第2話
しばらくして、おちついた日々が戻ってきた。最初の頃、ブライズは婚約破棄のことがあったので腫れ物に触るような扱いを受けていたが、今となってはバーナードとアシュリーはお似合いの二人だと言われるようなっていた。
ブライズは幼い頃から絵を描くことが好きで、絵の出来映えもプロのようだった。そこで、バーナードとアシュリーの肖像画を描いて婚約祝いのプレゼントにした。
「おめでとう、アシュリー。良かったらこの絵をもらって下さいますか?」
「素敵な肖像画ですわ。お姉様、ありがとうございます。ロールズ家に飾って頂きますわ」
ブライズとアシュリーは、相変わらず仲が良かった。
「お姉様も、すてきな男性と巡り会えると良いのですけれど」
「私は本を読んだり、絵を描いていればまんぞくですから」
そう言って、ブライズは図書館へ出かけて行った。
「あら、鳥の本がないわ。森の本も」
ブライズは受付に聞きに行った。
「そちらの本でしたら、あちらの方が借りていらっしゃいますよ」
「ありがとうございます」
ブライズは本を借りた主の方を見た。
髪はボサボサで、頭をかきながら色々な本を読んで何かメモをしている。
「変わった方がいらしゃるのね。まあ、人のことは言えませんけど」
ブライズは神話の本を手に取り、読み始めた。
しばらくすると、先ほど本を読んでいた青年に声をかけられた。
「あの、受付でこちらの鳥の本と森の本を読みたがっていたと伺ったのですが」
「あら、わざわざ持ってきてくださったのですか? ありがとうございます」
ブライズが顔を上げると、青年は笑顔になった。
「その神話集は面白いですよね、ブライズ様」
「ええ、興味深いですわ。ところで何故、私の名前をご存じなのですか?」
「私はデリック・ロールズ。バーナード・ロールズの弟です」
「失礼致しました」
ブライズが頭を下げると、デリックは恐縮した。
「いいえ、あたまをあげてください、ブライズ様」
デリックは頭をかきながら、気まずそうに言った。
「先日のパーティーもテラスで空を見ている内に終わっておりまして、ご挨拶も出来ず申し訳ありませんでした」
「あら、そうでしたの」
ブライズは本を受け取り、空いている席に着いた。
それを見届けて、デリックは自分の席に戻っていった。
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