第2話 残された者達2
居住地区の原生生物『イーター』掃討作戦から実に2日経過した。
僅かな食糧と大量の武器弾薬そして、『エグゾスーツ』を残された兵士と開拓後に居住していた民間人達は山岳地帯の要塞化された軍事基地に住んでいた。
「なんだが日に日に飯の量が減ってきてるな……」
「俺達軍人は仕事がある分飯も優遇されるのだから有難いと思え。 ついこないだ赤ん坊が兄妹2人共病死したばっかなんだぞ」
食糧の配給が始まっていたとき、マリノフと彼の率いる『第4中隊』の隊員の『サリー』が共に食事を取っていた。
プレートに乗せられていたのは少ない麦粥の缶詰と小さなパン、そしてデザートのつもりなのか缶詰のパイナップルが3枚。
兵士の運動量を鑑みれば明らかに足りない量ではあるのだが、民間人はこれより更に少ない食糧での生活を強いられているのだ。
量が圧倒的に少ないので麦粥にパンなど普段から食べる量が人一倍多いのもあってあっという間に食べ切ってしまい、マリノフは残されたパイナップルを惜しそうに少しずつ齧っていた。
他の部隊の兵士は皆食い終わって体力を消耗しないように見張り番以外はテントの中で眠っている。
「……第三世代エグゾスーツがあれば、こんな戦況も覆せたのかね」
サリーは食べ終わったプレートを置くと不意にそう呟くように言った。
『第三世代エグゾスーツ』
惑星開拓時代に東欧連合国軍が公表した新型機だ。
公表したと言っても開発中の機体そのものを出したのではなくあくまでその想定される性能やコンセプトについてが知らされた。
この謎だらけの兵器に対して軍はこう言っていた。
『この兵器はいずれやって来る全ての脅威に対して対抗出来る』
しかし、イーターの発生と連合国の連中が宇宙に逃げてからは続報は無い。
「確かフライトユニットを装備せずに高高度を飛行する能力があり、現行のエグゾスーツを遥かに超える火力と機動力を有する……だったか」
後ろから迫って来ている何者かに気付く事もなくマリノフは話し続ける。
「構想段階でしかなかった兵器が助けになど来てくれるはずも無い。 諦めてデカブツ相手に豆鉄砲を振り回すしか──」
「ギッ!」
「うおっ!?」
唐突に、マリノフの体が前屈みになる。
背中には何かが抱きついている。
その何かは一度マリノフから離れると目の前まで這ってきた。
レインポンチョを着ており、外見は分からない。
マリノフは溜息をつきながらレインポンチョのフードを下ろした。
中にいたのは、全裸の少女だった。
体付きはだいたい15~6歳。
貧相という訳でもなく、かといって主張が激しいということも無い慎ましい体付きをしている。
先程まで水溜まりで遊んでいたのか何も履いてない生足に付いた水滴が恒星の光で照っていた。
そして彼女の肌は病的を通り越して最早そういう人種なのかと思うぐらいに肌が青白い。
髪の毛も肌の色と同じく白髪だ。
「ベリィ、今までどこいってたんだ」
ベリィと呼ばれた少女はマリノフに頭を撫でられるとまるで甘えるような鳴き声を上げて擦り寄ってきた。
彼女はこの星で彼らが見つけた唯一の人型生物であった。
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