茨の嫉妬

 配属されたばかりの新人達が淡島にアレソレと質問をかけている。その中でも最近まで淡島の事を舐め腐っていたはずのヤマアラシ(あだ名)は、誰よりも彼女に懐くようになった。


「あの子、また淡島ちゃんにベッタリよねぇ」


 ちょうどその場にいた同期もその掌返しに呆れ返っていた。茨木は黙って見ていると、ヤマアラシは淡島に話しかけるだけではなく寄り掛かるようにくっついて、あろう事か先輩である淡島の頬を撫でた。淡島はやんわり払いのけたが、今度は髪に触れる。


(何だあいつは……)


 茨木は舌打ちをしてそちらを睨み付けたが、背中を向けているので当然気付くはずなくヤマアラシの様子は変わらない。それはまるで、弟妹を可愛がるような無邪気を装った態度だが、茨木の中にはもやもやとしたものが膨れ上がる。


(勝手に触るな。淡島そいつは俺の、)


 脳裏に浮かんだ言葉を振り切りたいのに、周囲がその話題で盛り上がっているので上手くいかなかった。

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