!!頑張ってこい!父さんは誇りに思うぞ!」



母「うちの子が...こんなんに立派になるなんて...!お母さん涙が止まらない〜〜!!」



....やっぱ信じるんだ



ルナ「ちょっとお姉ちゃん!どういう事なのか説明して!」



まぁそうだよね


ルナだけが心配してくれてお姉ちゃん嬉しいよ....



ヒカリ「ルチア様説明お願いできますか」



ルチア「はいはい〜。えー皆さん私の声が声聞こえてますか〜?」



ルナ「え!?今声が..!?」



父「凄い!女神様の声だ!」



母「あ、皆聞こえてるのね。いつもの幻聴かと思ったわ」



医者に診て貰え!



ルチア「私は女神ルチアでヒカリさんにはかくかくしかじかで〜」



面倒なので説明してもらう事にした



とりあえず皆納得したみたい


ルナ以外は



ルナ「選ばれたからってお姉ちゃんが行く事ないでしょ!」



ルナ「お姉ちゃんは虫を見ただけでキャーキャー言う弱虫で意気地無しで、掃除もできなくて、私が支えてあげないとダメダメで生きていけないお姉ちゃんなんだから!」



ルナ「そんなお姉ちゃんが旅なんて出来るわけないわ!」



なんか酷い言われよう!


お姉ちゃんちょっと傷付くよ!



ルナ「それにお姉ちゃんはそこら辺の野良猫にやられるくらい弱いんだから!魔物となんか戦えるはず筈ない!」



ルチア「ヒカリさんには私の加護が付与されてまして」



ルチア「加護のおかげで常人より何倍も強くなってるので、大丈夫かと...」



父「ルナその辺にしておきなさい。いいじゃないか!ルチア様も大丈夫って言ってるし!頑張って魔王倒してこい!」



あんた親だろ!もう少し心配しろ!



母「夜道は危ないから...明るいうちに魔王を倒して帰ってくるのよ」



帰れるか!ピクニック気分かよ!



ルナ「でも...!」



ヒカリ「ルナ...心配してくれてありがとう。お姉ちゃん嬉しいよ」



ヒカリ「でも私、決めたから」



無事終わったら


この駄女神に私の靴を舐めさせ土下座させる事を...!



ルナ「お姉ちゃん....」



ルナは少し不満そうな顔だけど、納得してくれたかな



あとは店長に説明しなきゃ



私は着替えて、家族に店長にも説明してくるといい


勤め先の酒場に向かった



酒場



ヒカリ「すみません店長。少し話があって」



店長「ん?どうしたヒカリ?昨日の事気にしてるのか?」



店長「まぁ昨日は俺も言いすぎたしな。悪かった。誰だって失敗はするただこの失敗をどう活かすかが」



ヒカリ「いえ、そうではなく実は」



私は事情を話した



店長「お前が魔王を倒す旅に??魔物の方がもっと面白い冗談を言えるぞ」



店長「ヒカリ...お前4歳のガキと素手で喧嘩しても負けそうなのにそんな奴が魔王を倒せるわけないだろ」



まぁ信じて貰えないとは思ってるけど


ってか私の評価酷くない!?



こうなったら実力行使



ヒカリ「すみません。そこの廃棄用の空き瓶貸してもらって良いですか?」



店長「いいけど、どうすんだそれ?」



私は店長から空き瓶を受け取り思いっきり握った



ヒカリ「ふんっ!!」パリーン



空き瓶は粉々に砕け散り床に散乱した



....結構楽しいなこれ。癖になりそう



店長は驚いた顔でこちらを見つめ


5秒ほど沈黙が続いたがやがて口を開き



店長「....お前、これ掃除しろよ」



ヒカリ「あっ......はい....」



私はノリで瓶を破壊したのを少し後悔した



ルチア「ヒカリさん、おバカなんですか?」



10分後



散乱した瓶を片付け


旅に出る事を店長に了承して貰った



店長は私の力とルチア様の説得で納得したらしい



....というか私瓶割る必要なかった!?



店長「...まぁ、俺からは何もしてやれないが頑張ってこいよ」



店長「そうだ!ちょっと待ってろ」



なんだろう?



数十秒後



店長は息を荒らげながら何かを持ってきた



店長「これは護身用に持ってた剣だがお前にやるよ」



店長「何も無いよりはマシだろ」



ヒカリ「え!?いや!そんな大層なもの貰えないですよ!」



店長「良いって!持ってけ!俺よりお前の方が必要だろ」



ヒカリ「て、店長...!」



うちの親より優しくて涙が....



店長「辛くなったら途中で帰って来ても良いんだぞ!俺は何時でも歓迎するからな」



店長〜!!



私は店長にお礼をして自宅に戻り身支度を整え


家族に別れを告げることにした



父「魔王倒して億万長者になろうな!」



あんた少しは心配しろよ!



母「晩御飯までには帰ってくるのよ〜!」


帰れるか!



ルナ「お姉ちゃん!辛くなったら何時でも帰ってきていいんだよ!私が居ないとお姉ちゃんダメダメ生きていけないんだから!旅なんてお姉ちゃんには無理なんだから!」



ありがとうルナ...!


...色々酷い言われような気がするけど



ヒカリ「それじゃあ.....行ってきます!」




こうして私の魔王討伐の旅が始まった



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