第1.5夜「俺達の日常は平和だねぇ」~スター視点~

悪の組織では今日も構成員達が戦闘訓練をしている。

それを幹部の俺達が三階の部屋から見ていた。

(今日も真面目にやってんなぁ。サボる奴とか居ねぇよなぁ~、、、ん?向こうから歩いて来てるのは、、、)


「お!月下か!」

「へ?月下?」

「、、、、。」


俺と同じタイミングで月下に気がついたのは深紅月さんだった。

その声に反応して窓の外を見たのはヒナタと無言なラピスだった。

(ありゃぁまた洗濯物か~?構成員達がかごを奪ってるって事はまた世話役達にお願いしたのかぁ?)


「あらあら、またお説教されてるのかしら?世話役達も月下くんにお願いされたら断れないものね?」

「そんな事言わないであげなさいよ桃姫ちゃん。どうせ私達も月下ちゃんにお願いされたら断れないじゃない」

「そうねパープルちゃん、確かに断れないわね。だってあの綺麗な顔を困ったように縋り付く様にして可愛い顔で見てくるのよ?むしろ断れたら凄いわよね?」

「フッ、確かにな」

「ほら、イバラさんも肯定してるわよ」

「イバラ様だけではなくみんなそうでしょう?」

「まぁ、そうでしょうね?」


イバラさん、パープルさん、桃姫の姉さんが言ったように確かに月下の事を知っていて月下のお願いを断れる者は俺を含めてこの悪の組織には居ないだろう。

(月下はなぁ~、、、同じ男のしかも俺より背が高い奴なのに性格は温厚で優しく可愛らしいし顔はあり得ないくらいの美人だもんなぁ、、、断れないよなぁ)


「お、月下は洗濯物を干しに行くみたいだぞ?構成員が洗濯かごを持って着いて行くみたいだ。やっぱり月下のお願いを断れなかったみたいだな!」

「じゃあ、オレは月下を手伝ってくるな!」

「ヒナは行動が速いな!なぁ、ラピス」

「うるさい」

「って、どこ行くんだ?なぁ、ラピス?」

「、、、何処でも良いだろう、、、はぁ、どうせアンタも、、シンも勝手に着いて来るんだろ?」

「おお!よく分かったな?ならさっさっと月下達の所に行くぞ!」

「うるさい、引っ張るな」


月下が洗濯物を干しに行くのを見た深紅月さんの言葉にヒナタは素早い(本当に早くて驚いた)動きで月下の元に走って行った。

それを追うように着いて行こうといたラピスに声をかけた深紅月さんもラピスを引っ張りながら月下の所に行くようだ。

(俺も着いて行こうっと~)


「あらあら、私も癒しを見に行こうかしら」

「なら、私も行くわ」

「パープルさんと桃姫の姉さんも行くのか?俺も行くつもりだけどな?ドクターはどうする?」

「え、えっと、、、ぼ、ボクも行く」

「俺も行きたい所だが少し用事があるので外すぞ、、、残念だがな」


俺達も深紅月さん達の後に続いて行こうとしたがイバラさんだけは用事があるらしく本当に、本当に、残念な顔をしながら俺達とは反対の方向に向かって行った。

(まぁ仕方ないよなぁ。月下は俺達の癒しだからな~)





ヒナタが月下に話しかけて何か話している。

月下は少しシュンっとした顔をしたがヒナタの言葉で直ぐに嬉しそうな顔に変わった。

(嬉しそうな顔しちまって可愛ねぇ)


「可愛い~なー!さすが俺の弟(ヒナタ)!良く月下を喜ばせた!」

「騒ぐなシン、月下達に気づかれる」

「おっと、悪い悪い。だがこれだけ離れてたら聞こえないだろ?」

「うるさいと言ってるんだ」


深紅月さんが実の弟らしいヒナタを褒めるのを心底ウザそうな顔をしたラピスに止められた。

(あ~あ、また始まったか~、、、けど月下の顔が晴れたのは良かったなぁ)


「月下、元気出て、良かった」

「あ~、、、そうだな」

「あら、ドクターくんもスターくんも心配したの?」

「桃姫、、、うん、月下が、笑ってた方が、ボクは嬉しい」

「まぁ、月下は俺達の癒しだしなぁ」

「まぁそうね。けどあれは多分そんな心配するほどの事じゃないわよ?ねえ、パープルちゃん?」

「そうね、多分あれは月下ちゃんが洗濯するのは他の人に迷惑なんじゃないかなって思ったんじゃないかしら?」

「それをヒナタくんが持ち前の男らしさで何か言ったんじゃないかしらね?って、あら?」


月下の事をパープルさんと桃姫の姉さんに説明されていると途中で桃姫の姉さんが月下達を見て首を傾げた。

(ん?何が、、、あ~、、)


「世話役達が死んでる(死んではない)わね」

「またヒナタくんに男前発言されてキュンキュンしてるんじゃないかしら?」

「そうでしょうねぇ。男の俺でもカッコいいって思いますからねぇ」

「ボクも、ヒナタはカッコいいって、思う」

「あの子は本当に男前ですものね?」


ヒナタの男前の話をしていたら緊急の放送が流れたので急いで“門”まで向かった。




畏れを集めたに月下が門を潜ったのを幹部みんなが見守りながら見送ったがその後この門から離れる者は居なかった。

それから門の前に用意したコピー戦闘員達が出動して直ぐに月下が戻って来るまで誰も動かず喋らずそこにいた。


「よ、良かった、無事に戻って、来て」

「まぁなぁ。しかし本当にラピスは月下に過保護というかなんというかなぁ?」

「あの何事にも無関心なラピスくんが月下くんには過保護ですものね?」

「まぁ、ラピスくんはヒナタちゃんや深紅月さんも大切にしてるけど誰がどう見ても一番は月下ちゃんだものね?」

「月下もラピスもヒナタも深紅月も昔からの付き合いらしいからな」


イバラさんが話した次の瞬間、ラピスが月下を抱き上げた。


「あらあら、本当に大事に抱き締めてるわねぇ、しかもお姫様抱っこ」

「自分より大きな男をいつもいつもよくやるよなぁ~」

「まぁ私達も普通の人より力はかなり強いから月下ちゃんくらいは軽く抱き上げられるけどね」

「う、うん、けど、月下はその、ふ、服装で分からないけど、かなり細いから、ボクが普通の人くらいの力しかなくても、だ、抱き上げられると、思う」

「確かにな。月下は少し軽すぎるからな」

「イバラさんと俺は何回か月下の事を抱き上げたりしてるから分かるが月下は軽い、軽すぎるんだよなぁ」


月下は長身の身長にしては体重が軽すぎる。

何回か議題にあげてるんだが体質的に太り難いみたいであれ以上は無理みたいなのでみんな月下にもう少し肉をつけるのはほとんど諦めている。

(軽すぎて心配になるんだけどなぁ)


「まぁ良いじゃない?さっさとしないと月下くんを連れて四人だけで休憩しちゃうわよ?」

「おっと、そりゃもったいないなぁ」

「そうだな。俺達も行くとするか」


前に行くラピス達を追いかけて俺達も休憩する部屋に向かうが俺はその途中でラピスと月下の会話を聞いてその場に立ち止まってしまった。

(平和で幸せねぇ?)


「フッ、、、月下がそう言うんなら平和なんだろうねぇ。それに俺達は月下が幸せなら俺達も幸せなんだけどねぇ」

「スターくん?どうかしたのかい?」

「いやぁ?何でもないよ~?」


月下に声をかけられ俺は歩き出した。

一番後ろに居る俺にはみんなの姿がよく見えた。


(月下は俺達にとって大切な“癒し”なんだからずっと笑っていて欲しいなぁ)




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