第14話 旅立ちとエルフのライラ

あの後 魔物の死骸を探してガネーシャと湖の方へ何度か調べに行った。

「ほら これが残骸だ がははは」


道の隅っこにはこぶし大の植物系の魔物の残骸が見つかった。


ウネウネ・・


うわ。


まだ生きてる?


「案ずるな ウネウネしておるが死んでおる」


いいや 死んでないだろうっと思ったが ガネーシャがポケットにしまったのでそれ以上は聞かなかった。


「ところで ガネーシャ。ネイチャーリバースだが俺が思っていた魔法と違うみたいだが どうなってるんだ?」


「ゴミが自然物に還るという魔法だったな。あいつもゴミだったと言うことだ がはは」


どうやらゴミの定義が神基準だったようだ。


一方 リザリアは元気を取り戻し最近は 空の様子ばかりうかがうようになってきた。

一ヵ所の場所に長く留まっていたり来た道を戻ったりするのは危険なことらしい。

「移動したほうがよさそうね」


リザリアまで狙われた理由はわからない。

けど命が狙われたからには しばらく一緒に旅を続けることになった。

出発の朝 ビッツたち家族や祭りでリザリアたちの踊りを見てファンになった人たちが見送りに集まってくる


「行っちまうのか?孫が寂しがるぜ それで次はどこへ行くんだ?」

「決まってないけど 面白い場所や遺跡なんかがあるところでキャンプをしていこうと思ってる」


「そうか 実はな。知り合いの運び屋が急に腹を壊しちまって 荷も人も運べなくなっちまったんだ。代わりに頼めねぇか?」

運び屋の仕事か?

この先の旅を考えたら稼ぐ手段は欲しいところだ。

けど 今はバザーの売り上げもあるし キャンプをすればそれほどお金はかからないので

俺は ビッツの頼みを断ろうかと思った。

そんなとき ローブを深くかぶった女性がやってきた。

「私はエルフのライラといいます。」

「ショッ・・ショウスケです!!!!」


「実はエルフの隠れ里を目指しているのですが 移動手段がなくなってしまったのです。それに隣の村にこのニワトリの生卵も届けなければいけないのです」


フードを深くかぶった女性は困っているらしい。 

二度も頼まれたら断れない。初対面の相手だけどリザリアは大丈夫か?

「・・・。」

やっぱりそうだ 愛想笑いを浮かべていたが俺にはわかる、だけどガネーシャとクロレラは手を振って歓迎をする態度をすると 「よいであろう。のう ショウスケよ」

「ショウスケさんがよければ 私も構いませんよ。ご一緒できるなら旅のお話を聞かせてください」

とフレンドリーな感じだった。

別に一緒に旅をしたくない訳じゃない。 この感じに、この波に乗るなら今か。


「一緒に行きましょう。 ライラさん」


するとライラさんは ローブのフードを脱ぎその美しい金髪と妖精のような顔立ちを現した。

人族とは顔立ちは違うけど違和感がなく好感が持てる顔だった。

だけど ライラは少し気にしているように


「クロレラさん。リザリアさん。私の顔、可笑しくありませんか?」

と二人に尋ねてくる


「奇麗な御顔立ちですね」

「ええ・・。」


ライラはフードの胸元を握って ホッとした表情になった。

「それはよかった。。初めまして ライラです」

「リザリアともうす・・」

二人は手を伸ばしてライラさんを 引き上げてcabin02に乗り込ませた。

ちょっと変わった人だったけど エルフの里から来たらしく隠れ里というのが気になる。

隠れ住むということはキャンプだから エルフのキャンプに興味があった。


「隠れ里と呼ばれていますが、実際は開かれた村なのですがですが人が寄り付かなくてそう呼ばれるようになりました」

クロレラが「どうしてですか?」と尋ねるとライラは国だったころのエルフの話をしてくれた。


「昔エルフの国はメソスティグマ国という大国だったのです。エルフの国王はとてつもない力を持っていて恐怖で国を支配していたと言われています」


国が恐れられていたからいまだに誰も近寄ろうとしないという話も半ばに差し掛かったころ

外の景色がビスナトの村の景色とはだいぶ変わってきた。

背の高い木は無くなり 草もなくなり代わりに背の高いキノコやコケやシダが生えている。


「景色が変わってきたな」

 

「ここからはエルフの領域だった場所です。その昔、メソスティグマ国は緑豊かな場所だったのですが内戦によってこのような地に変わってしまいました」


助手席のリザリアが 指をさす

「あれは お城?」

道の先にはキノコ型のお城のような建物が見えてきた。

ただ 残念なことにお城は原型はかろうじわかるという感じで 崩れてしまってコケが生えて

城壁沿いに小川が流れており城壁の破片がむなしく小川の流れをせき止められずにいた。


「城ではない。国境も近いのならば トリデの跡じゃな」

「その通りです。メソスティグマ国が栄えていたころのに建てられたトリデだった場所です」


その昔、交易や防衛のために建てられたトリデは 関所として多くの人たちが行き来した場所だろう。

小川も流れており 景色も気に入ったので今日はここにキャンプをすることにした。


そんなとき 物陰からショウスケたちを眺めて心臓の鼓動を早めている少女がいる。

・・・・

少女は胸にかけてある小瓶のフタを開けると 中の液体をひとなめした。

ドスン!

あれが ショウスケ。

・・・・


テントを立てているとリザリアがやってきた。

「さっきの音は何かしら?それより、もうテントを張っているのね。みんなで川へ水浴びをする話になったけどショウスケもライラさんも一緒に来ない?」


「ああ 俺は川辺のキャンプだから久しぶりにサウナをやろうと思っているんだ」

「私は 濡れるのが苦手なんです」

「そうなの、じゃあ ショウスケ ライラさんをよろしくね」


リザリアは一人で川辺に向かった。

俺は cabin02から熱源パネルを持ってくるとテントに設置して

そして こぶし大の石をパネルの上に乗せた。

この上に水をかけることで サウナの湿度を上げることができるだろう。


ライラさんが サウナが完成すると「濡れるのが苦手」という話の続きを始めた。


「私の背中には 小さい羽があるのです」


バサ


背中を向けてローブを緩めると首から下の肌が現れ、そして滑らかな背中の肩甲骨のラインに昆虫のような羽がある。ハエのような丸い形の羽だけど でもそれが女性についているなら可愛らしく見えた。

そして ライラはこちらを振り向くと「私たちはトリデを探索してみませんか?」と胸元のローブを両手をギュっと握りしめた。


「探索するならみんなで行こう」

「そうですね。それでは私はエルフですから森の食べられそうなものを探してきます。ショウスケさんは料理がお好きとききましたので きっと お役に立てると思いますよ」

「キャンプ料理が少しできるだけだよ」

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