【完結】17歳のばあちゃんへ...そして愛しい貴方へ。昭和にタイムスリップした私はばあちゃんになり恋をした

江戸 清水

昭和19年編

ひぃばぁちゃんがお母さん?

八千代やちよー!これっ起きぃ、はよ 八千代ーっ」


んん 眠い。まだ暗いし外

何時?


カバッ 何これ。何処....だれ?

私は東京で一人暮らしですけど。


ボーン ボーン ボーン

古めかしい時計が鳴り響いた。

まだ薄暗い早朝

畳が見える。白い肌ざわりがカチカチの布団.....


ドンっ!ふすまを勢いよく開けるシャツに長い紺色スカートの女性

「いつまで寝よる気や?さっさっと布団上げて、母さんの炊事代わり!」


はい?すんごい訛った、関西弁のような女性


とりあえず私は言われた通り布団を畳み、見知らぬ部屋から出る。

これは夢?


襖を開けると、長い古材のような汚れが染み込んだ木製のテーブルが置かれた全体的に古めかしい和室。

10人程の子供から大人が並んでせかせかとカチャカチャと音を立て、茶碗をもち箸でかきこんでいる。


「なにしよん!はよ顔あらいっ。」

訳もわからない、間取りも分からない古民家の中でなんとかトイレを見つけ、錆びついた十字の蛇口をひねり水道で顔を洗う。

わっトイレ ボットン?


さっきから、早くしろと怒られるので私は台所と思われる方へ急いだ。

一段下がった、日本の古い台所だ。

「八千代 つっかけ履き」

お団子頭の中年女性が振り返って言う。


「..........ひいばあちゃんだ。あの、おひささん?」

「親を名前で呼びなさんな。はい運んでよ。変な子やね」

おひさは、大根と豆の煮物をドンと置く


ひいばあちゃんが親?

八千代?八千代は、.....ばあちゃんの名前だ!

えっーーー

えーーーーーーーっ


そうだ。この家...何度か泊まったばあちゃんの生まれの家。リフォーム前の昔の、たしか築百年以上。


ということは...ここは昭和?

「今は昭和何年ですか?」

「はぁ?昭和19年や」



私は細谷 真由 25歳 平成生まれだ。

どうやら私は、八千代ばあちゃんとしてここに居るようだ。


昭和2年生まれの八千代は昭和19年には17歳



その日、言われるがまま用意し、かしこまった制服に袖を通し女学校へと向かう。

外へ出ると目の前は...砂利道に店が並ぶ商店街

店は閉まっているようだ。


―――――そうだ、昭和19年?戦時中


もしこれが現実なら、大変なことに。

ここは兵庫県の田舎なはず...私は呆然とした。


夢かな。でなきゃおかしすぎる。

いや.....夢でこれだけ鮮明な関西弁?が再現されるはずがない。


後から誰かが肩をたたく

「おはようさん。八千代ちゃんまだ制服着よる?

うちはもうそろそろ必要かゆうて、モンペ作っとる。着物潰して」


「おはよう」

「どないしたん?変な顔して。行こう!遅れたら永井先生怖いで〜」


この関西弁か播州弁か分からないが、聞き取るのに相当労力をつかう。ばあちゃんもこんな話し方だっけ。

砂埃が立ち込める道を早歩きで歩きながら

「戦争どうなるかな?」とこの女の子に聞いてみた

「何ゆうとん。勝利に決まってる。

欲しがりません勝つまでは!今は贅沢も娘服も我慢や。甘いもんも。」

ペッと舌を出して愛らしい笑顔を見せる。


そうだ、この時代だ。映画で見たことある。激動の第二次世界大戦.....太平洋戦争。

あぁ。スマホがあればなぁ。何がどうなったかおおまかにしか頭に入っていない。

私は戦争を知らなさすぎな世代である。


って、なんで???受け入れようと....

どうか夢でありますように。

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