第10話 文字が消えていく日
「おかえりー」
重たそうな荷物を抱えてきたのは文子
正確には重そうを通り越して確実に重い
ディスクトップのパソコンと
ブラウン管のモニターを一人で運んできたのだ
「でNE〇にしたの?」
「いえ。DOSー〇にしました。」
「慣れるの大変だけどパソコン変動の荒波に
1社だけで勝てるとは思わなかったので。」
「キー配列違うものね」
「片方持つよ。ここまでくればついたも同じだけど」
「お願いします」
私は文子の手をじーっと見てる
「なにかついてます?」
「いやその細腕でよく運んだなと
普段もパソコンで打つだけの仕事だよね?」
「あはは、気力で頑張りました。へとへと」
「古いの処分しなきゃね」
「いえ使います」
「5インチのも?」
「のもです。壊れたのは捨てますが
本体は生きてるのでこのモニターにつなげてみようかと
モニターの切り替えスイッチもほら」と鞄からだして見せてくれる
「置く場所がどうにかなるまでは捨てない方針で」
「はー」
「呆れました?」
「あーほんの少しね。寝る場所あるのかなとか
書籍とかも山積みだよね」
「あははそのうち底がぬけたりして?」
「それだけは勘弁よ」
彼女は文字の妖怪、現代文学とパソコンにはまっている。
彼女が買いに行ったパソコンはwin〇os95最新型だ
これを買いにいたるには少しというかちょっとした
事件があった
それは2週間ほど前になる
「本が白紙になる??」
一片に日本中に話題が広がった
「買った本も白ければ」
「売っている本も白い」
「仕入先の本まで白い」
日本はちょっとしたパニックにおちいりそうだった
日本中のありったけの結界を張れる妖怪が日本中を
離脱結界を張りまくる
日本へ来ようとしていた人はその目的を忘れ戻ろうとする
本の売り買いをしようとした人は
買うことも売ることも忘れ
本に一切感心を示さなくなった
だがこの状況をどうしようか?
うちのアパートで白羽の矢が立ったのが文子だった
まずノートに文字を書いてみる先から消えていく
「妖怪はどこにいるんだろう?」
「ここにいますよ。ここに」と文子はノートを指す
ノートよくみていてくださいねZの字が動いてます
そういって文子はノートにもう一度ある歌詞を書く
よくみるとあたまからZの字が流れて文字が消えていく
文子がつかもうとするが消えるほうが早くってつかめない
今度は文子が書くのに専念し他の人がつかもうとするが
紙の上をすべるだけ
じゃあ他が書こうとするが遅くって文子が掴むより消えていく
「こんにゃろー頭きたわー」
文子はパソコンをつけて今度はパソコンで文字をうちこんでいく
早いこれはびっくりノートに書く早さも尋常じゃないが
コンテストにでれば1位取れるんじゃなかろうか?
すごい速さで打っていくのをどんどんと消していくが
1ページ打ち終わった頃文子は画面に手を差し込んだ
狙いあざやか見事にZを掴んで取り出してきた
ボン!!!
取り出すと同時にブラウン管モニターは破裂した
文子はそれでも慌てずに手を離すことなくZをひきずりだす
3メートルほどの長さのZを引きずり出す
「ふふふふっ」文子が笑う…怖ひ
持ち出したのは消しゴムお尻から触れるとどんどんと灰化していく
「無線で連絡するね」
私は管理室に戻ってことの詳細をみなに伝える
それそれぞれが了解して行くが
文字に関わる妖怪は以外に多いが
文子の能力は特別に高い
なんせ退魔時代といわれる平安時代を生き残った妖怪だ
そして戻っていくと考え込んでいた
さすがに1体につきブラウン管1つ壊すのは苦痛だし
他に方法はないか考えていた
「あ、あれならいけるかも!」と魔女の摩子さんが飛んでいく
「開いても一片には消せないなら文字数の多い本ならとおもって」
「文子ちゃんいくはよ」
「せーのー」
「取ったー!」また消しゴムで灰にしていく
そんなことを1時間ほどした頃
無線から
「きりがない。」「こちら間に合わず削除できず」
などと飛び交っている
「こちら大輔。親はいないのか大元は?」
「そう言われてもこっちも事態に飲み込まれた方だし」
「京都の本山で掛け軸から文字が消えたと」
「それが大元だと?」
「可能性が高いらしいです」
「文字が消えだした波形を調べるとそこが中心になります」
「わかった乗り込んでやろうじゃないの」
そこからは慌しかった文子ちゃんは必須にして
どんな反応があるかわからなかったので唐次郎さんに
物質の質を換えるかえで君
5感にすぐれた靴木ファミリーかずみはいいというのについてきた
切符も白いので現金渡しで無理やり運行させた
まぁ金も白かったのだが…
夜行を探して飛び乗り次の朝は京都についた
文字がないというのは実質の生活を奪われたようなものだ
会社に行くものもなくテレビも放映されない
ぼーっと数人が歩いていたが結界が人との干渉を許さない
「ちっちゃい寺やなぁ」かずみが言う
「こら、それでも室山時代に立てられた貴重な寺なのよ」
誰も反応などしないだろうとぞろぞろ入っていく
「何様じゃおまえら」
「あれ、結界の効いてないのが居る。めんどうな」
そういいながら私は最初から事のいきさつをかいつまんで話した
「それならば、部屋はそのままになっておる。こっちじゃ」
そこには大きな紙と人ほどの高さがある筆がバケツに
入っていた。バケツの中身は墨である。
「字を書いてくださいできるだけ字画の多いものを」
「承知した」
劉の字がかかれていく
文子は片手で紙の中をまさぐったが両手を突っ込みだした
と思ったら引きずりこまれた!
慌てて手を突っ込むがただの紙もぐれない
そこに控えていた大きな僧がでてきて紙にずぶり
少しまさぐると文子をひきずりだした
でかい30センチはあろうかと思うZが20メートルは続く
端まで引きずり出すと「消しゴム早く暴れるぅ」
慌てて総出で消しにかかるがでかい消しゴムが足りないか?
そこへ先ほどの僧が大筆を持ってきて
「失礼つかまつる」それだけ言って筆で一刀両断
Zの頭をぬりつぶした…ぼーっと黒く光ったと思ったら灰になった
なんだ最初から頭けしときゃ良かったんじゃん
文子は墨まみれになった
「すいません。急に押しかけてお風呂まで頂戴しちゃって」
「それにしてもすごい退魔師さんですねー。」
「どこらへんがすごいの?」
「塗りつぶしでたおしちゃうとこがすごいのよ」
「普通塗りつぶしても前の字はうっすら残るもの」
「すなわち生きてるままのはず」
「まぁ僧さんが無理ならかえで君に同化をたのべば良かったけど」
「てか最初から頭だけに消しゴムつかっとけば?」
「それは無理。頭を消しても頭が移るだけ」
「ようするに僧さんの大手柄ってこと腕相撲して勝ったようなものね」
「まったく同じ濃度で上塗りしたことになるわ」
「問題はこれで解決してればいいのだけど」
「それは大丈夫みたいじゃ」
「記念に持っていきなされ」
そういってひとり1冊ずつお経の本が配られた
フリガナつきだありがたい読むかは別だが…
南無阿弥陀仏しかわからん…
「ただいまー」
「どう日常に戻った?」
「戻りましたよ。雄一郎さんも会社にいそいそでかけました。」
「文字が無いとなにもできませんものね」
「でもないみたい雄一郎料理したみたい。台所が散らかってる」
しかし消えた数日をごまかせるわけもなし
ニュースで特番で何が起きたのか騒動になっていた
最後には文字が消えたからだれもなにもしなくなったと
ほぼせいかくな答えを導きだし騒動は終った
原因も結果もわからぬまま人々は日常に戻っていく
これからもいろんな戦いがあるだろうが
日本中を結界でとりまくなどという
大事にはならないでほしいものである
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