第18話 ミリーの協力者はだれ?

「さすがショウスケね。神に命を狙われるほどのことはあるのね」


ミリーの黒いドレスが 今は喪服に見える。


「なあ どうして神の事を知ってるんだ?」


「仲間から教えてもらったの。ショウスケを倒してミリーたちは夢をかなえるの」


「俺を女神様に献上して 代わりに願い事でもするつもりか?」

そしてミリーには仲間がいる? リザリアたちは大丈夫か?早く探さないと。


「ねえ ショウスケが踏んでいるミリーのベッドだけど ミリーが育てた大地なのよ。血で汚れちゃうといけないからあっちで決闘しない?」


血で汚れちゃうか? もう勝ったつもりでいるみたいだな

「ああいいぜ だけど 本当に俺が移動する必要があるのかな? なあ、ミリーの力を見せてくれよ」


俺は 指令室のボロボロな壁に手をついて寄りかかった。

「これが破壊できるくらい強いなら 好きなところで戦ってやるよ」


「そんなの ミリーなら簡単なのね」

ミリーは突進すると コブシを作りドレスを着ている事を忘れたかのように強烈な一撃を放った。


しかし


「スキル:ネイチャーリバース!!!」


指令室の壁は 土や石に変わり壁が消えてなくなった。


キャー!


バランスを崩したミリーは 小山から転げるように飛んでいくとキノコに激突した。


バキ! メキメキメキ・・・。


ドッスン。


キノコは倒れて ミリーは下敷きになった。


「キュー・・・」


倒したか?

キノコに近寄って姿を探すと キノコの下敷きになっているドレスが見える。

しばらくは動けないだろう。

まあ 自力で逃げられなくても仲間がいるなら助けも来るし、俺はリザリアたちを探すことにした。


ミリーの育てた小さな草原に 風が吹く。


ドガァァァァン!!


下敷きにしていたはずの キノコが空高く吹き飛びミリーは姿を現した。

その手には 小瓶が握られており反対の手を腰に当てたミリーは 小瓶の液体を一気に飲み干したのだった。


「ふふふ 私が小瓶を持っていたこと、忘れてたでしょ? どうしよう。。そうだ! ショウスケを空のかなたに放り投げれば勝手に死ぬんじゃないかしら?」


ミリーは 子供のようにニマニマと笑いながら ゆっくりとこちらに歩いてくる。

壁は 自然物に変えてしまったし近くにもうゴミはないぞ・・。


ポケットに入れていたスマートフォンを腰に隠し持った。


カメラ機能のフラッシュボタンを・・・。


だけど 俺の目の前にくるとミリーの様子が変わって

急に動きが止まったかと思ったら下を向いて地面を見つめているようだった。


「これ・・」

ミリーの目の先にあったのは さっき 壁を自然物に変えた土と石と・・草?

この国は元々は緑の生い茂った国だったから芽が出たのか。

でも それがどうして?


ミリーの瞳から涙のしずくが落ちた

「やっとこの国を救うことのできる能力を持った人に出会えたのに・・それなのに命を奪おうとしたなんて・・」


ミリーには深い事情がありそうだった。


「なあ ミリー。訳を話してくれないか?」

「うん でも その前にライラも呼ばなくちゃ。紅茶の用意もしなくっちゃ。忙しいわ。

実は小瓶の中身も紅茶なの。でもさっきの戦いで ミリーが全部飲んじゃったから新しく淹れなくっちゃ」


「ライラ?仲間ってライラさんの事だったのか?」


すると リザリアの声がした

「ショウスケ!!」


振り返ってみれば リザリアと後ろにリザリアを拘束するライラさんの姿があった。


「さあ リザリアさんを拘束しました。動かないでください。ミリー、ショウスケさんを倒すのです」


ミリーは地面の土を救ってライラに見せた

「違うのよライラ。ショウスケには この国を救う力があるかもしれないの。里へ連れていくわ」


ライラは首をかしげて 考えるようなポーズをとる。

「里には入っちゃダメよ。約束でしょ? それに・・救う?この里はもう 救われているじゃない?だって このキノコたちはあなたたちエルフが作った物なのよ」


「どういうこと?」


「あの頃のミリーは 小さかったから知らないわよね。内戦がおこって多くの血が流れたわ。王族の力は軍の力そのものよりも 王をはじめとする王族の個々の力がすごかったの。そのとき考えられたのがこのキノコの胞子なのよ。キノコに汚染された大地の上では王族は眠ることができない。 もしも眠ってしまったらキノコの養分にされてしまうそうよ。

だけど 黙ってやられる王族たちじゃなかったわ」


ライラはローブを脱いで背中を見せた。

可愛らしい背中の羽は 大きくなり体は黒く硬く、そして振り向いた顔はエルフの可愛らしさの欠片もないようなハエの顔だった。

体が大きいだけあって大きな一つの目玉に見える複眼は よく見れば一つ一つが目玉に見える。


「それが私なの。でも 王族が破れたことで私の存在している意味がなくなってしまったわ」


リザリアは隙を突いて体をひねらせて宙返りをするとツインテールを槍のようにうまく使って離れようとしたが

ライラの足で ツインテールは払い除けられ 

逆に複数ある足でホールドされてしまった。

「うっ・・・どうしてショウスケが狙われていることを知っていたのかしら?」


「天女は非力なのよね。あなたは特別だったみたいだけど。教えてあげるわ。醜い私でもショウスケを倒したら私たちを天女にしてくれるってあなたの仲間の天女と約束したのよ」


ライラさんは 王族の戦闘兵器のような存在だった。そして天女とつながっていた。

「リザリア~! これを使え!」

俺はスマートフォンをリザリアに投げた。

キャッチしたリザリアは スマホ画面の丸いボタンをおす。


パシャ!!!


フラッシュの光がライラの目をくらませた。

目の見えないライラは 所かまわず足を振り回す。


「ショウスケ!」


俺の薬指に結ばれている糸が実体化した。


「リザリア!」

俺は糸を引っ張って 飛び込んできたリザリアをキャッチした。


複眼にフラッシュは強烈だったのか?

大暴れするライラは大げさなぐらいに ピョンピョンとジャンプをしてガレキの建物を壊しながら逃げていった。


あの羽でも完全に飛ぶことはできないのか?


ミリーの顔を見ると悲しそうだった。

「・・・。ライラ」


王族が倒され、逃げ延びたミリーを助けたのは もしかするとライラさんだったのかもしれない。

「どこへ行くんだ?」


ミリーは ライラさんを追いかけて 行ってしまった。

二人は行ってしまった。

「帰ろうかリザリア?クロレラの具合が悪いんだ」

「これは何かしら?」


足元にはミリーの小瓶が落ちていた。

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