妖怪屋敷

御等野亜紀

第1話 退魔の始まりは

私は美穂という

みほだ

忘れないように


アパートの管理人をしている

ごく普通の少女だ


父が早死にして

アパートを残していったまではいい

良くないが天命には逆らえないだろう


このアパートの9割以上が

普通じゃない住人が住んでいる

いわゆる妖怪といわれる生き物だ


私に与えられた特別な能力

人と妖怪を見分ける力

いらないとおもってた

こんな力


なのによりによってお化け屋敷の

管理人だとー

父は気づいてたはずだ

でなければこんなアパートになるはずもない

私の力は母から受け継いだものだが

父がどうして妖怪たちを見極め

受け入れて来たのか

私にはわからない

まさか妖怪です厄介になります

と自己紹介したわけではあるまい

母は幼い頃に亡くしているから

父がみわける助けをしたわけではあるまい


じゃあ自然に集まったのか?

類は友を呼ぶ?


「美穂ちゃん?聞いてる?」

「あ、ごめんごめん考え事してた」

「えっと鍵かな?」

「うん」

「はいどうぞ」


今のも妖怪だ

本当の姿が見えるというのは厄介で

現実の姿が見えないのだ

それを回避する為に

この管理室の向かい側には

大きな鏡がおいてある

鏡を通すと現実の姿が見える


普通は逆じゃないか?

生活しにくくってありゃしない

子供の頃からあれは何?の繰り返しで

小学上がる頃にはだんまりを決め込むようになった

普通の人には普通の人に見えるのだ

それを悟ったとき口をつぐんだ


中学生になった時

父が始めてそのことを口にした

「お前にはみえるのだね妖怪たちが…」と

それは母譲りであり

世の中に対応している妖怪も多いこと

父は人間でありながら協力して

世間を脅かす妖怪を退治してきたこと

ややこしいので良い妖怪と悪い妖怪としよう


そして世の中にはその存在に怯え暮らす

人々もまたいることを教えられた

母もまた戦いの中で死んだらしい


でもどうしろと?

私の能力は妖怪を見分けるだけだ

ウルトラマンみたいにビームを発射できるわけでもなきゃ

魔法の少女みたいに棒をふるだけで悪党が苦しむわけでもない

「あわてなくてもいい」と言われている

「でもできたら共に戦おう」とも言われている


小さい頃から見続けた変なものの正体がわかって

ほっとするような気もするが戦うのは怖い

何より正体がわかってもなにも解決していない

私には戦う義理もなければ理由もない

親の敵なんていってられない自分の命がかかっているのだ


そんなことを考えるとドタバタばたと数人が入って来る

これもまた人間じゃない屋敷の7割が人間じゃない

そのことを知ったとき念をいれ人がでていった部屋は

妖怪がすむ部屋に変えていった。そして今9割妖怪だ


「どいて」と私が言う

怖い。血だらけだほっとけば死ぬだろう

「人に変化できないの?このままじゃ死んじゃう」

「病院いかなきゃ」

一人が首を振る

「ここまでダメージを受けると人にも変身できないと」

私は食い縛って死に掛けてる妖怪の傷口に

手をかざしたハンドパワー…ヒールハンド

何やってるんだろうこんなことしても無駄なのに

母は少なくとも助からなかった…母は?

そうだ母がしにかけてた時私は幼い手を同じように

かざしていた

手がどんどん熱くなる気が集中してくるのがわかる

傷がどんどんふさがっていく

凄い

自分でも夢の光景をみているようでしんじられない

ただ救える今の私なら救えるそう信じた

「もう大丈夫。休ませてあげて…」倒れこむ自分


次に目を冷めた時管理室の椅子の上で

毛布を被ってよこになっていた

あれからどれくらいたったのだろう?

時計をみやる朝方の4時…2時間は寝たか?

夢だったか現実だったかもわからない

ただ確かめなくてはと思いが強い

でも4時の訪問は失礼だろう

…血が付いてる…自室に着替えに行った

母は助けれなかった…でも無意識に力をつかってた?

今度は助けられた…確信に近い…


それから数ヵ月後には私は管理室を離れ

妖怪の皆と一緒にいることが多くなった

管理人雇わなきゃな…


「どっかした?」

「いや管理室が空っぽだなと」

「クスクス。以外と鈍いのね。物の位置が動いたりしてるの気づかなかった?」

後ろから別の妖怪にこづかれた

「手すきのもんが交代でかわりにやってる」

無愛想にいう

あ…そかそれでコップのしまわれた位置が違ったりしたのか


母も父も人間だった

でも妖怪たちと一緒に戦っていた命をかけて

報酬もでかいが何より一体感が違う

私はただの管理人だった

私のいた場所はお化け屋敷だった

今私の居場所はお化け屋敷なんかじゃない

仲間が集い休息をとる場所なんだ

傷口を塞ぐそれだけの力だけど

側に居れば助けれる確立はあがる

側に居れば戦いの中にも笑顔がある

管理室という小さな箱で母と父の死を疑ってた


今なら私も命をかけられる

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る