第22話 エルフのミリーと醜いライラ

リザリアはグーラの指さす方向を見て何かを思いついた。

「里は移動しているのかしら?」


「ああ その通りだ。移動を続けられるうちはよいが、エルフの住める場所は数百年もすればなくなるだろう。そうなれば戦争になる。我々は食べるという習慣を失うわけにはいかんのだ」


ビスポがショウスケの肩を叩いて腕組みをしてきた。

「グーラは何を辛気臭い顔をしているんだ?村を案内してやろうぜ。ショウスケは荷車を一緒に押した仲だからよ」


しかし 長いひげを蓄えた長老がこちらへやってくる

「グーラよ 火の支度に遠征、ご苦労であった。そちらは人族のようじゃが紹介してはくれぬか?」


俺たちはグーラに一通り紹介されてから長老と話をした。

ショウスケはリザリアの手を握る。

「ショウスケだ。仲間の薬を探しにやってきた」

「り・・リザリアともうす・・」


「ほっほほ ワシはエルフの長のザンガスともうす。そなたらは仲が良いのう。それはさておき、ショウスケよ。薬が必要という事じゃが詳しく話してはくれぬか?」


俺は事情を説明した。

グーラも話に加わって 待ち伏せされて襲撃を受けると勘違いしていた話をすると

里のエルフたちも集まって大笑いをしていた。

「エルフの英知にすがるそなたの考えは正しい。薬は用意しよう。仲間のところへも急ぐならば我が里の戦士に運ばせるがどうじゃ?」


ショウスケは スマートフォンの操作をして

「それには及ばない。 ドローンもそろそろ眠らないといけないから薬を運ばせようと思う」

「よかったじゃないか?」とビスポが薬を持ってきてくれるとドローンに薬を乗せてcabin02に飛び立っていった。


グーラが前に出てきた

「皆の衆も見たか?ショウスケはドローンという鳥を操るのだ。その焚火の火も簡単に起して見せた。時代は変わっている。我々も変わらなければいけない。そして我々の遠征のせいかも見てほしい」


バサ!


荷台の布がはがされ野菜が現れた。


エルフたちは腹をさすり始めた。

空腹でお腹がうずくと言っていたが 眠りから覚めたばかりでお腹が空いているのか。

列になって野菜を貰うエルフたちに習って ショウスケたちも野菜を受け取ると調理を始めた。

塩はエルフにとっても必要な物だったらしく何とかなりそうだ。

グーラたちがやってきた。

「ほほうそれが人族の料理という物か?」

「ああ でも塩だけでもいいけどスパイスがあればもっとよかったんだけどな」

ビスポが一口ショウスケの料理をつまむ

「ただの刻んだ野菜だろ?うひゃ こんなに味が濃くなるのか?気に入ったぜ」

エルフはあまり料理をする習慣はないらしいことや 弓を覚えたときの話など色々な話を聞かせてくれた。


「オレたちはそろそろ キノコから養分を吸収せねばならんようだ。眠い眠い。そう言えばにも流れ者のエルフがいるらしいぞ あとで。。ふぁ~ 眠い眠い」

グーラたちはキノコの中に吸い込まれるように埋まるとお尻だけを見せてそのまま眠ってしまった。

地下にエルフがいるのか。

知らないエルフかもしれないけど ミリーかエルフの姿のライラさんかもしれないし

食事が終わったら 顔を見に行こう。野菜をさらに持ってリザリアに手渡した。

「見てショウスケ エルフの人たちは生で食べているわ。焚火で焼いたほうが美味しいって教えてあげたほうがいいのかしら?」


長老が両手を高らかに挙げた。

「そろそろ よいであろう。野菜に火を通すなど邪道じゃ。グーラが我が息子でなければこのような面倒な事はせずともよかったのだがグーラのヤツはまだ若い。好奇心をくすぐるショウスケはグーラにとっては毒なのじゃ。グーラを説得してエルフの誓約書を書かせるまでは、人質として地下に入ってもらうぞ」


里の戦士たちが俺たちを取り囲んだ。

キノコの壁をトントンとすると 扉が開いてキノコの家の入り口が開く、部屋とは別に地下に通じる階段があって俺たちは地下へ連れていかれた。

奥へ進むとそこには なんとミリーの姿があった。


戦士たちの話では 昨日の晩にミリーを保護したらしく力を使い過ぎたせいなのか寝不足になってフラフラの状態だったらしい、キノコに入れて回復をしようとしたがそれだけはどうしてもイヤがるので仕方がなく地下で休ませたようだった。

「我々が養分を吸収している間に歩き回られて デスクイーンに見つかりでもしたら厄介だからな。それにこの地下は空気を取り込むための穴がある。それはキノコの柱になっていて外へ・・オッホン!おっとじゃべり過ぎたな」

俺たちを残して戦士たちは上に上がって行ってしまった。



「この糸はクモの巣かしら?」

リザリアがミリーに張られている糸を見つけた。

俺はミリーを抱き起して糸を払い除けてたが どうやらこれは菌糸の糸。

ミリーは養分になろうとしていた。

地下もダメなのか?地面に寝かしちゃいけない。

ミリーをおぶると リザリアに上着で俺とミリーを結んでもらった。

羽のように軽いミリーは持ち上げている感覚はほとんどないから両手だって自由に使える。

戦士たちが言っていたとおりでキノコの真下に来ると竪穴になっていて空気を通す構造になっているので

いくつか 穴を覗いてだ出できそうな穴を探してた。


カラン カラン


穴の奥からなわハシゴが落ちてきた。

ハシゴからはビスポがおりてきて「あの親子がこうなることは俺でも予想がついた。心配するな。ショウスケと俺は荷車を一緒に押した仲じゃないか?さあ こっちへ来るんだ」というのでなわハシゴをよじ登るけど重さがないようにスイスイ登れる。

調子に乗って登り過ぎるとリザリアに追いついてしまいそうになるくらいだった。


ハシゴを登ってキノコの傘の上に来ると「ふあぁ~ 眠い 俺はそろそろ限界だ」というとキノコの中に入るらしく

なわハシゴを織りていった。

だけど 見渡すと絶景が広がると言うか。

「高すぎるわ」

しなびたキノコは全長何メートルなのかわからないくらい高かった。

飛び降りるのは無理だし ハシゴを引き上げてかけなおすしかないのか?


「ショウスケ?おはよう」

ミリーが目を覚ましたようだ。

ショウスケは ミリーの小瓶を取り出すとゆっくりとミリーに紅茶を飲ませる。

ゴクゴク。

「ライラには会えたのか?」

「追いかけていたら里を見つけたの。でも ライラはエルフの姿に戻ると姿を消しちゃったの」



キャー!


ドッカン! ボカン!


弓を引けー!


デスクイーンが攻めてきたぞ!!


声が聞こえたほうを見れば長老たちが デスクイーンと化したライラさんから攻撃を受けていた。

ミリーの怪力がショウスケの肩をギュっとつかむ

「里を襲うなんてウソよ。ライラを止めなきゃ」


エルフとライラの戦いはライラの方が有利に見えるがエルフたちは人数を生かして色々な死角から攻撃することができる。

ミリーは高いキノコの上から飛び降りる。

ドスン!


「ライラ!!」


飛び上がったデスクイーンに抱き着いたミリーはそのまま地面に転がったがライラの方が馬乗りになった。

エルフたちはいきり立っていたのかミリーがいるのにもかかわらず矢を放つ 

ライラは足を器用に使ってはじき落として迫ろうとしたがエルフの誰かがライラに叫んだ


「誇りにかえてもエルフ子を デスクイーンから守れ!」


ライラの動きが止まった。

ミリーに聞こえるギリギリの声量で

「エルフと仲良くするのよ。ミリーならきっとできるわ・・・さよなら私のミリー」

とミリーに伝えると突進を始めた。


「観念したのか? 皆の衆 腹を!デスクイーンの腹を狙うのじゃ!!」

エルフの放った矢は 急所である腹部を目指して突き進む


ドガァァァァン!!


しなびたキノコが倒れてきて土煙が舞い上がり周囲が見えなくなった。


「ライラ!!!」


長老が粉々になったキノコの前に出てきた。

「デスクイーンはどうなったのじゃ?下敷きになって死んだのか?」


ショウスケは ガレキと化したゴミの山にスキルを唱えた。

「いいや 死んでないさ。スキル:ネーチャーリバース!!!」


すると飛び散った周囲のキノコの残がいやガレキが土や石や草の芽・木の芽に変わった。

「これでいいか?」


「おお ガレキを一瞬で土と化してしまうほどの魔法を使うとは恐ろしい。。皆の者ショウスケを称えるのだ!」

おおー!!


こうしてエルフの反乱と王族の戦いに幕は閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る