キャンピングカーで異世界の旅

もるっさん

第1話 未来の新型キャンピングカー

学生時代の俺は GAMEが好きで母親と衝突することもしばしばだった。

「ショウスケ GAMEばかりしていないで友達でも連れて着なさい」

「俺に友達がいないと思ってのか? いっぱいいるぜ。GAMEの中にな」

モニターの電源が真っ暗になった。おそらく母親が電源を抜いたんだ。


「何するんだ!」

母親は ドアを指さして激怒して顔を真っ赤にする。

「そんなことをしていたらコミュ障になっちゃうわよ! 外で遊んできなさい!!」


追い出された。いっそこのまま1日くらい家出してやろうか?

いいや それはまずいだろ。。まてよ・・。

俺は家に戻った。


「キャンプ行ってくるわ」

「どうしちゃったの?」


近くにある無料のキャンプ場にテントを張ることにした。

邪魔する人もいないしここは いい場所だ。だって

「今の時代、GAMEなんて どこだってできるんだから」


プシュッ!!


俺は 缶コーヒーを開けて勝利の乾杯をした。

だけど 「あれ?テントが建てられない・・」


そんなとき 声をかけ来た人がいた。

「大丈夫か?」

見たところ 20代のおじさんだろうか?無精ひげに伸びた髪

品は良さそうなのに 無理してホームレスしてますって感じの人だった。

「おじさん誰?」

「オレの名前はカムイ。 テント 建てたいんだろ?教えてやるよ」


俺一人だけだと思っていたのに 他にもいたんだ。

だけど テントを組み立ててみたものの 部品がいくつか足りなくて結局カムイのテントに泊めてもらう事になった。

夜になって焚火のオレンジ色が俺たちを照らす。


「コーヒーなのか?」

「ああ そうさ これがキャンプコーヒーだ。熱いから気を付けて・・」

「アッチ・・アッチ・・ でも 大人の味だね」

「そうだな。確かに大人の味だな。じゃぁ 今度は大人の話をしようか?」


大人の話と言っても俺の話ばかりだった。

カムイは 大学生っぽい感じがしたけど 自分の事を話すのは得意じゃないようだ。

「・・・ははは。電源を抜かれたのか?オレも昔やられたことがあるぜ。そうだ キャンプを始めたのも何かの縁だ。コレに行ってみないか?」

一枚のビラを渡された。

「未来のキャンピングカー cabin02のモーターショーだって?」

未来という言葉がGAMEに重なるところがあって ロボットに変形しなくても行ってみる価値があると思った。

これが俺がキャンプに目覚めたきっかけだった。


・・・・

モーターショーのお姉さんの司会に胸が高まる。

「それでは 未来のキャンピングカー「cabin02」のお披露目です。カーテン オープン!!」

喝采と拍手の中cabin02は姿を現した。

パチパチパチ


「うわ~ これが「cabin02」か すごい すごいよ。カッコいい」

学生の頃はすごいの一言だった。 

けど 俺に神が舞い降りた。

そして 手紙を書いた。

「拝啓 cabin02の開発者様。あなたは天才だアインシュタインだ!・・」

・・・・

それから俺は GAMEを全部売った。

「そうなんだ カムイ。 GAMEを卒業したんだ俺わ!」

「へぇ~ 思い切ったじゃないか」

「そしたらGAME仲間から 無理だとかコミュ障になるって言われたよ。あと バイトも始めたんだ」

「急にどうしたんだ?大変化じゃないか?」

「それは・・」

・・・・

俺はパン屋でアルバイトをすることにした。

それは cabin02開発者から返信のメールが着たんだ。


人生の中でどうしてもやりたい事、そして欲しいものに出会うことだってある。

俺もcabin02の開発者のように 行動力を起こして見せるんだと決意をした。


アルバイト先はパン屋で昔は大きなパン屋だったらしく 立派な焼き窯を備えている古びた店だ。

おやじさんの頭も苦労のせいなのかハゲていた。

・・・

「ショウスケ 窯の中を覗いてみろ?ソーセージがカエルに見えるだろ。ははは」

「ソーセージにしか見えませんよ。ははは」

・・・

店番を任されることもあって

「ショウスケくん?私よ 担任のサクラ。働くのは大人になってからで十分よ。それより部活に入らないとぉ コミュ障になっちゃうわよ。聞いてる?」

「イイエ ヒトチガイデス・・」


先生に見つかってしまったりと 色々あったけど卒業の日がやってきた。

店長は 俺を雇ってやりたかったと言ってくれたけど どう見ても雇えるほど儲かっているようには見えない。


「3年間 お疲れ様。ショウスケにはケーキを作ったぞ」

「これわぁぁぁぁ・・・ cabin02のケーキだ! うわぁぁぁん おやじさん!!」

「がんばれよ。うちも潰れないように頑張るからよ ははは」


男同士で抱き合った。そしてブラック企業で頑張って行こうと決心も付いて意気揚々と家に帰った。

「ショウスケ・・お父さんの会社潰れちゃったの」

「すまん ショウスケ。生活費の事だが・・」

暗い話だった。


アルバイトで稼いだお金ぐらいじゃ生活費の足しにしかならないだろうけど 両親に通帳を渡した。

ブラック企業でゼロから頑張ればいいのさ。

だけど 家に居づらくなってキャンプ場にやってきた。

焚火を焚いてコーヒーを飲むことが出来る

オレンジ色の光に揺られながら ドリッパーから一滴 一滴と落ちる液体を見ていると自分の価値感に浸っているような気持になった。


「よう やってるね!」

「カムイじゃないか? コーヒー飲んでいくだろ?」

「ああ でもその前にショウスケ。君に頼みがある」

「改まってどうしたんだ?金はないぜ」

「ははは 安心しろ。駐車場に行くだけさ」


駐車場に着くと キャンピングカーが一台止まっていた。

「これは・・」

「もちろんcabin02さ。 改めましてショウスケ。オレがcabin02の開発者だ。ちなみにカムイは本名さ」


絶句するしかなかった。

何度もメールを送った開発者がキャンプ仲間のカムイだった。


「実は オレは外国で勉強をやり直そうと考えている。cabin02が出てから03も04も開発されたけど 実は02とほとんど変わらないんだ。」


カムイは コブシを作るとキリリとした顔つきになり急にすごいヤツに見えた。

「だから 私は02を超える車を造るのさ!!応援してくれ」


俺は カムイにcabin02を託された。

詳しくはモニターとして働いてくれと言うことだけど ブログを書いて広告収入を得られるようなキャンプをしろという内容の仕事だった。

俺は カムイに抱き着いた。

男と抱き合うのは2回目だ。


カムイが外国へ行ってから 山や温泉地をめぐってキャンプをしながらブログを始めてみた。

そうだ 今日は海に行って波の音を聞きながら眠ろう。


パソコンを立ち上げて 「海の子守歌で眠ります」と書き込むと

「いいね!」

「俺も行きたい」

とすぐに コメントをくれる人たちも増えてきた。


学生時代に部活に入らなかったから初対面の人は少し怖いけど 今の時代なら何とかなるだろう。

俺は パソコンを閉じて眠りについた。

・・・・

「あははは あははは いやーねぇ~そうなの? 笑わせないでしょ! クシュン!! 

あ~あ~ リザリアが悪いんだからねぇ 落っことしちゃったじゃないのよ」


夢か?いい加減な感じの人の声が聞こえるけど・・気のせいか・・。

・・・・

でも 目覚めて開口一番聞こえてきたのは「コケコッコー」の鳥の声、

あれ?カモメってそんな鳴き声だったっけ?

昨日は海にいたはずなのに ニワトリの声がする。

モニターを付ければ済むことなのに そんな事も忘れて車のドアを開けた。


そこには柔らかい日差しが差し込み、海の代わりに草木が生い茂り、土の道があった。

いったい何が起こったんだ?

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